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南紀白浜で世界初の耐災害ネットワーク実証実験を開始

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2015年4月23日

国立研究開発法人 情報通信研究機構
和歌山県 白浜町

ポイント

    • 和歌山県白浜町にてNICTが開発した災害に強い無線メッシュネットワークの実証実験を開始
    • インターネットとの接続が途絶えても防災情報へのアクセスや通話を提供する技術
    • 災害に強く平時にも活用できるネットワークのモデルを確立・地域の防災減災や地域振興へ貢献

NICTと和歌山県西牟婁郡(にしむろぐん)白浜町(白浜町、町長: 井澗 誠)は共同で、NICTが研究開発した耐災害ワイヤレスメッシュネットワークを町内に構築し、5月3日(日)の白良浜海開きイベントにて実証実験を開始します。
白良浜だけでなく、千畳敷や番所山公園といった観光スポットや白浜町役場に「情報通信ステーション」という装置を設置し、一般の方々にWi-Fiによるインターネット接続を提供します。この情報通信ステーションとは、場所に応じた観光情報や避難所情報を提供し、開発したアプリケーションによる通話やメッセージ交換も可能にするものです。これらの機能は、インターネットとの接続が途切れた状態でも、情報通信ステーション同士を網の目(メッシュ)状につないで構成される耐災害ワイヤレスメッシュネットワークのみで実現できる世界初の技術です。
東日本大震災では、インターネットや電話網に接続できず、情報へのアクセスや通話ができない状況が起こりました。本技術は、そのような非常時の地域内の情報アクセス、通話やメッセージ交換の実現に寄与するものです。本実証実験については、白良浜海開きイベント会場で午前9時から参加のための説明会を実施します。

背景

東日本大震災を契機にNICTが進めてきた災害に強いネットワークの研究開発の成果の一つが耐災害ワイヤレスメッシュネットワークです。2014年3月に宮城県女川町内に実証ネットワークを設置して、主に防災用途として港湾のカメラ映像を同町仮役場内で監視する実証実験を開始しています。
本技術の実利用と普及を促進するには、災害時に加えて平時にも活用できること、すなわち、防災減災と地域振興の両面で有効性を示すことが重要であると考え、防災と観光に役立つネットワークに関心の高い白浜町との間で情報通信分野における研究協力に関する覚書を2014年12月に締結し、同町内での実証実験の準備を進めてきました。

今回の成果

耐災害ワイヤレスメッシュネットワークを構成する情報通信ステーションは、通信機能と情報処理機能とを一つにまとめた装置です。複数のステーションが連携して通信と情報処理を行います。各ステーションが観光情報や避難所情報などの情報を提供したり、ユーザが発信するメッセージを受け取って他のステーションやユーザへ配信したり、ユーザ同士の通話を提供したりします。万が一、インターネットとの接続が途切れた状態でも、耐災害ワイヤレスメッシュネットワークのみで、これらの機能を継続して利用できることが最大の特長です。
白浜町には情報通信ステーションを9カ所に設置し、それらを免許不要の無線で相互に接続し、屋外観光スポットにもWi-Fiスポットを設け、最大規模の耐災害ワイヤレスメッシュネットワークを構成しました。(補足資料参照

今後の展望

本実証の一環として、白浜町役場が防災目的で沖合映像監視システムを接続して検証する計画があります。防災減災や観光振興などに資する利用方法を白浜町役場とNICTが共同で検討し、実施していきます。
なお、本実証に関する説明会を5月3日(日)の「2015年白良浜海開きイベント」で行う予定です。



補足資料

2015年白良浜海開きイベントスケジュール

開催日 平成27年5月3日(日) 
場所 白良浜海水浴場  
時間
  8:30~13:20
 
 
  8:30~
  9:05~
  9:20~
10:00~
10:30~
10:40~
一斉清掃受付
白浜観光協会会長挨拶ほか
一斉清掃 / 実証説明会
神事式典
白浜町長挨拶
テープカット・初泳ぎ
  (以下省略)  
(実証説明会 9:00~11:00に同会場内で実施予定)

実証ネットワークの構成について (詳細)

図1に示すように、情報通信ステーションを9カ所に設置し、無線局免許が不要な5.6GHz帯/2.4GHz帯Wi-Fi無線伝送装置(NICT開発)で接続した。ただし、紀州・白浜温泉むさしとBig・Uの間の約5kmは4.9GHz帯固定無線アクセス装置(民間会社製、免許登録必要)を用いている。また、多くの海水浴客が訪れる白良浜のWi-Fiスポットには多ユーザ用(最大640人の同時接続が可能)Wi-Fi装置(同社製)4台を適用した。
9カ所のうち、白良浜(2カ所)、千畳敷、番所山公園の4カ所は屋外に、白浜町役場は屋内にWi-Fiスポットを形成し、一般ユーザが本実証ネットワークに接続して独自機能を利用したり、インターネットに接続したりできるようにした。従来のWi-Fiスポットのほとんどは、屋内用設備を用いて喫茶店や駅、地下街などの屋内に設けられているが、今回は屋外用設備により屋外観光スポットにもWi-Fiスポットを設けたことが特徴の一つとなっている。
 本ネットワークは、白浜町役場で商用インターネットに接続している。また、和歌山県の協力を得て、県立情報交流センターBig・U(田辺市)より、県情報ハイウェイ(通称:きのくにe-ねっと)を経由して商用インターネットに接続している。2カ所でインターネットに接続することで耐災害性を高めている。
 
情報通信ステーション設置箇所は以下のとおり。
図1に示すとおり、通信中継のみを行うステーションと、Wi-Fiスポットも提供するステーションとがある。

図1 実証ネットワーク構成

図1 実証ネットワーク構成(国土地理院地図を基にNICTが作成)
[画像クリックで拡大表示]

  1. 白浜町役場 屋上(1階屋内と2階屋内でWi-Fiスポットを提供)
  2. 白浜はまゆう病院 屋上 
  3. 番所山公園の南方熊楠記念館 屋上(屋上でWi-Fiスポットを提供)
  4. 景勝地「千畳敷」の千畳茶屋2階(1階屋外でWi-Fiスポットを提供)
  5. 浜辺の宿しらら 屋上(白良浜にWi-Fiスポットを提供)
  6. 露天風呂しらすな 屋外(白良浜にWi-Fiスポットを提供)
  7. 紀州・白浜温泉むさし 屋上
  8. ホテルシーモア 屋上
  9. 和歌山県立情報交流センターBig・U 屋上

情報通信ステーションの設置例について

南方熊楠記念館屋上の情報通信ステーションの設置例を図2に示す。情報通信ステーション本体1台に対し、他の情報通信ステーションと無線接続するためのアンテナと無線送受信装置が複数設置されている。

図2 実際の情報通信ステーションの設置例(南方熊楠記念館屋上)
図2 実際の情報通信ステーションの設置例(南方熊楠記念館屋上)[画像クリックで拡大表示]
情報通信ステーションが提供する機能について

情報通信ステーションが提供する2つの機能を図3に示す。同ステーションがインターネットと切断されていても、通信と情報処理の2つの機能が提供されることで、災害時でも地域内の通話やメッセージ交換などを提供することができる。実証開始時点では、情報通信ステーションごとのウェブコンテンツ提供(観光情報、当該場所近辺の避難所地図など)、実証ネットワーク内で利用可能な通話機能とメッセージ交換機能(アプリケーションをスマートフォンにダウンロードして利用する。Android版を用意。)を本実証ネットワーク特有の機能として提供する。また、一般的なインターネットへの接続機能も提供する。今後、iOS版アプリケーションの追加や、安否情報共有や災害情報配信機能の追加を検討していく。

図3 情報通信ステーションが提供する通信機能と情報処理機能
図3 情報通信ステーションが提供する通信機能と情報処理機能[画像クリックで拡大表示]

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用語解説

耐災害ワイヤレスメッシュネットワーク

NICTが開発した強い耐災害性を持つ地域用ワイヤレスネットワーク、通称NerveNet(ナーブネット)。通信機能と情報処理機能を兼ね備えた情報通信ステーションを相互に網の目(メッシュ)状につないで構成します。メッシュ状ゆえに特定箇所に通信が集中しにくく、回線が切断されても迂回経路へ高速に切り替えて通信をなるべく維持します。インターネットに依存せずに、各情報通信ステーションが平時と非常時のコンテンツ提供、通話、ユーザ同士のメッセージ交換(非常時には安否情報の交換にもなる)を提供できることが最大の特長です。

白浜町について

和歌山県の南部に位置し、大きくは紀伊水道に面した半島地域、富田川下流域及び日置川流域に分かれます。面積は、200.96平方キロメートル、年間平均気温は17.2℃、年間降水量は1,638mm、年間日照時間は2,047時間で、温暖で明るく過ごしやすい気候と言えます。森林が全体の約81%を占め、北西の半島部に市街地が形成され、南部では海岸地域まで山地が迫り、海岸、河川流域、谷間部に集落が点在しています。町域には、田辺南部海岸県立自然公園、熊野枯木灘県立自然公園、大塔日置川県立自然公園が含まれるなど、海・山・川にわたる豊かな自然環境に恵まれた地域です。交通網は、東京方面へ航空路により約1時間程度で結ばれ、京阪神地域へは、JR紀勢本線、国道42号、高速道路(近畿自動車道紀勢線)などにより、約2~3時間で結ばれています。現在、高速道路の南進が進められているなど、今後さらなる交通アクセスの向上が期待されています。
5月3日に海開きイベントを行う白良浜(しららはま)をはじめ、観光資源に恵まれていることから、国内外から年間約300万人の観光客が訪れる観光の町になっています。その一方で、今後の発生が予測されている南海トラフ地震に備える必要があり、観光と防災を両立する情報通信ネットワークへの関心が高い地域です。



本件に関する問い合わせ先

NICT 耐災害ICT研究センター
ワイヤレスメッシュネットワーク研究室

井上 真杉、大和田 泰伯
Tel: 042-327-7506
E-mail:

広報

NICT 広報部 報道担当

廣田 幸子
Tel: 042-327-6923
Fax: 042-327-7587
E-mail:

白浜町 総務課 企画政策係

坂本、小川
Tel: 0739-43-5555
Fax: 0739-43-5353