国立研究開発法人情報通信研究機構
2016年5月26日
ポイント
- 光電話回線網を利用した新たな日本標準時供給システムを構築、実験運用を開始
- 現在行っているアナログ電話回線による時刻供給(テレホンJJY)からの移行を目指す
- 光電話回線になることで、従来方式と比べて、高速、安定、通信費用の低廉化を実現
NICTは、電磁波研究所 時空標準研究室において、現在、電話回線による時刻供給システムで日本標準時の供給を行っております。
NICTは、セイコーソリューションズ株式会社(代表取締役社長: 山本 隆章)との共同研究により、NTT(東日本電信電話株式会社/西日本電信電話株式会社)の光電話回線網を利用した新たな標準時の供給システムを開発してきており、このたび、実験運用を開始します。本技術を導入することで、従来のアナログ電話回線網による供給と比べて、通信速度の高速性、接続の安定性や通信費用の低廉化などの実現が期待されます。
背景
NICTは、国立研究開発法人情報通信研究機構法に基づき、日本標準時の発生・維持・供給に関する業務を行っており、標準時の供給を、「標準電波」、「ネットワークによる時刻供給」、「電話回線による時刻供給」といった手法で、日本国内各所においてご利用いただいています。電話回線による時刻供給システム(テレホンJJY)は、平成7年からサービスを開始し、現在では毎月約14万件のアクセスがあります。主として、放送局、NTTの時報サービス「117」、交通機関等の重要機関における基準時計の同期に利用されています。しかし、技術的にはアナログ電話回線を利用したものとなっているため、現在の多様化する電話回線では、接続の安定性やその時刻同期精度の劣化等の問題があります。また、アナログのモデム装置は、既に国内では製造されておらず、今後の機器保守の上でも課題を抱えていました。
今回の成果
これらの課題解決に向け、このたび、光電話回線を利用した時刻供給システム(光テレホンJJY)を開発し、実験運用を開始しました。
今回開発したシステムは、NTTの光電話回線網のデータコネクトサービスを利用しています。標準時を供給するホストシステムには、NICTが開発した専用ハードウェアNTPサーバを活用し、プロトコルを改修することで、これまでのテレホンJJYと同等の情報提供を行う機能を持たせました。なお、セイコーソリューションズ(株)が機能拡張したクライアント装置「Time Server TS-2210テレホンJJYタイプ」を使用することにより、1ms以下の同期精度での時刻供給が期待できます。
また、光電話回線網は、アナログ電話回線網での接続に比べて、26倍以上の高速データ通信が行えるため、時刻供給精度の安定性と通信料金の低廉化を図ることができます。
今後の展望
今後は、光テレホンJJYの利用方法について、Webにて順次公開します。システムの充実を図り、定常運用を目指し、従来システムからの移行を進めていき、より高速、安定、低廉なサービスの供給を目指します。
補足資料
参考
セイコーソリューションズ株式会社
セイコーホールディングスグループのシステムソリューション会社として平成24年12月13日に設立。時刻同期の分野では、平成11年(当時: セイコープレシジョン株式会社)から、ネットワークに正確な時刻を提供する時刻配信装置「Time Serverシリーズ」の開発、販売を行っている。
クライアント装置(NTPサーバ)
【Time Server TS-2210仕様】
テレホンJJYタイプ個別仕様(時計修正部)
共通仕様 | |
閏秒対応 | 対応可能(自動設定または手動設定) |
サマータイム対応 ※ | 対応可能 |
テレホンJJY仕様 | |
時刻修正方式 | 情報通信研究機構のテレホンJJYサービスを使用して修正 |
修正精度 | ±10ms |
修正頻度 | 1~24回/日(デフォルト1回) |
光テレホンJJY仕様 | |
時刻修正方式 | 情報通信研究機構の光テレホンJJYサービスを使用して修正 |
修正精度 | ±1ms |
修正頻度 | 1~24回/日(デフォルト1回) |
※:日本国内でサマータイムの実施及び運用が決定した場合、セイコーソリューションズ株式会社ホームページでお知らせする。
詳細は、こちら(URLリンク)まで
URLリンク:
http://www.seiko-sol.co.jp/products/time_server/time_server_lineup/time_server_ts2210/
クライアント装置に関する問い合わせ先:
セイコーソリューションズ株式会社 ネットワークソリューション統括部 NS営業部
Tel: 043-273-3184
E-mail:
用語解説
電話回線による標準時供給システム(愛称:テレホンJJY)は、公衆通信回線を利用して高精度の時刻データを供給するシステムである。アナログの電話回線により、パソコン通信の形態で接続する。クライアントは、標準時に同期した時刻データを受け取り、回線遅延をクライアント側で計測することで補正が可能となる。遅延補正を行った時刻同期精度は1ms程度である。
NTTの提供する「フレッツ光ネクスト」「ひかり電話」による帯域確保型データ通信サービス。
インターネット等とは異なり、電話番号による1対1の接続でセキュアな通信が可能となり、帯域確保されるため安定した接続でデータ通信が行える。
インターネット等とは異なり、電話番号による1対1の接続でセキュアな通信が可能となり、帯域確保されるため安定した接続でデータ通信が行える。
Network Time Protocol(NTP)を用いた、計算機間の時刻同期を行うための基準時刻を配信するサーバ。通常のNTPサーバではソフトウェアでパケット処理を行うが、NICTは、パケット処理をハードウェアで行うサーバを開発しており、UTC(NICT)に直結したハードウェアNTPサーバを運用している。
従来のテレホンJJYにおける通信速度はアナログモデム接続で1200bps~2400bps。光電話のデータコネクトによる通信速度は64kbps(最小値)であり、26~52倍のデータ転送速度となる。
通信料金も、通常の電話に比べ全国一律で低廉(30秒で1円(税別)/64kbps)で利用可能である。
公開の具体的方法については順次、日本標準時グループWebページにおいてお知らせする。
なお、クライアント装置は、セイコーソリューショズ(株)から、6月に開催される展示会Interop Tokyo 2016に出展予定である。
*JJYは、国立研究開発法人情報通信研究機構の登録商標です。
フレッツ光ネクスト、データコネクトは、東日本電信電話株式会社/西日本電信電話株式会社の登録商標です。
本件に関する問い合わせ先
電磁波研究所 時空標準研究室
今村 國康
Tel: 042-327-6985
E-mail:
広報
広報部 報道室
廣田 幸子
Tel: 042-327-6923
Fax: 042-327-7587
E-mail: