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スマートメーター用 無線国際標準規格IEEE802.15.4g/4eに準拠!
新たな周波数920MHz帯 小型・省電力「無線機」を開発

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2012年3月27日

独立行政法人 情報通信研究機構(以下「NICT」、理事長:宮原 秀夫)は、米国IEEE802委員会にて策定中(2012年3月終了予定)のスマートメーター用無線の標準規格IEEE802.15.4g/4eドラフト最終版に準拠した、小型かつ省電力「無線機」の開発に世界で初めて成功しました。本ドラフト最終版での、物理層仕様の変更(日本で新たにスマートメーター用途として制度化された920MHz帯への対応に係る仕様変更・追加)及びMAC層仕様の変更(乾電池だけで数年動作する省電力動作プロトコル)の双方に対応するものです。今回開発した無線機は、省電力を実現するMAC層の機能を集積化し、さらなる小型化・省電力化を実現する新規開発無線モジュール及び各種メータやセンサとの拡張性を有するインタフェースモジュールを搭載しています。また、この無線機は、国内いずれの地域でも直ちに実運用が可能な技術基準適合証明を920MHz帯において取得しています。

背景

昨今、一般家庭やビルなど建物内の「電気・ガス・水道」のメータを制御することで、エネルギー使用量をできるだけ抑え、人にも自然にも優しい環境作りを実現する「スマートメーター」の研究開発が行われています。NICTでは特に、各種メータの自動検針・状況監視・動作制御を、「無線技術」を用いて効果的に行う「スマートメーター」の研究開発を行い、その成果を国際標準化を進める米国IEEE802.15.4g/4e規格委員会に提案し、標準ドラフト仕様として採択されてきました。

スマートメーター用途の無線周波数帯としては、当初、電子タグシステム等と同様 “ 950MHz帯 ” の割当てが想定されていました。しかし、国際協調、国際競争力の強化の観点から、昨年、総務省は新たに “ 920MHz帯 ” の割当てを公示しました。これに伴い、NICTを中心とする国内ユーザーやメーカーがIEEE802.15.4g/4e委員会に対し、当該周波数帯の明確な利用のための仕様に関する追加・変更提案を出した結果、本委員会は、日本国内におけるスマートメーター用 “ 920MHz帯 ” の割当てを含めたドラフト最終版(2012年3月の標準化完了予定)をまとめるに至りました。また、本年1月には、世界初のスマートメーター用無線の規格認証団体「Wi-SUN」が設立され、商用化が加速されています。しかし、この国際標準規格ドラフトの最終版に準拠する「スマートメーター用 無線機」の開発例はありませんでした。

今回の成果
今回開発した「無線機」の外観
今回開発した「無線機」
の外観

今回NICTは、IEEE 802国際標準規格ドラフトの最終版に準拠した「無線機」を開発しました。この無線機は、これまでNICTがIEEE802.15.4g/4e規格委員会に提案し、採択されてきた無線の通信方式を具備し、新たな国内スマートメーター用無線周波数帯 “ 920MHz帯 ” に対応する機能も具備しています。また、省電力を実現するMAC層の機能を集積化し、さらなる小型化・省電力化を実現する無線モジュールを新規で開発し搭載したため、前回開発したものと比べ、大幅な小型化(約1/3のサイズ)かつ省電力化(約1/10の消費電力)を実現しています。さらに、920MHz帯で技術基準適合証明を取得しています。

本無線機の特長は、電源投入時にマルチホップ通信によるメータ間のデータ収集・配信経路を自動的に構築できること、そして、通信待ち受けやデータ送受信の動作を無線機間でタイミングを合わせ間欠的に行うことができ、連続的な動作と比べて稼働時間割合が1/100以下となる、この間欠的動作によって、さらに省電力化を実現し、電池駆動による数年間の動作を可能にしたという点です。また、将来的に各種メータやセンサとの接続動作させる場合を想定し、拡張が容易なインタフェースを実装しています。

今後の展望

今後もNICTは、IEEE802国際標準規格に基づいた、このスマートメーター無線機を規格認証団体「Wi-SUN」等を通じて国内で促進し、ICTを利用した安全安心社会の実現を目指します。また、開発した無線モジュールの技術移転も併せて行う予定です。


補足資料

想定システムの概要
(a) ガス・電気・水道メータへの適用
(a) ガス・電気・水道メータへの適用

(b) 放射線量計等センサへの適用
(b) 放射線量計等センサへの適用

<図1: スマートメーター用無線の利用イメージ>

<図1>に、スマートメーター用無線の利用イメージを示します。

(a)は、各家庭に設置されたガス・電気・水道メータとして、無線機能を有するスマートメーターが適用され、集合住宅や、戸建の住宅区画に相当するサービスエリア内で検針データが自動的に収集制御局へと収集され、一方で収集制御局から各メータへの制御も行う利用例を示しています。スマートメーターの有するマルチホップ通信機能は、通信距離を確保し、遮蔽等による電波不感地帯を解消することに有効であり、さらにスマートメーターの省電力動作機能は、電池駆動で数年間の継続動作を実現できます。

一方、(b)は、放射線量計や気象センサとしてスマートメーターが適用され、要観測ポイントのすべてからの観測データ収集を継続的に行う例を示しています。この場合にもマルチホップ通信機能は、多地点観測のための多数のセンサの配置を効率的に実現し、また省電力動作機能は、年規模での長期的な観測動作を可能とするものです。

開発したスマートメーター用無線機について
※大きさ比較:一般的なペン
※大きさ比較:一般的なペン
※大きさ比較:一円硬貨
※大きさ比較:一円硬貨

<図2: スマートメーター用無線機の外観と内蔵基板>

<表1: 無線機諸元>
サイズ:  84mm×70mm×20mm (アンテナ部を除く)
周波数帯:  926.3 ~ 927.9 MHz
変調方式:  Filtered-2FSK
伝送速度:  50, 100, 200kbps
物理層ペイロード:  0~2047オクテット (1オクテット=8ビット)
アクセス制御方式:  アクティブ区間における競合型アクセス
ルーティング方式:  ツリー状構造に基づく各無線機から根への単方向ルーティング

<図3: 本無線機のアクセス制御方式>

<図3: 本無線機のアクセス制御方式>

<図2>に、開発したスマートメーター用無線機を示します。

<表1>に、本無線機の諸元を示します。

<図3>に、本無線機のアクセス制御を示します。通信同期のためのビーコン信号は通常休止状態にあり、同期が必要な場合にのみオンデマンドで送信されます。また、周期的にアクティブ区間とスリープ区間を規定し、各無線機によるデータフレームの送受信の開始、及び通信待ち受けはアクティブ区間においてのみ行われ、スリープ区間ではアクティブ区間から継続するデータフレーム送受信を除いてスリープ状態に入るため、消費電力の低減が図られます。さらに本無線機は、図3のように電源投入後、各無線機がツリー状構造の中継経路を自動的に確立し、上記の通信同期を行いながら収集制御局へと効率的にデータを収集することができます。


用語解説

米国の電気・電子技術の学会であるIEEE(Institute of Electrical and Electronic Engineers)内で、LAN等の規格策定を行っている委員会です。このうち、無線パーソナルエリアネットワーク(Wireless Personal Area Networks; WPAN)の標準化は、IEEE 802.15というワーキンググループ(WG)によって推進されています。本WGには、標準化対象に応じて、以下のとおり複数のタスクグループ(TG)が組織されています。

IEEE 802.15.4: 低消費電力・低伝送速度のサービスを提供するための物理層及びMAC層の標準化を行ったTGです。策定されたIEEE 802.15.4標準規格は、868MHz、902MHz、及び2.4GHz帯を用いて、それぞれ20kbps、40kbps、及び250kbpsまでの伝送速度を実現する物理層仕様と、PANと呼ばれる無線機群を形成し、TDMAあるいはCSMAによるアクセス制御を行うMAC層仕様を規定しています。
IEEE 802.15.4g: SUN実現のために、既存のIEEE 802.15.4の物理層仕様の変更を策定しているTGです。IEEE 802.15.4gドラフト最終版では、このような変更点として、国内スマートメーター用割当ての追加のほか、変調方式の追加、周波数帯の拡張、データサイズの拡張等が収録されています。
IEEE 802.15.4e: 上記IEEE 802.15.4g標準規格のような、IEEE 802.15.4の物理層仕様の変更に伴い、必要となるMAC層仕様の変更を策定しているTGです。IEEE 802.15.4eドラフト最終版では、IEEE 802.15.4gに関連するMAC層変更点として、間欠型省電力通信動作の詳細規定等が収録されています。

IEEE 802委員会ホームページ: http://www.ieee802.org/
IEEE 802.15WGホームページ(関連TGへのリンクあり): http://www.ieee802.org/15/

MAC層と同じく、通信機能を階層構造で細分化し表現する概念です。

物理層とは、電波等の媒体上におけるビット信号転送のための機械的及び電気的な機能を指します。例として、ケーブルのコネクタ形状や、無線信号の変調方式を規定する機能です。

物理層と同じく、通信機能を階層構造で細分化し表現する概念です。

MAC(Medium Access Control)層とは、物理層機能の存在を前提とした、通信主体間のアドレスの管理や、媒体の共用のための手法等を規定する機能を指します。例として、通信機器に付加する固有のMACアドレスや、時間差をつけて送信を行う時分割多元接続制御(TDMA: Time Division Multiple Access)等を規定する機能です。

総務省令「電波法施行規則」で定められる小規模な無線局に使用するための特定の無線設備が、電波法令の技術基準に適合していることの証明です。

IEEE802.15.4g規格を利用する無線機等の製品に対して、各メーカー間の相互接続性を認証する団体です。本証明により、ユーザが適合機器を正しく分別し使用することが可能となります。2012年1月24日に設立されました。NICTはWi-SUNのプロモータメンバーです。

前回(2011年) NICTが開発した無線機については、以下のプレスリリースをご参照ください。

プレスリリース:
「省電力で実現するスマートメーター用無線機の実証試験に成功 平常時、緊急時を問わず電気、ガス等各種メータの無線による自動制御、検針、状況監視等が容易」 (2011年3月17日発表)

無線機間の一対一の直接通信に対して、第三の無線機によって通信が1回以上中継される通信形態を指します。中継数に応じて、通信の伝達距離は比例的に増大するほか、逆に直接通信の場合と同等の通信距離を、より低い送信電力で実現することも可能です。また、無線電波に対する障害物を回り込むような中継経路の設定によって、電波の不感地帯を解消することもできます。


本件に関する 問い合わせ先

ワイヤレスネットワーク研究所
スマートワイヤレス研究室

原田 博司、児島 史秀
Tel: 046-847-5074、046-847-5084
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取材依頼及び広報 問い合わせ先

広報部 報道担当

廣田 幸子
Tel: 042-327-6923
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