我々のグループは、NECと米国国立標準技術研究所(NIST)と共同で、量子力学の法則を使った新しい暗号技術(量子暗号)を、道路沿いに設置された光ファイバー回線を用いて、世界最長(97km)かつ最高速(従来比で100倍)で実現することに成功しました。
現在インターネット上で使われている暗号技術は、公開鍵暗号と呼ばれる方式で、コンピュータの能力が飛躍的に向上すると、解読される危険性をはらんでいます。ところが、量子暗号は将来どんなに科学技術が進歩しても、絶対に盗み見られない特徴を持っています。最近、情報システムからの機密情報の流出が問題となっており、重要情報を一元管理するデータセンターと利用者の端末間で、秘匿性の高い通信ネットワークを構築しようとする動きが広がっています。今回の量子暗号方式は、そうしたネットワーク上での利用に適しています。
これまでの量子暗号の研究は、ほとんどが実験室内の理想的な環境で行われていましたが、今度の実験は前述のとおり、道路沿いに設置された光ファイバーを用いて(フィールド実験)実施しました。今回達成した性能は、これまでの実験室内での記録をさらに10倍上回るもので、将来の極めて安全性の高い暗号技術の実現に向けて大きく前進する成果となります。
関連報道
日経産業新聞2008年3月12日号(日刊11面)
詳細説明資料
背景、量子暗号の研究開発の現状、本成果の概要、本成果の意義、今後の展開、
補足資料(用語 解説)などの詳細は
URL:https://www.nict.go.jp/press/2008/press-20080326-2.pdf
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