光の最小構成単位である光子は、複製が不可能であることや同時に二つの状態を取ることができるなどの顕著な量子力学的性質を有し、量子情報通信での理想的な情報伝達媒体のひとつとされています。レーザーを始めとする通常の光の発生方法では光子が集まって発生するため、時間的に離散化した光子を連続的に発生させる(単一光子列の生成)ためには特別な方法が必要とされます。今回の実験では、イオントラップと呼ばれる装置で真空中に固定した単一のカルシウムイオン(40Ca+)を発光媒質とし、光共振器を用いた誘導放出と呼ばれる発光メカニズムを用いることで、時間波形制御された単一光子列を発生することに成功しました。単一光子の時間波形制御は、量子情報の基本単位である量子ビットを原子と光子の間で交換するための最も重要な技術の一つです。原子と光子の間で量子情報が交換できると、量子コンピュータ間の量子ネットワークや、ネットワーク決済に欠かせない高度な時刻同期を保障する量子時刻同期などの応用が可能になります。
発表論文
Nature 431, 1075 (2004)
関連報道
日刊工業新聞2004年10月28日
日経産業新聞2004年10月29日
科学新聞2004年11月26日
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