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LTE技術を活用したホワイトスペース対応のスマートフォンを開発

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2014年3月17日
ポイント

    • 周波数利用効率が高いLTE技術を活用したホワイトスペース対応で携帯が可能な小型軽量スマートフォンを開発
    • ホワイトスペース対応システムと既存のLTEネットワークとの間をスムーズに切替えが可能
    • 通信トラフィックの負荷分散などを目的とした、ホワイトスペース対応の移動通信システムの技術を開発

独立行政法人 情報通信研究機構(以下「NICT」、理事長: 坂内 正夫)は、テレビ放送帯のホワイトスペースでの利用を想定した、LTE(Long Term Evolution)技術を活用した小型軽量のスマートフォンの開発に成功しました。今回開発したスマートフォンは、テレビ放送帯(470~710MHz)のホワイトスペース対応システムと既存のLTEネットワークとの間を選択して使用できることから、通信トラフィックの負荷分散やそれによる通信速度の向上などが図られるものと期待されます。小型軽量な端末となったことで、移動通信において特に利用者数が多い携帯電話としての実証実験が可能になり、ホワイトスペースを利用した移動通信の技術的課題の明確化や有効な利用シナリオの検討に活用していく予定です。

※今回開発したシステムは、平成25年度に総務省から受託した「複数周波数帯の動的利用による周波数有効利用技術の研究開発」及び「車車間通信技術を活用したネットワーク構築に関する研究開発」の成果を利用して実現したものです。なお、実験に使用する基地局及び今回開発したスマートフォンでは、ホワイトスペースに対応した通信機能については実験試験局免許を取得して実験を実施する予定です。

背景

スマートフォンやタブレット端末の爆発的な普及や動画視聴などの大容量通信の需要の高まりにより、利用者の通信需要を満たすための移動通信用の周波数不足が深刻化しています。その解決方法の一つとして、ホワイトスペースを活用する技術が検討されています。NICTでは、このホワイトスペースにおいてLTE技術を活用した基地局及びPC接続の通信端末アダプタから構成されるホワイトスペース対応システムを世界に先駆け開発してきました。しかし、ホワイトスペースを更に有効に利用するためには、移動通信において特に利用者が多い携帯端末により、ホワイトスペースの有効性を実証することが重要です。そのためには、携帯が可能で実用的な動作時間を持つ端末が必要であり、小型化や省電力化などの技術的な課題が残されていました。

今回の成果
今回開発したホワイトスペース対応スマートフォン
今回開発したホワイトスペース対応スマートフォン

今回NICTは、テレビ放送帯(470~710MHz)のホワイトスペースでの利用が可能なLTE技術(Release 8)に対応した利用者が携帯して使用できる実用的な小型軽量型のスマートフォンを開発しました。このスマートフォンは、市販のものと同じサイズで同様の機能を持っています。ホワイトスペースは未だ日本では利用可能でないことから、2枚のSIMカードを挿入する機構とし、NICTが開発したホワイトスペース対応システム(LTE技術を利用)と既存のLTEネットワークに接続するために、これら2枚のSIMカードをソフトウェアで切り替えることで、ホワイトスペース対応システムか、既存のLTEネットワークかをスムーズに選択して利用することを可能にしました。これにより、商用LTEネットワークから通信トラフィックをホワイトスペースにオフロードし、周辺地域における通信速度の向上などが期待できます。このスマートフォンは、従来の携帯電話で使用されているLTE用処理回路をそのまま使用し、これにテレビ放送帯に対応した無線回路を接続するという構成にすることで、端末の小型化と省電力化を実現しました。

今後の展望

NICTは、今回開発したスマートフォンを既に開発しているホワイトスペース対応システムに接続し、移動利用における通信性能の評価や、限定された地域における情報提供システムなどの実証実験を行う予定です。また、スマートフォンのホワイトスペース通信用のUHF帯アンテナの更なる小型化など、実用化に向けた研究開発を引き続き進めていく予定です。
なお、テレビ放送帯のホワイトスペースにおける通信には課題が多く、特に移動を伴う通信の場合にはテレビ放送やその他のホワイトスペースを利用するシステムへの影響を回避することが必要になります。



補足資料

今回開発したホワイトスペース対応スマートフォン

今回開発したホワイトスペース対応スマートフォンを図1に示します。このスマートフォンは、LTE技術(Release 8)に対応しており、テレビ放送帯(470MHz~710MHz)で運用するホワイトスペース対応基地局のほか、2GHz帯における既存のLTEネットワークに接続することができます。ホワイトスペースでの通信用にUHF帯アンテナを接続しているほかは、市販のスマートフォンと同等の形状をしています。今回開発したスマートフォンは、デュアルSIM対応となっており、ホワイトスペース対応システムへの接続用のSIMカードと、既存のLTEネットワーク接続用のSIMカードの2枚のSIMカードを内蔵することができます。これらの2枚のSIMカードをソフトウェアで切り替えることで、通信周波数を選択して通信することができます。なお、将来的には共通の管理装置(EPC)を使用することにより、既存のLTEネットワークとホワイトスペース対応システムとの間をローミングさせることも可能です。この場合、現在2枚使用しているSIMカードは1枚のみで使用することが可能になります。このスマートフォンにはホワイトスペースで通信するためのUHF帯アンテナを内蔵しており、使用時には引っ張り出して伸ばして使用します。また、より安定した通信を行うためには受信用のサブアンテナを更に追加して接続することもできます。
試験システムの構成を図2に示します。図中のホワイトスペース対応基地局と、利用可能な周波数を計算するホワイトスペースデータベースは、NICTが既に開発したものです。EPCは、ホワイトスペース対応基地局を運用するためにNICTが導入した設備です。ホワイトスペース対応基地局の送受信用アンテナは、横須賀リサーチパーク(YRP)の屋上に設置しています。今回開発したスマートフォンは、ホワイトスペースデータベースにスマートフォンの現在の位置情報やスマートフォンの無線諸元を送信することで、利用可能な周波数や送信電力の情報を取得し、それに基づきホワイトスペースを利用した通信を行います。なお、スマートフォンは、ホワイトスペースデータベースへの問い合わせにはホワイトスペースの電波を利用できませんので、既存のLTEネットワークや内蔵の無線LAN機能を利用します。
今回開発したスマートフォンは、ホワイトスペース対応システムと既存のLTEネットワークとの間を切り替えて利用できますので、ホワイトスペースが利用可能な場合にはホワイトスペースを利用して通信し、それ以外の場合には既存のLTEネットワークを利用することで、既存のLTEネットワークからホワイトスペースに通信トラフィックをオフロード(負荷分散)し、地域全体の通信速度の向上を図ることが可能になります。

図1 今回開発したホワイトスペース対応スマートフォン
図1 今回開発したホワイトスペース対応スマートフォン

図2 試験システムの構成

図2 試験システムの構成

開発したスマートフォンの機能概要

UHF帯無線仕様



用語解説等

ホワイトスペース

ホワイトスペースは、放送等の目的で割当てが行われている周波数帯のうち、その周波数の利用がない場合や本来のシステムに与える影響が十分に小さい場合に、他のシステムが放送や通信の目的で二次的に使用することを対象とした周波数帯を指す。

LTE (Long Term Evolution)

標準化団体である3GPPにおいて策定されているブロードバンド移動通信用の規格。国内でも携帯電話への普及が始まっており、商用サービスでは800MHz帯や2GHz帯をはじめとする周波数帯で運用されている。今後、700MHz帯や900MHz帯での運用も予定されている。



本件に関する 問い合わせ先

ワイヤレスネットワーク研究所 
スマートワイヤレス研究室

原田 博司、石津 健太郎、伊深 和雄、松村 武
Tel: 046-847-5076 
E-mail:

広報

NICT
広報部 報道担当

廣田 幸子
Tel: 042-327-6923 
Fax: 042-327-7587
E-mail: