NICTは、無線設備等から発射される電波の強さ(電力)を測定する高周波電力計の較正業務を、法律に基づいて実施しています。携帯電話や無線LAN、電子マネー等、無線通信システムは、社会経済活動の基盤として、様々な場面で利用されており、使用周波数も、UHF・マイクロ波帯(300 MHz~30 GHz)からミリ波帯(30 GHz~300 GHz)へと高周波化が進んでいます。例えば、テレビ本体とDVDプレーヤーをつなぐワイヤレスTVには60 GHz帯が、自動車の衝突防止レーダーには76 GHz帯の電波が使用されています。産業界からは、大容量伝送の必要性から更に高い周波数帯の電波を使いたいとのニーズがあり、110 GHz以上の高周波電波を測定するための高周波電力計の較正サービスの実現が求められていました。
2014年3月3日
独立行政法人 情報通信研究機構(以下「NICT」、理事長: 坂内 正夫)は、独立行政法人 産業技術総合研究所(以下「産総研」、理事長: 中鉢 良治)と共同で、170 GHzまでの超高周波電力計を較正するシステムを開発しました。平成26年3月25日に、現在110 GHzまで行っている高周波電力計の較正サービスの対象周波数範囲を世界に先駆け、170 GHzまで拡張します。これにより、無線による120 GHz帯の電波を使用する4K/8K非圧縮映像の放送素材伝送システムの実現など、近年利用が増加しているミリ波帯の大容量無線通信の利用促進に貢献します。
背景
今回の成果
今後の展望
現在、4K/8Kテレビ放送の実現に向け、120 GHz帯の電波を使用する4K/8K非圧縮映像の放送素材伝送システムの導入が求められておりますが、本較正サービスの開始により、その早期な実現が期待されます。更に高い周波数帯である300 GHz帯やテラヘルツ波帯の無線通信システム等の研究開発も進められており、NICTでは、今後も、ミリ波帯やテラヘルツ波帯における電力計測技術や電力計較正技術に関する研究開発を進め、これらの周波数帯の利用促進に貢献していきます。
用語 解説
較正とは、測定器の目盛りのずれを、正しい測定器を使って求めることである。その正しい測定器は、更に正しい測定器によって較正されており、最後は、我が国で最も正しい測定器(国家計量標準器)にたどり着く。NICTでは、電力計をはじめ、周波数標準器など、無線機の性能を測定するために必要な測定器類の較正サービスを行い、無線局の免許、検査等に必要な正確な測定を可能にすることで、電波の有効利用に貢献している。
周波数30 GHz~300 GHzの電波は、波長が10 mm~1 mmの長さになることから、ミリ波と呼ばれる。周波数が高くなると、一度に多くの情報を伝えることができることから、4Kテレビ画像をリアルタイムで伝送するような高速・大容量の通信に適している。
今回開発した較正システムは、110 GHz~170 GHzの電波を発生させることができる信号発生器と、導波管を伝わる電波の一部を分離することができる方向性結合器から構成されており、較正によって「校正係数」と呼ばれる補正量が個々の電力計に対して与えられる。「校正係数」は、電力計に表示される値と、電力計のセンサに入射した電力の値(本当に測りたい値)との関係を示すパラメータ(補正値)で、電力計に表示された値を校正係数で割ると、入射電力が決定できる。無線機からの出力(空中線電力)を測定する前に、電力計をあらかじめ較正しておけば、空中線電力を正確に測定できる。
本件に関する 問い合わせ先
電磁波計測研究所
電磁環境研究室
電磁環境研究室
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