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光ファイバの伝送容量を通常の19 倍以上に!

~マルチコアファイバと空間結合装置を用いて“ペタビット級”伝送への道を拓く~

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2012年3月8日

独立行政法人 情報通信研究機構(以下「NICT」、理事長: 宮原 秀夫)は、古河電気工業株式会社(以下「古河電工」、代表取締役社長: 吉田 政雄)及び株式会社オプトクエスト(以下「オプトクエスト」、代表取締役: 東 伸)と共同で、光通信において、「19個の通路(コア)を持つ新型の光ファイバ(マルチコアファイバ)」と「7から19のコア可変の空間結合装置」を用いて、世界最高記録となる毎秒305テラビットの信号伝送実験に成功しました。これまで、マルチコアファイバの伝送では、信号の干渉による品質の劣化や複数のコアからの同時信号抽出の難しさから、7コアを超えることが困難でしたが、今回、世界で初めて、19コア同時に信号を伝送することができました。更なるコア数の拡張や1コア当たりの伝送量を増やすことも可能であるため、将来的には、1本の光ファイバでペタビット級の超大容量伝送が期待できます。

NICTでは、新型光ファイバの実用化に向けて、委託研究(平成22年度から「革新的光ファイバ技術の研究開発」、平成23年度から「革新的光通信インフラの研究開発」)による産学官連携の取組も積極的に推進しています。

背景

現在、スマートフォンなどの普及によりインターネットの通信量は飛躍的に増加しているため、インターネットなどの情報通信の伝送路を支える光ファイバは、物理的な伝送容量限界を迎えつつあります。そこで、その限界を超えるため、ファイバ中に複数の光の通路(コア)を持つ「マルチコアファイバ」の研究が進められています。しかし、マルチコアファイバは、それぞれのコアから漏れた信号の干渉(クロストーク)による信号劣化(図1)や、数十ミクロン間隔の複数のコアから同時に信号を取り出す際の難易度の増加(図2)によって、7コアが限界と考えられていました(図3)。

今回の成果
19 コアファイバの断面
19 コアファイバの断面

今回、NICTは、コア数を"19"にまで増設し、世界最高記録となる毎秒305テラビット、伝送距離10kmの伝送実験を行い、すべてのコアにおいて良好な通信品質を確認しました。本実験では、古河電工が製造した「19コアファイバ」とオプトクエストが製造した「既存の光ファイバ19本とマルチコアファイバを接続する19コア空間結合装置」を利用しています(図4)。

数10ミクロン間隔の19本ものコアで伝送品質を保ち、それぞれのコアが独立に既存の光ファイバと結合することは、これまで実現できないと考えられていました。しかし、本実験では、既存の7コア対応結合方式に比べて、接続技術の品質を改善することに成功しました。

本実験の原理に基づいたコア数の拡張や、最先端の光変復調技術等を組み合わせて1コア当たりの伝送量を増やすことが可能であり、1本の光ファイバでペタビット級の超大容量伝送が期待できます

今後の予定

今後、マルチコアファイバ伝送の実用化をにらんで、通信事業者及びメーカーとの取組を積極的に推進していきます。

なお、本実験結果は、米国ロサンゼルスで開催されている光ファイバ通信国際会議(OFC/NFOEC2012、3月4日(日)~8日(木))で、ポストデッドライン論文として採択され、本日発表します。

補足資料

図1 マルチコアファイバでの信号の干渉(クロストーク)のイメージ図
図1 マルチコアファイバでの信号の干渉(クロストーク)のイメージ図

マルチコアファイバでは、コア間が近接しているため、あるコアから漏れた信号がほかのコアに侵入し、干渉することによる伝送品質の劣化が課題となっている。

図2 マルチコアファイバとシングルコアファイバとの接続
図2 マルチコアファイバとシングルコアファイバとの接続

マルチコアファイバの近接するコアからの信号をシングルコアと結合する技術が課題となり、これまでは、7コアを超えるファイバでの伝送は実現できなかった。

図3 近年の光ファイバ通信技術の進展
図3 近年の光ファイバ通信技術の進展

シングルコアファイバでは、毎秒100テラビットを超える伝送には限界があるため、近年、マルチコアファイバの研究が始められている。NICTは、2011年、7コアファイバによる伝送実験を成功させた。

図4 今回用いた結合装置の概要(イメージ図)
図4 今回用いた結合装置の概要(イメージ図)

古河電工製造の「19コアファイバ」とオプトクエスト製造の「19コア空間結合装置」を利用し、今回は、世界最高記録となる19コア×100波長×172Gbps=305Tbps(誤り訂正による7%冗長性を除く。)を実現した。本結合装置では、コアからの信号を階層化する方式によって、コア数の拡張が可能となった。
  本方式原理に基づき、更なるコア数の拡張や、最新の光変復調技術を組み合わせることで、ペタビット級の超大容量伝送が期待できる。



用語 解説

1ペタ(P)ビットは、1000兆ビット、1テラ(T)ビットは、1兆ビット、1ギガ(G)ビットは、10億ビット、1メガ(M)ビットは、100万ビット。
  通常の家庭用光ファイバサービス(FTTH)は、最大でも毎秒1ギガビットほどの速度であり、1 ペタビットはその100万倍に当たります。

1ミクロンは、0.001ミリメートル。

7コアファイバ用に開発された、マルチコアファイバとシングルコアファイバの結合において、テイパー(円錐)加工されたファイバ束を用いる結合方式、あるいはレンズを用いた結合方式。



研究内容に関する 問い合わせ先

光ネットワーク研究所
フォトニックネットワークシステム研究室

淡路 祥成、和田 尚也
Tel: 042-327-6853
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広報 問い合わせ先

広報部 報道担当

廣田 幸子
Tel: 042-327-6923
Fax: 042-327-7587
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