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脳活動パターンの解読技術を活用する実証実験により、動画広告・コンテンツの評価で効果を確認

~脳の活動情報の解読技術を活用したTVCM評価のトライアルサービスを提供開始~

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2015年8月6日

国立研究開発法人情報通信研究機構
株式会社NTTデータ
株式会社NTTデータ経営研究所
株式会社テムズ
 

NICT、株式会社NTTデータ(以下:NTTデータ)、株式会社NTTデータ経営研究所(以下:NTTデータ経営研究所)、株式会社テムズ(以下:テムズ)は共同で、TVCM(テレビコマーシャル)を中心とした動画広告の評価・改善・出稿前の効果予測などに、脳情報解読技術が応用可能な技術であることを、実証実験により確認しました。
実証実験は、TVCMなどの動画広告・コンテンツに対する視聴者の評価を、視聴中の複雑な脳活動のパターンから可視化する脳情報解読技術の検証を目的として、2015年3月から7月までの5ヶ月間実施しました。
この脳情報解読技術は、NICT脳情報通信融合研究センター(CiNet)で研究開発している技術であり、この技術を活用することによって、従来型の広告効果測定に加えて、動画広告・コンテンツに対する、「脳」という新たな観点の評価を行うことが可能となります。
2015年9月以降、動画広告の評価に脳情報の解読技術を活用する世界初のサービスとして、NTTデータグループにてTVCM等の評価を行うトライアルサービスの提供を開始します。

背景・活動の経緯

TVCMなどの動画を用いた広告は、時系列に進む映像の中で視聴者にブランドやメッセージを訴求するマーケティングコミュニケーションの手法であり、そのクリエイティブ(広告表現内容)について、これまでは静止画を見せて主観で解答するといった方法で評価を行っていました。しかし、これまでの評価方法では、シーンごとのリアルタイムな印象など、より実態に即した精度でのきめの細かい評価を行うことが難しく、評価を踏まえた効果的な改善施策の構築が困難でした。また、記述や口述によるアンケートでは、回答者の意識に依存した評価のみとなり、その精度や内容の向上に限界がありました。
そこで、従来の評価方法に加えて、視聴者の「脳」の反応データを加味することによって、これらの課題を解決する試み(ニューロマーケティング)を行いました。「脳」の反応を直接測ることによって得られる価値は、以下の「定量的価値」・「定性的価値」の2つの観点が挙げられます。

定量的価値:

  • 記述や口述による従来の手法より、正確に広告の効果を予測・評価できる
    →「脳」の反応を測れば、購買行動など「消費者の行動」を予測できる
  • 従来の方法よりも少ない労力で、正確な効果予測や評価が行える
    →少数のサンプルでも、社会全体の反応が予測できる(数百名→十名程度)
定性的価値:
  • (記述や口述による評価では不可能な)動画視聴中のリアルタイムな認知・情動状態を脳・生体情報から取得できる
  • 無視した対象・無意識対象など、行動や内観がとれない場合も視聴者の反応を取得できる

これまでも、脳波測定など脳科学的手法を用いたマーケティング分野への応用手法(ニューロマーケティング)は、国内外でさまざまな取り組みが行われてきましたが、空間解像度や得られるデータの豊富さや、実験の内容と実施者のレベル、計測・解析・結果の解釈の科学的妥当性、指標のブラックボックス化など、さまざまな問題点が指摘されてきました。
そこで、NICT脳情報通信融合研究センターの西本伸志 主任研究員とともに、脳科学の世界でも最先端の「脳情報解読技術」(注1)を応用し、これまでの課題を抱えた従来のニューロマーケティング手法とは一線を画する「動画広告視聴中の脳活動から企業のマーケティングに活用するため情報を得る」ための実証実験を行いました(本取り組みは、応用脳科学コンソーシアム(注2)内で「CMデコーディング研究会」として企画した研究会の事業化活動です。)。

実証実験における役割

  • 基礎技術提供:NICT脳情報通信融合研究センター
  • 実施主体:NTTデータ
  • 企画・実験支援:NTTデータ経営研究所
  • メタデータ等提供:テムズ

実証実験の概要

2015年3月に、NTTデータをはじめとして、広告主である企業5社から協力を得るとともに、TVCMのマーケティング調査で多くの実績を保有するテムズの協力を得て、TVCM視聴時の男女4名の脳活動データをfMRI(機能的核磁気共鳴画像法:脳の局所的な血流変化を捉える測定方法)にて取得しました。
1人当たり3時間程度におよぶ脳活動データとクリエイティブ評価、その他メタデータを組み合わせ、デコーディングモデル(脳活動から認知内容等を推定する数理モデル)を作成し、評価対象のTVCMの印象等の解読を行いました。

(実験実施内容)
  • fMRIによる動画視聴中の脳活動測定
  • さまざまな動画を視聴中の脳活動のパターンを基に脳情報を解読するデコーディングモデルを作成
  • 脳活動のパターンからシーンごとの視聴者の認知・印象内容等を解読

協力企業(広告素材提供)

・株式会社資生堂   ・株式会社ゼンショーホールディングス

・野村不動産株式会社  他

実験結果

TVCMを見ている時の脳活動のパターンから、視聴者の認知内容を解読するためのモデルを構築した結果、評価したいCMのシーンごとに、その視聴中の脳活動から「認知対象物」、「認知対象動作」、「印象」について、尤度(確率)の高いものをアウトプットすることが可能となりました。また、TVCMの型式(ブランド型、商品訴求型等)や手法(実写・アニメーション)についても、それらを問わず幅広く対応することが可能であることも分かりました。
この結果を基に、動画広告素材全体としてのインパクト評価、あるいは広告主が動画クリエイティブに込めた狙いと、実際に獲得された印象との定量的ギャップ分析も可能となります。

(実験から得られた成果)
  • TVCMのシーンごとに視聴者が「認知している対象(例:女性、子供)」、「認知している動き(例:食べる、飲む)」、「感じている印象(例:怖い、かわいい)」の解読の実現
さらに、これらの評価のみならず、得られた成果を基に、広告素材(動画)の改善のためのニーズに対する具体的なクリエイティブ要素の提案や、「出稿前の絵コンテ」による効果予測・評価の技術開発も進めています。

図:TVCMの評価イメージ

図:TVCMの評価イメージ
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トライアルサービスについて

2015年9月以降、上記実証実験の成果を基に、実際のマーケティングソリューションとして動画広告・コンテンツ評価サービスのトライアルバージョンの提供を開始します。本サービスは、最先端の脳活動情報のビッグデータ、実社会のメタデータ(認知率や到達効率等)、人工知能による自然言語処理技術、脳情報解読技術を組み合わせた、世界初のサービスとなります。
 
(トライアルサービスの内容(予定))
① 動画広告のシーンごとに与えた印象の分析
② 動画広告素材全体としてのインパクト評価
③ 動画クリエイティブに込めた広告主の狙いと実際の効果の定量的ギャップ分析
④ 素材改善のための具体的クリエイティブ要素の提案
⑤ 出稿前の絵コンテによる効果予測・評価

今後について

本サービスは、NTTデータグループにおいて、2016年4月より本格的な商用化を開始します。こうした脳情報の利活用に関する基礎研究および、その社会展開は、日本の国家的戦略にも位置付けられおり、今後、対象とする範囲(TVCM以外の動画など)の拡大や、提供するアウトプットの向上(出稿後だけでなく、出稿前の予測にも利用)に取り組み、世界に先駆けた次世代の脳情報通信産業活性化に向けて取り組んでいきます。

(注1)参考資料:「Nishimoto, Gallant et al.,  (2011). Reconstructing visual experiences from brain activity evoked by natural movies. Current Biology, 21(19), 1641-1646. doi:10.1016/j.cub.2011.08.031」    
(注2)応用脳科学コンソーシアムとは、NTTデータ経営研究所が日本神経科学学会の協力を得て設立した、オープンイノベーションモデルのコンソーシアムで、40社を超える異業種の民間企業と異分野の研究者が一堂に会し、脳科学およびその関連領域の最新の研究知見を基盤に、「研究開発」「人材育成」「人材交流および啓発」に取り組み、複数のR&D研究会のもと幅広い研究活動を進めています。
    応用脳科学コンソーシアムWebサイト

*文中に記載する商品名、会社名、団体名は、各社の商標または登録商標です。



本件に関するお問い合わせ先

報道関係のお問い合わせ先

株式会社NTTデータ
広報部

風間
Tel:03-5546-8051

株式会社NTTデータ経営研究所
コーポレート統括部 プラクティスサポート部

伊達、井上
Tel:03-5213-4016(代)
E-mail:

国立研究開発法人情報通信研究機構
広報部
報道担当

廣田
Tel: 042-327-6923
E-mail:

株式会社テムズ

羽吹
Tel:03-3818-0254
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製品・サービスに関するお問い合わせ先

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テレコム・ユーティリティ事業本部
ビジネス企画室

矢野、前田
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株式会社NTTデータ経営研究所
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石川
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