今回の実験では、Caltechの実験と同じ430nm帯のポンプ光を用いて860nm帯でスクィーズド光を生成し、位相のぶれを4度以下に抑えて安定な位相ロックのもとで-7.2dBという世界最高のスクィージングレベルの観測に成功しました。
レーザ光の持つ量子揺らぎを特定の位相領域で人為的に抑圧した光はスクィーズド光と呼ばれ、超並列計算を可能とする量子計算や従来限界を超える超高感度計測を実現する上で重要な光源です。通常、ポンプ光と呼ばれる強い光を特殊な結晶に当てて、波長が2倍以上の光に変換(パラメトリック下方変換)することによって生成します。スクィージングレベルは、非線形相互作用係数が大きい結晶を使って、ポンプ光強度を強くするほど高くする事が出来ます。従来使われてきた結晶では、ポンプ光が誘起する損失のため、ポンプ光強度を上げてもスクィージングレベルが頭打ちとなるため、1992年にカリフォルニア工科大学 (Caltech)で達成された-6.0dBを長らく超える事が出来ませんでした。 今回、擬似位相整合構造を持つポタシウムティタニルフォスフォレート結晶(KTiOPO4)を用いてポンプ光誘起性損失が極めて低いパラメトリック発振器を開発し、スクィーズド光源に新たな道を開きました。
今回の実験では、Caltechの実験と同じ430nm帯のポンプ光を用いて860nm帯でスクィーズド光を生成し、位相のぶれを4度以下に抑えて安定な位相ロックのもとで-7.2dBという世界最高のスクィージングレベルの観測に成功しました。
スクィージングレベルが-7dBを超えた事で、万能量子ゲートに必要な4段の量子テレポーテーションによる信号処理が可能になるほか、従来の計測における理論限界を超える量子もつれ計測技術を実現する事が出来ます。
今回開発した装置を最適化すれば-10dBのスクィージングレベルの達成も原理的に可能で、今後さらに性能改善を進めてゆく予定です。
発表論文