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最先端「光パケット・光パス統合ネットワーク」の実用化に向けて大きく前進

~ 最新の光交換技術を装置化し、世界初の試験環境を構築 ~

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2011年6月14日

独立行政法人情報通信研究機構(以下「NICT」、理事長:宮原 秀夫)は、世界最高レベルの光交換技術を結集し、実用性の高い「光パケット・光パス統合ネットワーク」の試験環境を世界で初めて構築しました。

今回開発に成功した「光統合ノード装置」は、実際のネットワーク環境でも非常に安定して動作し、操作しやすく、光装置の専門家でなくても新しい光ネットワークの実証試験を容易に行うことができます。

本試験環境を活用することにより、通信回線の無駄のない利用と品質確保を両立できる「光パケット・光パス統合ネットワーク」の実用化に向け、大きく前進しました。

背景

NICTでは、2008年よりユーザの利用シーンに合わせて、高速で安価なサービスと、遅延やデータ損失のない高品質なサービスを、柔軟に選択できるように「光パケット・光パス統合ネットワーク技術」(補足資料PDF-図1)の先端的な研究を進めており、昨年は光パケット・光パス統合ノードプロトタイプによる実証実験に成功しました。

しかし、個々の実験機材を組み上げただけの従来の光統合ノードプロトタイプ(実験機器)では、特に光パケットネットワークにおいて、パケットが流れる間隔の急激な変化や気温変動等の影響を受けて、機器の動作が不安定になってしまい、実際のネットワーク環境下での実証試験が困難なものでした。その不安定なノード実験機器を利用して実験するには、光装置に関する高度な専門知識が必要であり、ネットワークのデータ転送制御設定だけでも専門家の操作が必要でした。そこで、NICTは「光パケット・光パス統合ネットワーク」実現のために、実際の環境での実証試験を行うことができる装置の開発を進めてまいりました。

今回の成果

今回、NICTの最新の光パケット交換技術の研究成果を結集し、安定性と操作性に優れた新たな「光パケット・光パス統合ノード装置」の開発に成功しました(補足資料PDF-図2)。本装置は、デバイスの安定化と集積化により、従来比半分以下の筐体サイズを実現しました。さらに、従来の実験機器では安定動作しなかった実際の環境においても、光パケットの受信品質が、常時、ITU-T勧告の厳しい基準を十分に満たし、装置の調整もほとんど必要なくなりました。安定して実験を行うために必要な機器調整の延べ時間を当機構比で90%程度削減できました。そのため、光装置の詳しい知識を持たない人でも操作が可能で、ネットワーク内の装置数が増えるなど試験構成に変更があった場合においても、ネットワークの運用者が制御設定を容易に操作できるようになりました。

なお、本試験環境は平成21年度総務省所管補正予算「光交換基盤技術の実証基盤施設の整備」の一環として構築したものです(補足資料PDF-図3)。

今後の展望

今後は、本光統合ノード装置の機能をさらに強化するべく、光バッファ機能の導入、データ転送制御装置の高機能化や自動化等の研究開発を進め、より多くのユーザや管理者が容易に利用できる、信頼性の高い「光パケット・光パス統合ネットワーク」の実用化を目指して取り組んでいきます。さらに、NICTのテストベッドJGN-Xのインフラとして利用するとともに、新世代ネットワークを進化させてまいります。

なお、本成果は2011年6月8日(水)~6月10日(金)に幕張メッセで開催されたInterop Tokyo 2011にて世界初のデモ展示を行いました。

補足資料
図1 NICTが提唱する光パケット・光パス統合ネットワークの概要
図1 NICTが提唱する光パケット・光パス統合ネットワークの概要

データ交換方式に依存しないで、一つのネットワークの中で柔軟な転送を行います。


図2 光パケット・光パス統合ネットワーク用ノード装置
図2 光パケット・光パス統合ネットワーク用ノード装置
(左:従来のノード実験機器 右:今回開発したノード装置)

従来のノード実験機器は、4ラック分以上のスペースが必要。
   今回のノード装置は、デバイスの安定化と集積化により、従来比半分以下(約2ラック分)の筐体に納まる。

図3 今回開発したノード装置および試験環境の概略図
図3 今回開発したノード装置および試験環境の概略図

主にリングネットワークを対象としたノード装置を開発。基本機能の他に、下記の機能を有します。

- リングネットワークから受信したデータを分岐する光分岐(Drop)装置
- ユーザからのデータをリングネットワークに送るための光挿入(Add)装置
- リングネットワーク上を流れるデータを、Dropせずに、そのままネットワーク上に転送
 
  今回開発した光パケット・光パス統合ノードを2台用い、試験環境を構築。ノード間を50kmのファイバで接続したリングネットワークにおいて、100Gbps光パケットによる高精細映像転送や、7波長光パス(1波長あたり10Gbps)による高速ファイル転送及び高精細映像転送などを、安定した性能で実現できることを実証。

  Interop Tokyo 2011にて、世界初の下記動態展示デモを行いました。
- 光パス交換で、高精細・無遅延のビデオ会議等7つのデータを同時に転送。光パケット交換で、現在のハイビジョン映像の<約4倍の解像度である4K映像を非圧縮で転送。従来は難しかった光パケット交換における4K非圧縮映像配信に成功。
- 光パケット交換では、4K非圧縮映像データと150ユーザ(1ユーザあたり50Mbps)のデータ転送を同時に実行。パケット損失により映像品質は若干劣化するが、映像としては情報がきちんと伝わるレベルで見ることが可能。(光パケット交換では、非常に多くのユーザが資源をシェアしつつ、同時に情報通信が可能。)
- 4K非圧縮映像配信に関して、状況に応じて光パケット交換と光パス交換の瞬時切替えを実施。映像品質の劣化が許せない場合は、数秒の速さで光パス側に切り替えて、品質劣化のない映像配信が可能。

本件に関する 問い合わせ先

光ネットワーク研究所

フォトニックネットワーク研究室
和田 尚也
Tel:042-327-6371
E-mail:

ネットワークアーキテクチャ研究室
古川 英昭
Tel:042-327-5694
E-mail:

取材依頼及び広報 問い合わせ先

広報部

報道担当
廣田 幸子
TEL:042-327-6923
Fax:042-327-7587
E-mail: