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世界で初めてマルチコアファイバネットワークの動的制御に成功

~SDN技術を用いて、使用するコアと波長の組み合わせを柔軟に制御可能に~

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2013年9月26日
ポイント

    • マルチコアファイバと光スイッチで構成される大容量、かつ、自動制御可能な光ネットワークを構築
    • SDN技術を利用し、マルチコアファイバの特性を考慮した複雑な光パスの高速な経路選択を実行可能
    • マルチコアファイバを用いた、新世代の大容量通信ネットワークの実用化に大きく前進

独立行政法人 情報通信研究機構(以下「NICT」、理事長: 坂内 正夫)は、英国ブリストル大学(以下「ブリストル大」)と共同で、Software Defined Networking (SDN)の一つである OpenFlowを利用し、世界で初めてマルチコアファイバネットワークの動的制御に成功しました。
マルチコアファイバは、光ファイバ1本あたりの伝送容量を拡大する新世代技術として研究が進められていますが、交換機能も含めたネットワークの研究はほとんどなされていません。また、マルチコアファイバは、既存の単一コアファイバと異なり、コア数とコア位置ごとに伝送品質が異なる課題があります。今回、マルチコアファイバと光スイッチから構成されるネットワークにおいて、マルチコアファイバの特性を考慮しコアや波長などを動的に制御するOpenFlowで伝送品質と帯域を保証する光パスの動的制御に成功しました。今後ますます普及すると思われるOpenFlowによるネットワーク制御の成功により、マルチコアファイバネットワークの実用化に大きく前進しました。

背景

情報通信の伝送路を支える光ファイバは、物理的な伝送容量の限界を迎えつつあり、この限界を超えるため、1本の光ファイバに複数のコア(光の通り道)を配置したマルチコアファイバの研究が進められています。これまでは、主に大容量や長距離伝送システムの研究が進められ、交換機能も含めたネットワークの研究はほとんどなされていませんでした。SDN技術は、個々のサービスに応じて柔軟に通信制御が可能であることなどから注目されています。SDN技術の一つであるOpenFlowは、電気スイッチネットワークでは実用化されていますが、光スイッチのネットワークでは、シングルコアの光ファイバでの実験のみにとどまっていました。また、マルチコアファイバは、単一コアファイバを複数束ねた場合と違い、コア数やコアの位置によって伝送品質が異なる課題があり、伝送特性を考慮した複雑なネットワーク制御が必要とされていました。

今回の成果
マルチコアファイバネットワーク実験
マルチコアファイバネットワーク実験

今回NICTとブリストル大は、マルチコアファイバと光スイッチから構成されるネットワーク試験環境を構築し、OpenFlowコントローラから動的にネットワークを制御する実験に成功しました。本実験では、NICTがマルチコアファイバとマルチコアファイバの特性を活かし雑音除去する自己ホモダイン方式を開発、ブリストル大はOpenFlowの制御ソフトウェアの開発を担当しました。
今回の実験では、伝送品質と帯域の保証が可能な光パスの制御を行うために、OpenFlowのコントローラから使用するコア、波長、保証帯域(データレート)、変調方式を指定するとともに、マルチコアファイバ用に拡張したOpenFlowプロトコルにより動的に光スイッチ制御を行うことで、光パス上のデータ信号の送受信を確認することができました(補足資料 図1参照)。また、データ信号の復調処理では自己ホモダイン方式を利用することで、信号処理の負担を軽減しています。
各コアで複数波長が利用出来るマルチコアファイバネットワークでは、コアと波長の組合せによる多数の光パスの提供が可能で、例えば帯域保証が要求される超高精細TV会議等の多様なアプリケーションで、複数の光パスを有効かつ柔軟に利用することでサービス価格の引き下げなどが実現できると考えられています。今後ますます普及すると思われる制御システムOpenFlowによる今回の実験成功で、交換機能を含むマルチコアファイバを用いた新世代の大容量通信ネットワークの実用化が加速されるものと期待されます。

今後の展望

今後NICTでは、今回の実験に基づき、光スイッチや伝送技術、制御システムなど、ハードウェア、ソフトウェア両面で要素技術の研究開発を進め、マルチコアファイバネットワークの実用化を目指し取り組んでいきます。
なお、本研究成果については、「欧州光通信国際会議(ECOC2013)」(9月22日(日)~26日(木)、英国・ロンドンにて開催)最優秀論文コンペセッション(通称: ポストデッドラインセッション)に採択され、本日、9月26日(木)(英国夏時間)に発表します。



補足資料

図1 今回実験したマルチコアファイバネットワーク構成及び光パスの例

 

今回の実験は、下記のとおりです。

(1) 光スイッチ3台と19コアファイバ、7コアファイバ、単一コアファイバからなるマルチコアファイバネットワークを構築
(2) OpenFlowから、使用コア、使用波長、保証帯域(データレート)、変調方式を指定し、各スイッチを制御
(3)データ信号1、データ信号2、データ信号3、データ信号4の光パスを設定。
マルチコアファイバを通過するデータ信号1、データ信号2、データ信号3は、複数のコアを使用した多重方式
例) データ信号1
19コアファイバ(MCF-1)の5コアを使い、うち4コアは128Gビット毎秒の信号4本を多重し、512Gビット毎秒を実現。残り1コアは自己ホモダイン方式用の無変調光に使用。復調時には、自己ホモダイン方式用無変調光を利用し、電気データを再生

 

 以上のように、SDN技術の一つであるOpenFlowを利用し、マルチコアファイバの特性を考慮した複雑な光パスの高速経路選択を実現し、マルチコアファイバと光スイッチで構成される大容量、かつ、自動制御可能な光ネットワークの構築に世界で初めて成功しました。



用語 解説

SDN (Software Defined Networking)

ネットワーク機器における通信制御の仕組みを、従来のように機器内に一本化した形で実現するのではなく、機器の外部のソフトウェアにより自由にプログラム可能にする技術の総称。SDNは、個々のサービスに合わせた独自のネットワーク制御の仕組みや、これまでにない新しい通信方式を実現する手法として注目を集めている。

OpenFlow

Open Networking Foundation (ONF)により業界標準化仕様策定が進められているSDN技術の一つで、多くの対応製品がリリースされている。OpenFlowにおける通信制御は、外部コントローラからフローエントリと呼ばれる情報をスイッチに対して送り、スイッチはその情報に基づいてパケットの処理を決定することで実現される。

自己ホモダイン方式

通常の光通信では、信号光の雑音によってデータの判別が困難であり、復調には複雑な信号処理回路を必要とし、大きな電力を要する。自己ホモダイン方式では、データ信号用のコアとは別のコアを使って無変調光を伝送し、受信側でデータ信号光と混合することで、データ信号の雑音を光学的に除去し、復調処理に要する電力を削減することができる。



本件に関する 問い合わせ先

光ネットワーク研究所
フォトニックネットワークシステム研究室

和田 尚也
Tel: 042-327-6371
E-mail:

ネットワークアーキテクチャ研究室

原井 洋明
Tel: 042-327-5418
E-mail:

広報 問い合わせ先

広報部 報道担当

廣田 幸子
Tel:042-327-6923
Fax:042-327-7587
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