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高分解能航空機搭載映像レーダ(Pi-SAR2)による御嶽山噴煙下レーダ画像

~30cmの細かさで噴火口の場所や大きさ・その形状が明瞭に~

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2014年10月2日

独立行政法人 情報通信研究機構

NICTは、火山の噴煙や雲の影響を受けることなく地表面を30cmの細かさで観測することができるXバンドの高分解能航空機搭載映像レーダ(略称: Pi-SAR2)、並びに観測データの高速処理技術の開発を進めてきました。この装置を用いて、平成26年9月27日(土)に噴火が始まった御嶽山の緊急観測を10月2日(木)に実施し、御嶽山の火口周辺の詳細なレーダ画像を取得しました。得られた画像は、直ちに火山噴火予知連絡会をはじめ関係機関に提供しました。また、Webサイトを通じて広く公開します。
URL: https://www2.nict.go.jp/aeri/rrs/pisar2-ontake/index.html

今回の観測結果

平成26年10月2日(木)に、県営名古屋空港を離陸し、12時45分から14時30分の間に、雲に覆われ噴煙が立ち上る御嶽山山頂周辺の地表面を、上空約13,000mを飛行しながら、様々な方角から複数回観測しました。

図1 平成26年10月2日 12:51頃の御嶽山山頂付近のPi-SAR2画像
御嶽山山頂を中心とした約300m四方を切り出した画像です。噴煙に隠れて様子がわからなかった連続した火口の様子を明瞭に判別できます(印で囲った部分)。このデータは観測中に画像化し、データサイズを縮小して航空機から衛星経由で伝送し、火山噴火予知連絡会に速報として提供しました。

図2 12:38頃の御嶽山山頂付近(山腹に細い筋が何本も見られる)
御嶽山山頂から西に下った部分の画像です。山腹に細い筋が何本も観測されています。

図3 12:43頃の御嶽山山頂付近 (国土地理院が推定した火口の確認)
御嶽山山頂から南に下った部分の画像です。赤い囲いを付けた部分は、これまでの火口と推定されます。10月1日に国土地理院により発表された新しい火口の推定位置は、図の黄色い丸い線で囲った部分になります。

別図1
本図1の周辺(黄色い四角)を含むより広い領域(3kmx3km)を示しています。表示上データを間引いています。

別図2
本図2の周辺(黄色い四角)を含むより広い領域(3kmx3km)を示しています。表示上データを間引いています。

別図3
本図3の周辺(黄色い四角)を含むより広い領域(2kmx2km)を示しています。表示上データを間引いています。

別図4
観測中に航空機の窓から撮影した御嶽山方向、厚い雲に覆われ、噴煙も識別できない。



用語解説

航空機搭載合成開口レーダ(Pi-SAR2)

NICTが開発したPi-SAR2は、Xバンドの電波を利用することにより、火山の噴煙はもとより、天候、昼夜等に関係なく地表面を映像化することができます。また、Pi-SAR2は合成開口処理により、世界最高レベルの空間分解能(30cm)を有しています。さらに、Pi-SAR2は、機上においても数分で2km四方の偏波疑似カラー画像を生成する処理装置を搭載しています。これにより、災害等の緊急時にも観測しながら迅速に関係機関に提供することが可能です。
合成開口レーダは、航空機や衛星の進行方向に対して斜め下方に電波を照射し、反射してきた電波を受信して地表面を航空写真のような画像として観測することができる。光学による航空写真等と違って、雲や火山の噴煙などに邪魔されないことや高い高度で観測しても分解能(画像の細かさ)を高くすることができる。Pi-SAR2は、通常6,000mから12,000mの高さで観測しても30cmの分解能があり、一度に5km-10kmの幅の領域を観測できるのが特徴。観測高度を高くできるのと真上ではなく斜め上から観測するため、火山噴火時には航空機でも噴煙に影響されず安全に観測ができる。

Pi-SAR2を搭載した航空機の写真 左の囲みの写真はPi-SAR2のアンテナ部(カバーを外したところ)

Pi-SAR2を搭載した航空機の写真
左の囲みの写真はPi-SAR2のアンテナ部(カバーを外したところ)
Xバンド

レーダに使用されるマイクロ波(1GHz~40GHzの周波数の電波。1GHzは10の9乗ヘルツ)の周波数をいくつかの帯域に分けて呼ぶ慣習的な呼び方。Xバンドは約10GHzのマイクロ波のこと。XバンドのPi-SAR2は、火山の噴煙や雲の影響を受けることなく、昼夜を問わず観測が可能。分解能を高くできることと、大気による減衰が小さいことが特徴。

空間分解能

地上の物体の大きさがどこまで識別できるかの尺度。例えば、30cmの空間分解能とは、「30cm以上離れた2つのものが映像の中でも2つに分かれて見える」という意味。

ポラリメトリ観測機能と偏波疑似カラー画像

電波の振動する向き(偏波)は、地上の状況により固有変化をして反射(散乱)する。この性質を用い、偏波(振動する向き)の異なる2つの電波で地表面を観測し、それぞれの場合の反射(散乱)信号を精密に測定し、対象を詳細に識別する機能をポラリメトリ観測機能という。Pi-SAR2では、地表面に対し垂直に振動する電波(垂直偏波)と水平に振動する電波(水平偏波)を観測に使用している。送信した偏波に対して受信された偏波の強さの組み合わせのうち3つを赤、緑、青の3原色に割り当てることで、疑似的なカラー画像が得られる。これを偏波疑似カラー画像と呼んでいる。下図の右図では偏波が変化した場合を緑、水平偏波がそのまま反射されたものを赤、垂直偏波がそのまま反射されたものを青に割り当てている。一般に、樹木や植物が広がっている場合には偏波が変化する。

紀伊半島で発生した土砂崩れの状況を観測した画像(平成23年10月7日) 左は単偏波画像、右は偏波疑似カラー画像
紀伊半島で発生した土砂崩れの状況を観測した画像(平成23年10月7日)
左は単偏波画像、右は偏波疑似カラー画像

本件に関する問い合わせ先

電磁波計測研究所

浦塚 清峰
Tel:042-327-7536
E-mail:

広報

広報部 報道担当

廣田 幸子
Tel: 042-327-6923
Fax: 042-327-7587
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