生体分子は、生体内で複数分子のシステムを形成して働く場合がほとんどであり、システムを形成することで協調しながら効果的に機能を果たしています。細胞内での物質の輸送を司るタンパク質モータも例外ではなく、筋肉や鞭毛の運動、細胞小器官の輸送や細胞骨格ネットワーク構築の例に見られるように、複数の分子が協調して働いています。細胞内での物質輸送の向き、速度、効率を状況に応じて最適な状態に制御することは、細胞の生存にとって大変重要です。これらは輸送システムを構成するタンパク質モータの種類、状態、構成分子の数によってコントロールされます。
これまで、一分子レベルでのタンパク質モータの性質については、詳細に調べられてきました。しかし、複数分子の協調メカニズムについては、理論的な側面からの研究は行われてきましたが、生体分子の数と配置を正確に制御して分子システムを構築し、実験に用いることは困難であったため、研究の進展が妨げられていました。