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端末のみでネットワークを構成する端末間通信ネットワークシステムを開発

~バスなどが人だけでなく情報も運ぶ~

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2014年5月28日
ポイント

    • 移動するバスを含め、端末のみでネットワークを構成する新しい形態のワイヤレスネットワークシステムを開発
    • 中央制御装置が不要のため、中央制御装置の故障・停止や通信の輻輳等によるネットワークの障害が発生しない。
    • 地域情報の配信・収集・共有や災害時の通信確保など地域に根ざした情報ネットワークの実現が期待

独立行政法人 情報通信研究機構(以下「NICT」、理事長: 坂内 正夫)は、既存のインフラを用いず、端末のみでネットワークを構成する端末間通信ネットワークシステムを開発しました。地域内を移動する人やバスなどを含めた柔軟なネットワークを構成できるため、行政サービスやイベント情報などの配信、センサ情報などの収集、高齢者や子供の見守り、災害時の情報配信や安否確認など、地域社会に密着した幅広い情報の配信・収集・共有が可能で、かつ、災害等にも強い地域に根ざしたネットワークを従来のネットワークに比べて低コストで簡便に構築することができます。
今回開発した端末間通信ネットワークシステムは、関係自治体や事業者のご協力の下、情報配信を中心とした実証実験を東京都港区台場地域で、情報収集を中心とした実証実験を京都府精華町けいはんな学研都市地区にて行っています。

背景

一般のワイヤレス通信ネットワークは、基地局やハブ・アクセスポイントといった中央制御装置の制御により通信が行われており、通信端末同士は近距離にあっても中央制御装置を経由して接続することが求められます。このような中央制御型の通信ネットワークは、中央制御装置が故障・停止した場合やネットワーク容量を超えるアクセスを受けて輻輳が発生した場合には、機能の喪失や低下等が発生する課題があります。また、一般に中央制御装置は、端末装置と比べ大型・多機能・高消費電力・高価であることが多く、より低コストで簡便にネットワークを構築できる技術の実現が求められていました。

今回の成果
バス内設置型サイネージ端末の例
バス内設置型サイネージ端末の例

今回開発した端末間通信ネットワークは、中央制御装置が不要で、通信端末は互いの通信範囲に入ると、自動的にネットワークを形成して通信を行います。よって、個々の端末装置などの故障や停止がネットワーク全体に影響を及ぼすことがなく、故障や災害に強いネットワークを実現しています。また、通信端末は、コンテンツの時間情報を比較することで新しいコンテンツへのアップデートを行うため、常に新しい情報を地域住民に配信することができます。
地域内を移動する人やバスなどを利用した柔軟なネットワーク構成が可能なため、地域社会に密着した情報共有システムとして、行政サービス情報や地域イベント、商品広告の配信、地域の環境情報の収集等が可能です。また、グループ通信機能を利用することで、高齢者や子供の見守り、安否確認などに活用できます。さらに、同報機能を利用することで、緊急、災害時の情報配信を行うことができます。

今後の展望

本実証実験の結果等を踏まえて、端末間通信ネットワークシステムの一層の改善検討を行うとともに、IEEE802国際標準化委員会における端末間通信(Peer Aware Communications)の標準化に積極的に貢献することで、端末間通信ネットワークシステムの早期の実現に向けた研究開発に引き続き取り組んでいきます。
なお、5月28日(水)から30日(金)に東京ビッグサイトで開催される「ワイヤレス・テクノロジー・パーク2014」で、本システムの一部を展示します。



補足資料

1 端末間通信ネットワークシステム

図1に端末間通信ネットワークシステムの構成図を示します。通信端末には、屋内設置型サイネージ端末、バス内設置型サイネージ端末、屋上設置型端末、情報収集型センサ端末、携帯型端末などがあります。近接する通信端末間の通信は、電波産業会標準規格ARIB STD-T108及び国際標準規格IEEE802.15.4gに対応しています。
例えば、サイネージ端末や携帯端末などからイベント情報などを入力すると、近隣の他の端末に伝送されます。また、バス内サイネージ端末は、バスの利用者への周知とともに、バスの移動に伴い他の通信端末へ接近すると、その端末へ情報を伝送します。このように、人やバスの移動により、情報がバケツリレーのように周知・共有されていきます。また、屋上等に端末を設置することで、携帯端末よりも広範囲に情報を伝達することができます。情報収集型端末は、気象センサ、照度センサ等により、センサデータを収集し、付近を走るバスなどに伝送し、バスが接近した別の場所にある管理サーバーにデータを伝達します。バス内の端末は、バス停付近の端末と通信することで、バスを待つ人たちへのバスの接近予告やバスの位置管理(バスロケーション)も実現できます。また、端末に搭載されているGPS情報によるバスの運行管理にも活用できます。なお、情報をネットワーク全体に拡散せず、一部の端末間のみに限定して送受信を行うグループ通信機能を持たせることも可能です。

図1 端末間通信ネットワークの構成図
図1 端末間通信ネットワークの構成図

このネットワークを地域型情報共有システムとして利用した場合、例えば、行政サービスの配信、地域イベントや商品広告の配信、環境情報の共有などに活用できます。行政サービスとイベント情報などは、端末から入力する以外に、自治体や事業者のホームページから自動的に取り込むように設定することが可能です。また、グループ通信機能を使えば、小型の携帯端末により、高齢者や子供の見守り、安否確認などにも活用できます。さらに、同報機能を利用することにより、緊急、災害時の警報や注意報をすべての端末に一斉に配信することができます。

2 実証実験システムの概要

現在、東京都港区台場地域で運行している台場シャトルバス「お台場レインボーバス」とその沿線施設、並びに京都府精華町で運行している「精華くるりんバス」とその沿線施設に端末間通信ネットワークを配置し、バス内サイネージ端末と各施設に設置されたサイネージ端末などを用いた行政サービスや地域イベント情報等のバスによる運搬・配信実験や、バス接近予告などの実験を関係自治体や事業者のご協力の下、実施しています。

図2 端末間通信ネットワークの東京都港区台場地域での配置図
図2 端末間通信ネットワークの東京都港区台場地域での配置図
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(1)東京都港区台場地域での実証実験
台場地域での通信端末として、「お台場レインボーバス」全7台と協力事業者・ホテル等の沿線施設に計13台のサイネージ端末を、沿線建物の屋上に計3台の屋上端末を設置しました。発信コンテンツは、NICTワイヤレスネットワーク研究所内に設置した公共サービスサーバーにより、港区役所や協力事業者等のWebページの必要な情報を取得し、インターネットに接続されているサイネージ端末に伝送することで、バスの移動に伴い他の端末に伝送します。また、バス停付近に設置したサイネージ端末は、サイネージ端末を設置したバスが通信範囲に入ると、バスの接近を示す画面を表示します。その他、自治体などの担当者が端末から直接情報を入力して、他の端末に伝送することも可能です。

図3「お台場レインボーバス」と沿線施設に設置した各種端末の例
図3 「お台場レインボーバス」と沿線施設に設置した各種端末の例
図4 端末間通信ネットワークの京都府精華町での配置図
図4 端末間通信ネットワークの京都府精華町での配置図
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(2)京都府精華町での実証実験
京都府精華町けいはんな学研都市地区での通信端末として、「精華くるりんバス」全3台(予備1台を含む)と沿線施設に計8台のサイネージ端末を、沿線建物の屋上に計4台の屋上端末を、沿線の自動販売機上に計4台の情報収集型センサ端末を設置しました。情報収集型センサ端末には、温度、湿度、照度などの気象情報測定センサが搭載され、局所的な気象モニタリングサービスの実現が期待されます。センサデータはバスの移動により運搬され、インターネットに接続しているサイネージ端末から情報解析サーバー(NICTワイヤレスネットワーク研究所内に設置)に集められ、分単位でデータ解析することによって、収集ルートや情報拡散効果などを確認することができます。

図5 「精華くるりんバス」と沿線施設に設置した各種端末の例
図5 「精華くるりんバス」と沿線施設に設置した各種端末の例



用語解説

Peer Aware Communications

インフラに頼らず、端末間同士でネットワークを形成して様々なサービスをサポートするための技術。IEEE 802.15.8として標準化が進められている。
http://www.ieee802.org/15/pub/TG8.html

ARIB STD-T108

920MHz帯の周波数チャネル割当てや使用ルールを規定している標準規格

IEEE 802.15.4g

2012年に策定された国際標準規格で、ワイヤレスセンサネットワークの物理層技術について仕様を定めている。



本件に関する 問い合わせ先

ワイヤレスネットワーク研究所
ディペンダブルワイヤレス研究室

李 還幇、三浦 龍
Tel: 046-847-5432
E-mail:
E-mail:

広報

広報部 報道担当

廣田 幸子
Tel: 042-327-6923 
Fax: 042-327-7587
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