従来の群構造維持署名は、利用者数が増加した場合、鍵長を大幅に伸ばさなければ要求される安全性を達成できないという欠点がありました。鍵長を伸ばすと署名サイズなども大きくなり計算コストが大きくなります。このような欠点を克服した、利用者数の増加に影響を受けない暗号技術は緊密安全性を持つと呼ばれます。
複数の暗号要素技術を組み合わせて暗号アプリケーションを設計する場合、要素技術の中に一つでも緊密安全でないものが含まれていると、でき上がった暗号アプリケーションは緊密安全性を持ちません。そのため効率的な暗号アプリケーションをモジュラー設計する道具として、相互接続性と緊密安全性をあわせ持つ暗号要素技術が望まれてきました。しかしながら、緊密安全性を達成するためにこれまで用いられてきた手法は群構造維持暗号技術には適用できないことが知られており、未解決問題となっていました。
NTTおよびNICTでは、相互接続性を持つ群構造維持署名の開発に継続的に取り組んできました。効率的かつ安全な暗号アプリケーションをモジュラー設計するという目標を達成する上で、相互接続性と緊密安全性を兼ね備える群構造維持署名を開発することは、重要なマイルストーンのうちの一つといえます。