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複数の新世代技術を活用した「多層仮想化ネットワーク」による 国内外複数拠点への同時放送配信・運用実験に成功

~ 未来を先取り!新世代に向けたネットワーク技術で “さっぽろ雪まつり” のライブ映像を同時配信・モニタリング ~

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2012年2月8日

独立行政法人 情報通信研究機構(以下「NICT」、理事長: 宮原 秀夫)は、JGN-X上に新世代に向けたネットワーク技術として研究を進めている、各種技術を多層的に実装した動的オンデマンドネットワークを構築し、映像配信を行いながら、かつリアルタイムに解析・監視する実験に成功しました。

この実験では、現在研究中の各種ネットワーク制御技術を用い、NICTが運用するJGN-Xに加え、本実証実験の協力機関が運用する複数ネットワークを仮想的に統合化した広域かつ多階層のネットワークを作成した上で、ネットワークユーザからの要望を踏まえたネットワーク環境を柔軟に構築(論理配分)可能とする新世代のネットワーク運用技術の実検証を行ったものです。

背景

NICTでは、2011年4月から、新世代ネットワークの実現等に向けた研究開発用テストベッドネットワークとして、JGN-Xを構築、運用しています。

今回の実験では、新世代に向けたネットワークの技術として開発が進んでいるOpenFlowSDTNSA46Tの技術を統合・多階層的に用いて、サービス条件の異なる複数の国内外ネットワークを仮想的に一つにまとめた動的オンデマンドネットワークを形成し、コンテンツ(さっぽろ雪まつり会場からのハイビジョン映像)を同時に国内外の複数拠点へ高品質にて伝送しながら、統合化した画面(GUI)からの経路制御を行うことで、広域かつ多階層ネットワークの運用技術の実検証を行いました。その際、新世代での高度運用を念頭に置き、多層化されたネットワーク内を高精度なネットワーク計測技術を用いて、複数階層にわたり、高精度に測定・分析しました。OpenFlowでは世界初のIPv4マルチキャスト配信を、Trema上で開発したアプリケーションを用いて成功しました。

また、シンガポール及びタイの研究機関と協力し、日本とシンガポール・タイ国間で接続して、ハイビジョン映像を伝送する実験を行いました。同時に、この国際協力の下、ITU-T標準IPTV技術である、LIMEを用いた各国へのVOD及び3Dライブストリーミング配信実験も実施されました。

さらに、さっぽろ雪まつり会場では、Wi-Fiを用いたスマートフォン向け映像配信実験にも成功しました。

なお、これらの実験は、補足資料に記載された実施方針を基に、別紙に記載された機関の協力、協賛を得て実施したものです。

実験のポイント

  • ユーザごとに最適なネットワークを複数機関のネットワークから統合・提供
  • OpenFlow/SDTN等のSDN(Software Defined Network)によるユーザ側での高速経路切替え
  • 高度多重化通信に対応したトラフィック解析
  • NICT、NEC、富士通、NTT、NECTEC等の国内外の研究機関・企業を含む新世代ネットワーク技術にフォーカスした産官学連携

今後の展望

多層化された動的オンデマンドネットワークを用いる技術及び運用手法の確立により、サーバ環境でのクラウドサービスモデルに似た、複数キャリア・国・地域にまたがったオンデマンドネットワーク資源の提供や、通信・放送事業サービスにおける新しいビジネスモデル構築の可能性などをもたらします。


補足資料

実験の概要 (主なもの)

2012年2月6日(月)~12日(日)「第63回さっぽろ雪まつり」の開催期間中、主に下記の実験を行いました。

実験日 実験項目 実験概要
2月6日(月) 放送実験
  • SDTN、OpenFlow、SA46T及び仮想ルータのVPLSによる多層化したネットワークを用い、実際の放送用にHBCからMBSへのライブ配信及びHTBからABCへのライブ配信、並びにタイへの映像素材伝送を実施しました。本実験では関西地区におけるサイバー関西プロジェクトネットワーク、沖縄における北部広域ネットワーク、タイ・シンガポールでの学術ネットワークとNICTによる日本~シンガポール~タイまで接続されたJGN-X網をすべて接続し、一つのネットワークに仮想化した上で、国内外の各放送局に別々の論理ネットワークを提供していました。
  • OpenFlowではTremaによるコントローラを用いてIPv4マルチキャスト配信を実施しました。
  • NTT未来ねっと研究所とエヌ・ティ・ティ アイティ株式会社が開発したHD伝送装置i-Vistoを用いて、DVCproHD圧縮映像ストリームを論理ネットワーク上で伝送する実証実験を実施しました。
*VPLS(Virtual Private LAN Service)
RFCで標準化されたMPLS VPN技術の1つ。広域ネットワークを経由して、柔軟にL2ネットワークを構築可能。JGN-Xの複数拠点に設置されたサービスルータの仮想ルータ上で構築されている。
2月7日(火) 論理ネットワーク実験
  • 前日2月6日(月)の放送実験に加え、多層化された仮想ネットワーク内を監視するため、仮想化技術を用いて複数階層化光パケット分析対応に改良された高精度ネットワーク測定装置PRESTA 10Gを利用しました。
  • NICT(東京・大手町)にて、東京大学、NTT未来ねっと研究所、日本電気と協力して、ネットワーク仮想化基盤網(VNode)を利用し、複数の論理ネットワーク上でそれぞれ独立のネットワーク機能を用いる実証実験(多地点配信の性能評価(PRESTA10Gを利用)、及び仮想網内の経路切替え実験(OpenFlow In A Slice)を行いました。
  • さらに、ITUが世界標準として定めたIPTV規格であるLIMEによる世界各国へのVOD及び3Dライブストリーミング配信実験を実施しました。この際、映像受信・送信には同じくITU-T標準であるH.721準拠のサーバとSTBが用いられました。
  • さっぽろ大通会場(北海道)にて電通国際情報サービスによるスマートフォン向けWi-Fiストリーミング配信実験を同一ネットワークを用いて行いました。

今後、2月下旬まで、沖縄から北海道・大阪・CS局(朝日放送:ABC、GAORA、スカイ・A、北海道放送:HBC、北海道テレビ放送:HTB、毎日放送:MBS)へのプロ野球キャンプ中継のライブストリーミングに使用する予定です。

2012年さっぽろ雪まつり実証実験概要
図1:2012年さっぽろ雪まつり実証実験概要

雪まつり実験技術上の狙い
図2:雪まつり実験技術上の狙い

別紙

用語解説

NICTのネットワーク研究の柱となる新世代ネットワーク技術の実現とその展開のための新たなテストベッド環境として2011年4月から構築、運用を開始したNICTの新世代通信網テストベッド。

米国Stanford大学が中心となり設立した「OpenFlowコンソーシアム」が提唱しているネットワーク技術及び制御プレーンインタフェース仕様の総称。通信の制御方法をソフトウェアで定義するSDN(Software Defined Network)技術の一つとして注目されている。現在、Open Networking Foundation (ONF) (http://www.opennetworking.org/)にて、業界標準化仕様策定に移行しており、IPv6を含めた仕様v1.2が2011年12月に合意された。

SDTN 【Software Defined Transport Network】

NTTネットワークサービスシステム研究所が提案するネットワーク管理・制御方式。通常はネットワーク設備の管理者だけが行うような回線や帯域の割り当てなどの機能を、利用者側で自由に制御可能とする技術。今回の実験では、放送局が利用する全国規模のネットワークをJGN-X上に複数構成し、映像伝送の要件に応じた柔軟な帯域割当ての変更や、利用者側の操作による経路の切替えなどの実証に成功した。

現在標準化作業が進められている、IPv6バックボーンの中にトンネルを張りIPv4通信を可能にする技術で富士通株式会社が開発。

さっぽろ雪まつり 【Sapporo Snow Festival】

1950 年に、地元の中・高校生が6つの雪像を大通公園に設置したことをきっかけに始まった。雪合戦、雪像展、カーニバル等を合わせて開催し、5万人余りの人出 で予想以上の大人気。以後、札幌の冬の行事として市民に定着していくことになる。1974年以後、瀋陽、アルバータ州、ミュンヘン、シドニー、ポートラン ドなど札幌とつながりの深い外国地域の雪像が制作され、国際色あふれるイベントとして発展。現在では毎年200万人以上の人々が訪れ、世界中の多くの人々 に愛されるまつりへと成長を続けている。2012年の開催で63回目となる。

今回は分析にPRESTA 10Gを用いた。PRESTA 10Gは10 Gbps のキャプチャ・ジェネレータ機能を有する10ナノ秒粒度で測定可能なネットワーク測定システム。NTT未来ねっと研究所とエヌ・ティ・ティ アイティ株式会社が開発。

LIME 【Lightweight Interactive Multimedia Environment for IPTV services】

インターネット上でのテレビ配信を行うためのIPTVの世界標準規格で、Lightweight Interactive Multimedia Environment for IPTV servicesの略。マルチメディア記述言語として、ITU (国際電気通信連合)のIPTV-GSIにおいて議論され、ITU-T H.762勧告として標準化された。日本のデジタル放送方式を基本にしながら欧米方式にも対応できるよう拡張されており、IPTVのための汎用的で国際的な共通仕様となっている。



実証実験に関する 問い合わせ先

テストベッド研究開発推進センター
テストベッド研究開発室

高田 智明
Tel: 03-3272-3060
Fax: 03-3272-3062
E-mail:

取材依頼及び広報 問い合わせ先

広報部 報道担当

廣田 幸子
Tel: 042-327-6923 
Fax: 042-327-7587
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