現在、“秒”の国際的な定義は、セシウム原子の持つ固有の周波数に基づいています。秒及び周波数は、最も高い精度が得られる計量単位であり、その決め方は科学技術に大きな影響を及ぼします。近年、現行の「セシウム原子時計」の正確さを大きく超える「光原子時計」の進展が目覚ましく、秒の定義の変更が検討されています。いくつかの「光原子時計」がその候補となっており、日本発の「ストロンチウム光格子時計」も2006年にその候補となりました。
NICTは、秒の定義を討議する国際諮問委員会(CCTF)に参加する標準機関として、時間・周波数標準の研究開発を通し国際貢献をしています。光原子時計の研究としては「 カルシウム単一イオン光原子時計」及び「ストロンチウム光格子時計」を開発し、比較伝送技術では世界トップクラスの計測精度を実現して、その実績は国際学会での招待講演や昨年の光原子時計計測データのCCTFにおける承認などで、国際的にも認められています。
ただ現状では、秒の定義の変更のためには、まだたくさんの課題があります。例えば、どの原子・どの方式を使った「光原子時計」が一番正確で安定なのか、そして新方式で生成される“1秒”が本当に地球規模でかつてない精度で一致しているかどうか、その検証方法をどうするのか、などについて、十分な議論が必要です。