量 子もつれ状態とは、例えば分子のスピンシングレット状態のように複数の構成要素からなる量子系特有の相関を持つ状態です。歴史的にはEinstein、 PodolskyとRosenがもしこのような状態を巨視的なスケールで実現できたとすると、これまでの古典物理学の直観ではでは解釈し切れない奇妙な結 果が生じてしまうとしてEinstein-Podolsky-Rosenのパラドックスとして長年にわたって議論されて来ました。しかし、実際そのような 奇妙な現象が量子力学の予言通り起こり、さらには従来の情報技術には類似のない転送技術や暗号技術、信号処理技術へ応用できることが分かって来ました。こ れまで原子スケールに特有の現象であった量子もつれ状態は、今や数10km以上離れた通信スケールまで展開できるようになって来ました。このような古典的 対応を持たない新たな通信資源を使った情報技術の研究も行っています。ここでは、2モードスクィーズド状態と呼ばれる量子もつれを使った量子情報処理プロ トコルに関して理論的な研究を進めています。この状態は波動関数がガウス分布で拡がるためガウス状態と呼ばれ、光の直交振幅と呼ばれる連続スペクトルを持 つ物理量に基づいた量子もつれ状態を形成しており、この状態は理論的にも実験的にも比較的扱いやすいクラスの状態です(実験に関しては「量子相関光子状態 制御」を参照)。2モードスクィーズド状態を用いた量子テレポーテーションや、量子もつれ支援計測技術について理論的な解析を行っています。
<代表的論文>
・雑音下における量子テレポーテーションについて:
M. Takeoka, M. Ban, and M. Sasaki,
J. Opt. B 4, 114 (2002); LANL quant-ph/0110031.
・量子テレポーテーションの通信路としてのモデル化について:
M. Ban, M. Sasaki, and M. Takeoka,
J. Phys. A: Math. Gen. 35, L401 (2002); LANL quant-ph/0202172.
・量子もつれ支援計測技術について:
M. Sasaki, M. Ban, and S. M. Barnett,
Phys. Rev. A 66, 022303 (2002); LANL quant-ph/0203113.
・量子もつれ支援計測技術について:
M. Takeoka, M. Ban, and M. Sasaki,
Phys. Rev. A. 68, 012307 (2003); LANL quant-ph/0304032.