現代の情報技術の基礎となっているデジタル情報{0,1}は、外界からの操作がなければ0は未来永劫0であり、1は未来永劫1でなければなりません。ところが、原子スケールの世界では、0でもあり1でもあるような情報を作ることができます。20世紀の終わりには、人間の手が原子スケールの現象を直接制御できるようになり、さらに光を媒介にして、数10kmも離れた地点であたかも分子のそれぞれの片方の原子を共有しているような状態さえ手に入れることが可能になって来ました。これまで、パラドックスのように見えていた量子力学的現象が、直接実験で検証され、さらに情報技術において従来には類似のない転送技術や暗号技術、信号処理技術へ応用できることが分かってきました。いまや量子力学は、情報の中心概念と深く関わるものとなったのです。
0でもあり1でもあるような情報、数10kmにもわたって広がった分子のような状態に乗った情報、このようなお伽話の世界でしかないような情報をきちんと扱うための理論を開拓し、光の量子状態を操る技術を使って夢のような情報を現実の世界へ具現化し役立てるのが我々の目標です。