TVCMなどの動画を用いた広告は、時系列に進む映像の中で視聴者にブランドやメッセージを訴求するマーケティングコミュニケーションの手法であり、そのクリエイティブ(広告表現内容)について、これまでは静止画を見せて主観で解答するといった方法で評価を行っていました。しかし、これまでの評価方法では、シーンごとのリアルタイムな印象など、より実態に即した精度でのきめの細かい評価を行うことが難しく、評価を踏まえた効果的な改善施策の構築が困難でした。また、記述や口述によるアンケートでは、回答者の意識に依存した評価のみとなり、その精度や内容の向上に限界がありました。
そこで、従来の評価方法に加えて、視聴者の「脳」の反応データを加味することによって、これらの課題を解決する試み(ニューロマーケティング)を行いました。「脳」の反応を直接測ることによって得られる価値は、以下の「定量的価値」・「定性的価値」の2つの観点が挙げられます。
定量的価値:
- 記述や口述による従来の手法より、正確に広告の効果を予測・評価できる
→「脳」の反応を測れば、購買行動など「消費者の行動」を予測できる
- 従来の方法よりも少ない労力で、正確な効果予測や評価が行える
→少数のサンプルでも、社会全体の反応が予測できる(数百名→十名程度)
定性的価値:
- (記述や口述による評価では不可能な)動画視聴中のリアルタイムな認知・情動状態を脳・生体情報から取得できる
- 無視した対象・無意識対象など、行動や内観がとれない場合も視聴者の反応を取得できる
これまでも、脳波測定など脳科学的手法を用いたマーケティング分野への応用手法(ニューロマーケティング)は、国内外でさまざまな取り組みが行われてきましたが、空間解像度や得られるデータの豊富さや、実験の内容と実施者のレベル、計測・解析・結果の解釈の科学的妥当性、指標のブラックボックス化など、さまざまな問題点が指摘されてきました。
そこで、NICT脳情報通信融合研究センターの西本伸志 主任研究員とともに、脳科学の世界でも最先端の「脳情報解読技術」
(注1)を応用し、これまでの課題を抱えた従来のニューロマーケティング手法とは一線を画する「動画広告視聴中の脳活動から企業のマーケティングに活用するため情報を得る」ための実証実験を行いました(本取り組みは、応用脳科学コンソーシアム
(注2)内で「CMデコーディング研究会」として企画した研究会の事業化活動です。)。