NICTでは、携帯電話や無線LAN等の異種の無線システムを統合的に取り扱い、電波の有効利用や効率的な情報通信ネットワークを実現するコグニティブ無線技術の研究を進めています。本技術を活用すれば、短時間でインターネット環境を構築すると共に携帯電話の効率的利用等が実現できるため、NICTが開発したコグニティブ無線ルータを被災地に設置しました。今回、岩手県遠野市や近隣被災自治体に対して情報通信機器等の提供や様々な支援を行っているBHNの被災地での活動報告及び岩手県遠野市からの支援要請を受け、NICTでは当該自治体での支援を行うこととしました。
大槌町においては、災害対策本部ですら有線ネットワークの十分な復旧が行われておらず、同町内避難所においては、これまで電話回線は提供されていたものの、被災者が利用できるインターネット接続環境は提供されていませんでした。今回、コグニティブ無線ルータを使ってインターネット接続環境を提供することにより、多くの被災者の方々がインターネット端末を用い、津波被害状況を伝えるインターネット上のニュース映像や安否情報、救援物資等の情報を検索・閲覧したり、手持ちの小型携帯端末を無線LANでインターネットに接続し、情報を取得する姿も見られました。同避難所では、小学校の建物やグラウンドの広い範囲で無線LANを使ってインターネット接続を利用できることが確認されました。
コグニティブ無線ルータは可搬性と耐障害性にも優れており、今回も設置開始から5分程度で無線LANによるインターネット環境の構築ができました。このコグニティブ無線ルータは、ユーザへのインターネット接続サービスのみならずインターネット環境を用いた遠隔医療支援等にも応用が可能であり、さらに要請に応じて、被災地への支援を行う体制を取って参ります。
被災された皆様には心からお見舞い申し上げますと共に、本システムが少しでも役立ち、一日も早く復興されますことをお祈り申し上げます。
コグニティブ無線ルータは、総務省から委託された「異種無線システム協調制御による周波数有効利用技術の研究開発」と「異種無線システム対応端末技術の研究開発」の成果に基づいたものです。 また、同機器設置にあたり多大なるご支援を賜った岩手県立大学 総合政策学部 吉本繁壽教授に感謝いたします。