従来の単一の光の通路(コア)を有する光ファイバは物理的な伝送容量の限界を迎えつつあり、その限界を超えるため、光ファイバ内に複数のコアを形成した「マルチコアファイバ」等を用いた空間多重光通信技術の研究が積極的に進められています。これまで従来の単一コアファイバの限界と言われている毎秒100テラビットを超える大容量伝送実験が、マルチコアファイバを用いて実施されてきましたが、伝送システムの性能指数である容量距離積は、毎秒0.7エクサビット・キロメータ程度までしか実現できていませんでした。コア数を増大させるとコア間の信号の干渉が大きくなり長距離伝送が伸びず、逆にコア数を抑えると容量の拡大が難しくなるため、伝送容量と伝送距離の両立が課題でした。
2013年9月25日
株式会社KDDI研究所(代表取締役所長:中島 康之、以下KDDI研)と、古河電気工業株式会社(代表取締役社長:柴田 光義、以下古河電工)は、独立行政法人情報通信研究機構(理事長:坂内 正夫、以下NICT)の委託研究※1により、大洋横断光ファイバ伝送において世界最大となる毎秒140テラビット(ハイビジョン映像2時間分を1秒で700本分転送可能な速度。テラは1兆を表す。)の超大容量信号を約7,300km(東京-ブリスベン(オーストラリア)、ニューヨーク-ローマ間の距離に相当)伝送することに成功しました。この実験により、伝送容量と伝送距離の積で示す伝送性能指数(容量距離積)において、世界で初めて1エクサ(Exa :1京の100倍、10の18乗)の壁を突破しました。
背景
今回の成果
このたびKDDI研と古河電工は、コア間の信号の干渉を十分に抑えることで長距離中継伝送を可能とする7コア光ファイバと7コア光増幅器(図1)を共同開発しました。さらに、最新の毎秒100ギガビット波長多重伝送システムで用いられている偏波多重四相位相変調信号(PDM-QPSK信号)の伝送効率をさらに高めるために、新たな信号処理技術を導入し、従来と比較して伝送効率を2倍に向上することに成功しました。これにより、ファイバ当りの伝送容量を毎秒140テラビットへ拡大すると共に、伝送距離を7,300kmまで延伸することが可能となり、世界初となる毎秒1エクサビット・キロメータの容量距離積を達成しました。この成果は、商用化されている毎秒100ギガビット波長多重伝送システム(伝送容量約毎秒9テラビット、伝送距離約1,500km)と比較すると、伝送容量は約15倍、容量距離積では約70倍向上しています。
今後の展望
マルチコア光ファイバ・光増幅器の更なる性能向上と、低消費電力化、小型化により、早期商用化を目指して技術確立を進めていきます。なお、本実験結果は、英国・ロンドンで開催されるヨーロッパ光通信国際会議(ECOC 2013、9月22日(日)~9月26日(木))で、ポストデッドライン論文*2として発表予定です。
補足資料
本件に関する 問い合わせ先
株式会社KDDI研究所 営業企画グループ
Tel: 049-278-7545
E-mail:
委託研究に関する 問い合わせ先
独立行政法人情報通信研究機構 広報部
Tel: 042-327-6923
E-mail: