国立研究開発法人情報通信研究機構
2017年9月7日
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、理事長: 徳田 英幸)は、日本時間2017年9月6日(水)に、太陽面中央に位置する黒点群2673における2回の大型の太陽フレア現象の発生を確認しました。このうち、日本時間20時53分に発生した現象の最大X線強度は、通常の1000倍以上に及ぶ大型のものです。この現象に伴い、高温のコロナガスが地球方向に噴出したこと及び高エネルギーのプロトン粒子の増加が確認されました。コロナガスは日本時間9月8日(金)15時から24時ごろにかけて、到来することが予測されています。
この影響で、地球周辺の宇宙環境や電離圏、地磁気が乱れる可能性があり、通信衛星、放送衛星などの人工衛星の障害やGPSを用いた高精度測位の誤差の増大、短波通信障害や急激な地磁気変動に伴う送電線への影響などが生じる恐れがあり、注意が必要です。
背景
NICTは、太陽活動や宇宙環境変動の観測を行い、現況とその推移に関する情報提供を行っています。
今回観測した現象
①現在、太陽面の中央西よりに位置する黒点群2673で、9月6日(水)(日本時間)にXクラスの大規模太陽フレア現象が発生しました。このうち20時53分(日本時間)に発生した現象はX9.3に達しています。このクラスの現象は、2006年12月5日に観測したX9.0以来11年ぶりです。
②この太陽フレア現象に伴って、地球方向へのコロナガスの放出(コロナ質量放出)及び高エネルギープロトン粒子の増加が観測されています。
③地球方向へ放出されたコロナガスは、日本時間の9月8日(金)15時から24時ごろに到来することが予想されます。
今後の推移
今回報告した大規模太陽フレアに伴うコロナガスの放出は、日本時間9月8日(金)15時から24時ごろに地球に到来し、第24太陽活動サイクル中、最大規模の影響を与える可能性があります。その場合、到来後数日間にわたって、地球周辺の宇宙環境や電離圏、地磁気を乱れさせる可能性があり、注意が必要です。また、今回の現象は、現在太陽面中央西寄りにある黒点群2673で発生しているもので、今後1週間ほど地球に影響を与える可能性があり、注意が必要です。
補足資料
用語解説
太陽の黒点群の領域で生じる爆発現象。この現象に伴い、強い紫外線やX線、電波等が放射される他、高温のガスが放出されるコロナ質量放出(CME)現象が生じることもある。発生したフレアの最大値により、小規模なものからA、B、C、M、Xの順にクラス分けされている。
太陽フレアやコロナ質量放出に伴って放出される、非常に高いエネルギーをもった粒子。これが地球に到来すると、宇宙飛行士や人工衛星が被曝したり、大規模な現象が起きた場合は航空機乗員などの健康に影響が出る可能性が指摘されている。また、これらの粒子が極域に降り注ぐことで、極域での電波の吸収が起こり無線通信障害が発生することがある。
高さ約60km以上の地球の大気は、太陽からの極端紫外線によってその一部が電離され、プラスとマイナスの電気を帯びた粒子から成る電離ガス(プラズマ)となっている。このプラズマ状態の大気が濃い領域を電離圏と呼ぶ。電離圏は、高さ300km付近でプラズマの濃さ(電子密度)が最も高く、下から、D層(90km以下)、E層(90km〜150km)、F層(150km以上) に分けられる。短波帯の電波を反射したり、人工衛星からの電波を遅らせたりする性質を持つ。電離圏は、太陽や下層大気の活動等のさまざまな影響を受けて常に変動しており、衛星測位や衛星通信等にしばしば障害を与える。
太陽の上層大気であるコロナのガスが惑星間空間に放出される現象。地球に到来すると大規模な宇宙環境変動を引き起こすことがある。
太陽活動はほぼ11年の周期で変動しており、その周期的な変動をサイクルとして1755年から数えている。第24太陽活動サイクルは2008年1月から開始したと考えられている。
本件に関する問い合わせ先
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