光と電波の中間の周波数帯であるテラヘルツ領域に位置する電磁波。近年のパルスレーザー技術の進歩とともに、テラヘルツ波の発生・検出技術が大きく進展した。この周波数帯の光子のエネルギーが、多くの物質系でのエネルギーと同程度であるために、物質にテラヘルツ光を当てたときの応答が物質科学研究にとって重要となっている。超伝導体は、クーパー対が凝縮するために、BCSギャップというエネルギーで特徴付けられるが、このエネルギーもテラヘルツ帯にあり、その応答から超伝導を探ることができる。
元来或る対称性をもつ系が、温度などを変化させたときに、その対称性が破れた状態が実現することをいう。超伝導体においては、マクロ波動関数の位相を変えても不変という対称性を元来持つ金属において、この位相が特定の値に揃う、という対称性の自発的破れが生じている。
液体から固体への変化のように、無秩序な(対称性の高い)状態から秩序のある(対称性の低い)状態に系が相転移するときに、その秩序を特徴付けるマクロな量。超伝導状態では電子2つが対(クーパー対)を組み、それらが一種のボース凝縮状態をとることによって生じる相転移現象であり、系全体の量子力学的位相が揃うことで一つのマクロな波動関数として発現する。超伝導状態における秩序パラメータはマクロ波動関数という複素量であり、その絶対値(振幅)はクーパー対の密度に相当する。
超伝導体の秩序パラメータの振幅が集団的に(系全体に亘って)振動する現象をいう。自発的対称性の破れが起きた超伝導体のエネルギー(正確には、自由エネルギーと呼ばれる量)を、複素量である超伝導秩序パラメータの実数部と虚数部の関数として描くと(
図1(b))、ワイン瓶の底(あるいはメキシカンハット)の形になり、位相モードは系の状態が円周状の溝に沿って運動するのに対して、溝の壁を駆け上がる振動に対応する。素粒子物理学におけるヒッグス粒子もこのような振動モードに対応し、超伝導との類似性を追究する研究に端を発して考え出された。
1957年にバーディーン、クーパー、シュリーファーの3人によって提唱された、超伝導状態を微視的に記述することに成功した基礎理論。3人の頭文字をとってBCS理論と名付けられ、3人は1972年のノーベル物理学賞を受賞した。
ここでこでいう低温超伝導体とは、超伝導を担うクーパー対が、対を組む二つの電子の相対的な角運動量がゼロであるような(s波)超伝導のことである。通常の低温超伝導体はs波が典型的であり、本研究でもs波超伝導体であるNbNを用いた。