雲エアロゾル放射ミッション「EarthCARE」衛星(はくりゅう)搭載雲観測レーダ(CPR)のレベル2プロダクトのリリース開始

~CPRのデータ利用が始まります~
2025年3月17日

国立研究開発法人情報通信研究機構

 国立研究開発法人情報通信研究機構(理事長: 徳田英幸、以下NICT)が国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(理事長: 山川 宏、以下JAXA)と共同で開発した雲観測レーダ(Cloud Profiling Radar、以下CPR)が搭載されているEarthCARE衛星のレベル2プロダクトについて、JAXA及び衛星を開発した欧州宇宙機関(以下ESA)からリリ-スされました。
 2025年1月14日にリリースされたレベル1プロダクトは観測データを工学値に変換したものですが、レベル2プロダクトは大気物理学的に意味のある量に変換されたものです。NICTでは、CPRのレベル2プロダクトのうち、処理にハードウェアの知識が必要なCPR単体エコープロダクトの処理アルゴリズムを開発しています。
 また、今回NICTが外部校正実験により求めた校正値が採用され、CPRのレベル1プロダクトがアップデートされています。NICTは、今後もCPR外部校正実験を継続し、CPRの健全性の確認、CPRの観測性能の経年変化を把握します。また、CPRのレベル1プロダクト・レベル2プロダクトの検証も行い、アルゴリズムの改良を進めていきます。

概要

 はくりゅうは、欧州宇宙機関(ESA)の衛星で、雲・エアロゾル(大気中の微粒子)の分布や大気放射を測定する4つの観測装置が搭載されています。
はくりゅうに搭載された観測装置(左)と、観測概念図(右)
 高度約400kmを飛行する衛星から直下の雲とエアロゾルの鉛直分布をCPR(雲観測レーダ)とATLID(大気ライダ)で測定し、雲とエアロゾルの水平分布をMSI(多波長イメージャ)で測定します。また広帯域放射計(BBR)により地球の放射収支を計測します。衛星は一日で地球を約15周まわり、25日で同じ軌道に戻ります。
CPRの概念図と、フライトモデル(電気試験時)
 NICTは、日本初の航空機搭載型雲レーダを開発した知見を生かし、JAXAと共同でEarthCARE衛星搭載CPRの開発を行いました。CPRは高感度で、これまで観測できなかった薄い雲が検出できることに加えて、雲の上下の動きを測定する世界初のドップラ計測機能を有しています。
 CPRの軌道上での健全性の確認、観測性能については、NICTが実施している能動型校正器を使用した外部校正実験で確かめられ、今後も継続して外部校正実験を実施します。今回、外部校正により求めた校正値が反映されてレベル1プロダクトがアップデートされています。さらに、CPRのレベル1プロダクト・レベル2プロダクト検証を、地上設置雲観測レーダ(HG-SPIDER)などを運用して行っています。

用語解説

CPRのプロダクト
  • レベル1プロダクト
    雲の鉛直分布及び上下の動きに関する工学データ
  • レベル2プロダクト
    センサー単体プロダクト(L2aプロダクト)とセンサー複合プロダクト(L2bプロダクト)がある。また、CPRのL2aプロダクトは以下の2種類がある。
  • レベル2aプロダクト(単体エコープロダクト)
    積分や補正により正確な物理量に換算に用いることができるデータ
  • レベル2aプロダクト(単体雲プロダクト)
    大気物理学的に意味のある量(雲水量、雲氷量、光学的厚さ等)に変換されたデータ
EarthCARE衛星のプロダクトは下記を参照ください。(外部リンク)
https://www.eorc.jaxa.jp/EARTHCARE/data/prd_intro_j.html

関連リンク

1 EarthCARE衛星搭載雲プロファイリングレーダのレベル1プロダクトのリリース開始
https://www.nict.go.jp/press/2025/01/14-1.html

NICTの問合せ先

国立研究開発法人情報通信研究機構
電磁波研究所電磁波伝搬研究センター
リモートセンシング研究室