高度通信・放送研究開発委託研究に係る令和6年度新規委託研究の公募(第2回 課題236)の結果

2024年10月29日

国立研究開発法人情報通信研究機構

国立研究開発法人情報通信研究機構(NICTエヌアイシーティー、理事長: 徳田 英幸)は、高度通信・放送研究開発委託研究として令和6年度から新たに研究開発を開始する課題236について、学識経験者で構成される評価委員会での評価等を踏まえ、下記のとおり採択しました。

1. 採択された提案課題と提案者

◯ データ利活用等のデジタル化の推進による社会課題・地域課題解決のための実証型研究開発 (第3回)(課題番号236)(10件を採択)
提案課題:リアルタイム浸水域評価と可視化システムの開発
提案者:国立大学法人信州大学(代表提案者)、国立研究開発法人防災科学技術研究所、双峰エンタープライズ株式会社
概要:本研究開発では、水害現場の撮影画像から浸水深を検出し、地図上に自動的に浸水状況を表示するシステムの開発を行う。従来の衛星データや航空写真などを用いた手法では、浸水状況の可視化に早くても数時間以上を要する課題がある。そこで本研究では、深層学習により画像から浸水深を検出する技術を開発し、簡易評価ながら1分以内に浸水状況を地図上に反映することを目指す。これにより、水害発生時にほぼリアルタイムでの状況把握が可能となり、迅速な避難誘導や被害状況の早期把握による効率的な救助活動への貢献が期待される。さらに、高感度カメラによる夜間視やモジュール間の自動連携により、複雑な操作を必要とせずに運用可能とする。
提案課題:地上と地底のデータ連携による都市型水害リスクのリアルタイムモニタリング基盤の研究開発
提案者:学校法人慶應義塾 慶應義塾大学SFC研究所(代表提案者)、一般社団法人YRP研究開発推進協会
概要:集中豪雨時の内水氾濫対策業務のデジタル化を推進するため、自然言語で指定された事物をドライブレコーダ映像等から迅速に発見する車載クロスモーダルAI技術と、広域マルチホップWSN通信を用いたマンホール下の下水道水位センシング技術を実用化し、それらで得られるデータを連携して都市型水害リスクのリアルタイムモニタリング基盤技術を確立する。地上では、数百台の車両にクロスモーダルAIを搭載して地域網羅的対話型AI基盤を、また地底では、藤沢市内のマンホールでZETAを用いた水位センシングを実装し、豪雨時には水害リスクモニタリングを、また平時でも行方不明者捜索などを行えるサービスを創出し、実証実験により有効性を検証する。
提案課題:地域観光消費額の準リアルタイム推計手法の確立と社会実装
提案者:公益社団法人日本観光振興協会(代表提案者)、東京都公立大学法人東京都立大学、学校法人東洋大学、国立大学法人金沢大学
概要:持続可能な観光地経営を支える地域観光消費額の推計手法について、既存統計調査と代替性が高くかつ速報性の高い推計手法を開発し、準リアルタイム推計手法を確立する。また、実証実験を行い、初年度2県、2年目7都道府県以上への導入および事例開発を行い、実用化を進めるとともに、生成されたデータをオープンデータ公表する。
提案課題:地域レジリエンス向上のための市民協働型データ収集基盤と防災減災・復興支援技術の研究開発
提案者:学校法人廣池学園 麗澤大学(代表提案者)、国立大学法人徳島大学、独立行政法人国立高等専門学校機構 阿南工業高等専門学校 、学校法人常翔学園 摂南大学、学校法人大阪電気通信大学
概要:本研究開発では、ICTを活用して、将来発生が懸念される南海トラフ巨大地震等の自然災害への備えと発災後の迅速な復旧のために必要な各種データを市民協働で収集する基盤を構築する。そして、そのデータを活用し、防災減災に資する総合知説明型ハザードマップとVR体験型教育コンテンツ、復興支援に資する罹災判定支援技術の研究開発を実施するとともに、研究成果の体験ワークショップを徳島県内市町村で開催する。これにより、行政主導では整備が困難な各種データの鮮度・精度・網羅性の担保、住民ひとりひとりが日頃から防災意識を持ち、発災時に避難の警報を自分ごととして捉え、適切な避難行動ができる機運を醸成する。
提案課題:通信条件不利地を対象としたLPWA中継局の最適配置と防災・減災に向けた気象観測
提案者:国立大学法人信州大学(代表提案者)
概要:国土面積に対する中山間地域は64.8%で、大部分は河川の上流部に位置しており、近年の気候変動にともなう豪雨災害が頻発し、高齢化や人口減少も著しく農林業の一次生産基盤が脆弱化している。デジタル田園都市国家構想を推進する中で、豊かな森林資源や水資源を保全し、中山間地で農林業を主体とした産業を維持し安全に暮らすには、防災・減災に関する情報へアクセスできることが重要である。アメダス観測点のない地域で降雨量などの観測を行うには、自治体が観測装置を整備し、必要な情報を住民に通知するシステムが必要となるが、通信条件不利地では、通信によるリアルタム気象観測が困難なことが多い。本課題では、LPWAの通信網を独自に構築するためのGW(中継局)を低コストで最適に配置するモデルを提示し、LPWAによる気象観測データを自治体住民に加え、流域全体で共有するシステムを構築する。
提案課題:セキュアでオープンな公衆無線LANにおけるローミング利用者情報のプライバシーに配慮した地域間データ連携
提案者:国立大学法人京都大学(代表提案者)、株式会社Local24、国立大学法人東北大学、大学共同利用機関法人情報・システム研究機構 国立情報学研究所
概要:セキュアでオープンな公衆無線LANローミングの国際的なフレームワークであるOpenRoamingにおいて、利用者の同意の下で訪問先のWi-Fiアクセスネットワーク提供者に仮名性を担保しつつ利用者情報を限定的に開示する仕組みを開発し、地域間で相互にデータ連携を可能にする。利用者から同意を得て開示可能なデータを収集する仕組み、ならびにプライバシーに配慮しつつ地域間で利用者情報を共有する仕組みを設計するとともに、それに基づき複数の地域で相互にデータ連携する実証実験を実施し、プライバシー保護の制約下でのデータ連携で観光振興などの地域課題への解決につながりうるかを実検証する。
提案課題:中心商店街の活性化に役立つ地域DXの次世代型成功モデルを確立する研究開発
提案者:国立大学法人東北大学(代表提案者)、株式会社QUICK
概要:中心商店街が徐々に衰退する現象が日本の各地で起こっている。中心商店街の賑わいを取り戻して地域全体を活性化させることは多くの地域の共通課題である。本提案では、地域のIoTデバイスやアプリ等のICT基盤を連携・発展させ、DXに資する地域データを蓄積し、市内中心部での市民アクティビティ(人流量・回遊性・イベント活況度等)を定量・可視化する。また、プライバシー侵害リスクの少ない独自のデータ利活用技術を援用し、地域データの活用技術を新開発する。さらに、産学官の関係者が一丸となり、デジタルバッジ(トークン)等の先進技術も導入して、中心商店街活性化のための実証実験に取り組み、地域DXの次世代型成功モデルを確立する。
提案課題:中山間地域における獣害対策へ向けたDR-IoTに基づく多地点遠隔監視システムに関する研究開発
提案者:株式会社スペースタイムエンジニアリング(代表提案者)、株式会社国際電気通信基礎技術研究所、学校法人関西大学、学校法人立命館 立命館大学
概要:本提案では、LTE不感地帯を有する中山間地域での獣害対策において、点在する捕獲檻と管理職員を繋ぎ、遠隔監視・制御を可能とするシステムの研究開発を行う。提案システムは長距離自営無線DR-IoTを根幹とした構成とし、植生や起伏を考慮した電波伝搬解析に基づく置局設計により構築する。DR-IoTで広域をカバーする際の伝送速度は数十kbps程度が上限となるため、マルチチャネル伝送及び映像トラフィック削減制御技術開発による容量拡大により、遠隔監視で必要とされる映像伝送を実現する。映像要求数の削減及び省電力化を目的としたイベント検知による観測機器制御も組み合わせ、徳島県那賀町での実証を通じた多地点遠隔監視システムの社会実装を目指す。
提案課題:造船工場のデジタルツイン構築による屋外ブロックの自動把握システムの実証型研究開発
提案者:国立大学法人愛媛大学(代表提案者)
概要:“造船工場におけるデジタルツイン”の構築と、それを活用した“構成部材(ブロック)の自動把握システム”を開発し、生産管理工程に組み込む。具体的には、造船ヤードを上空から自動で3Dセンシングし、このデータを毎日更新することによってヤードの差分画像を取得し、機械学習を用いてブロック形状の自動判定を行うシステムを今治造船株式会社で実証する。10万m2のヤードを対象に造船工場のデジタルツインを構築し、ウェブベースのプラットフォームを用いて技術者が任意の場所からブロックの所在を瞬時に把握する。海事DXの先駆的な取り組みとして今治地区ひいては瀬戸内への展開を図り、さらには日本の造船業を変えていく。
提案課題:疾患リスク評価アルゴリズムと健康相談エージェントの開発
提案者:国立大学法人東北大学(代表提案者)、国立大学法人群馬大学、国立大学法人東京大学
概要:東北大学東北メディカル・メガバンク計画三世代コホート調査は、世界初の出生三世代ゲノムコホートである。収集されている情報から①疾患のリスク予測アルゴリズムや②デジタルツインによる疾患リスクの可視化を行い、アプリ経由で国民に提供する実証実験を宮城県仙台市で行う。また、収集情報に起因した発症リスク予測をアプリ経由で展開することから、③社会的・倫理的な調査を行う。収集された情報と基礎研究で得られた知見をもとに疾患リスク予測アルゴリズムを構築し、ユーザが入力した日々の生活情報から短期的・長期的な発症を予測する。これにより、国民の健康寿命を延ばすとともに、疾患への理解と生活習慣の改善を促すことができる。

2. 公募等の概要

上記の課題236については、令和6年5月31日(金)から同年7月10日(水)まで公募を行いました。公募の詳細は、以下のWebサイトをご参照ください。

本件に関する問い合わせ

イノベーション推進部門 委託研究推進室

公募担当