一般家庭やビルなど建物内の「電気・ガス・水道」のメータを制御することで、エネルギー使用量をできるだけ抑え、人にも自然にも優しい環境作りを実現する「スマートメータ」の研究開発が行われています。NICT では特に、各種メータの自動検針・状況監視・動作制御を、「無線技術」を用いて効果的に行う「スマートメータ」の研究開発を行い、その成果を米国国際標準化規格委員会IEEE802.15.4g 及び802.15.4e に提案し、標準ドラフト仕様として採択されてきました。また、NICT は、同標準化規格委員会において、副議長、セクレタリ補佐、エディタとして、技術提案のみならず、運営面からも同標準化規格委員会に貢献をしてまいりました。
独立行政法人 情報通信研究機構(以下「NICT」、理事長:宮原 秀夫)は、米国Elster 社、Itron 社、Landis+Gyr 社、Silver Spring Networks 社と共同で、IEEEのスマートメータ用無線国際標準規格IEEE 802.15.4gが正式発効したことを発表しました。本標準規格は、NICT が提案したものが基となり、スマートメータやスマートホーム用を含む、スマートグリッド機器間の相互通信を実現する無線ネットワークに関する国際標準規格です。
今回、新たな標準規格が誕生したことにより、スマートグリッド技術の適用分野における共通かつ適切な通信仕様の策定作業が飛躍的に前進したことになります。
2012年4月28日に発効した本標準規格は、スマートメータやスマートホーム用を含む、スマートグリッド機器間の相互通信を規定する重要なものであり、その無線通信の基本形態は、メッシュ形状、スター形状、一対一形状等の、様々なトポロジを構成する何百万台もの無線通信端末間の相互運用を実現するものです。
NICT をはじめ、Elster 社、Itron 社、Landis+Gyr 社、Silver Spring Networks 社は、本標準規格の立ち上げから、既存機器との互換性の確保、長期間の動作保証のための活動に積極的に関わっており、スマートグリッドインフラの提供者、構成機器メーカ、半導体メーカ、電気・ガス会社、公的研究・標準化・監督機関にも大きな影響を及ぼすことになります。
世界中の無線機器製品の多くが既に本標準規格をサポートしていますが、更に急激な普及が予測されています。今後は、この国際企業間連携を更に密にし、本技術の普及促進を図っていく予定です。
補足資料
各社から以下の声明を出しています。
「IEEE がTG4g 無線標準規格を承認したことは、日本のスマートグリッドやスマートメータシステムにとって非常に重要なことである。NICT は、この標準規格化に貢献した主要なメンバーの一つであり、ほかのIEEE802 スマートグリッド標準規格化にも同様な協力をすることを期待する。」
「将来のスマートグリッドインフラには、公開された標準規格による真の相互運用性が肝要。IEEE 802.15.4g を主導した一企業として、Elster は、世界的に開かれた標準規格の普及に努めていく。我々の統一インフラは、IEEE 802.15.4g に即して設計され、利用形態に対し最大限の柔軟性を備えている。同時に、我々は、将来のスマートグリッドの規格に関する検討も続ける。」
「スマートグリッドは、相互接続された機器、通信技術、ソフトウエアを内包する複雑な生態系だといえる。標準規格の存在は、複数の機器メーカによる機器間の共存をもたらし、この状況を明快に改善することができる。世界的に影響力を持つ企業として、我々は、スマートグリッドにもスマートメータにも国際的に使われる標準規格の意義を唱え、アメリカにとどまることのない急速な進化を続けたい。」
「IEEE 802.15.4g の最終版が承認されたことは、スマートグリッド産業における無線通信技術の容易なる相互運用性をもたらす偉大な一歩だ。本最終版は、標準規格に準拠する通信仕様体系の最重要要素の一つである。これにより、Landis+Gyr 社は、世界的なスマートグリッドの主導企業の一つとして、世界中の地理上・制度上の様々な事情に対し、多様な機器及びアプリを提供する先進的な解決策を示し続けるだろう。」
「設立当初から、Silver Spring Networks 社は、利用者を代表して、公開された標準規格に準拠するスマートグリッドインフラの実現のために尽力してきた。すなわち、深刻な必要にかられ適切な無線通信規格が生まれることへの援助をいとわなかった。我々は、今回の標準規格による世界的なスマートユーティリティネットワーク共同体の誕生を祝福すると同時に、更なる発展を大々的に支持してゆく。」
用語解説
米国の電気・電子技術の学会であるIEEE (Institute of Electrical and Electronic Engineers )内で、LAN 等の規格策定を行っている委員会です。このうち、無線パーソナルエリアネットワーク(Wireless Personal Area Networks; WPAN)の標準化は、IEEE 802.15 というワーキンググループ (WG) によって推進されています。本WG には、標準化対象に応じて、以下のとおり複数のタスクグループ(TG) が組織されています。
低消費電力・低伝送速度のサービスを提供するための物理層及びMAC 層の標準化を行ったTG です。策定されたIEEE 802.15.4 標準規格は、868MHz、902MHz、及び2.4GHz 帯を用いて、それぞれ20kbps、40kbps、及び250kbps までの伝送速度を実現する物理層仕様と、PAN と呼ばれる無線機群を形成し、TDMA あるいはCSMAによるアクセス制御を行うMAC 層仕様を規定しています。
SUN 実現のために、既存のIEEE 802.15.4 の物理層仕様の変更を策定しているTG です。IEEE 802.15.4g ドラフト最終版では、このような変更点として、国内スマートメータ用割当ての追加のほか、変調方式の追加、周波数帯の拡張、データサイズの拡張等が収録されています。
IEEE 802.15WG ホームページ (IEEE 802.15.4g へのリンクあり) : http://www.ieee802.org/15/
本件に関する 問い合わせ先
スマートワイヤレス研究室
原田 博司、児島 史秀
Tel: 046-847-5074, 046-847-5084
E-mail:
E-mail:
取材依頼及び広報 問い合わせ先
廣田 幸子
Tel: 042-327-6923
E-mail: