NICTでは、平成22年度に世界最高の分解能30cmを持ち、航空機から天候に関係なく地上を観測できるレーダシステム(Pi-SAR2)を開発しました。Pi-SAR2は、広い観測幅(5km-10km)を持ち、インターフェロメトリやポラリメトリといった、先進機能も装備しています。また、Pi-SAR2では、航空機上の処理システムを開発し、2km四方の領域の画像を約10分で画像に再生することができます。NICTは、このレーダ開発に先立って分解能1.5mの航空機搭載合成開口レーダ(Pi-SAR) を平成10年に開発しており、高分解能の合成開口技術の先導的研究を行うとともに、平成12年の有珠山及び三宅島の火山噴火災害や平成16年に発生した新潟県中越地震に際しては、広域にわたる被災地の状況を観測し、現地の災害対策や復興の一助となりました。
独立行政法人情報通信研究機構(以下「NICT」という。理事長:宮原 秀夫)電波計測グループは、航空機から30cmの細かさで地上を航空写真のように観測できる合成開口レーダシステム(Pi-SAR2)を開発してきました。このレーダでは、雲や噴煙を透過する周波数の電波を使用しているため、火山の噴煙や天候によらず、新燃岳の地表の状態を把握することができます。また、NICTで開発したPi-SAR2の分解能は世界最高精度です。
この装置を用い、平成23年2月22日(火)に噴火の続く新燃岳の火口を中心とした5キロメートル四方以上の広いレーダ画像を取得しました。得られた画像は気象庁・火山噴火予知連絡会等関係機関に速報として報告したほか、ウェブサイトを通じて広く公開します。
NICTは、今後ともPi-SAR2による観測を火山活動に応じて継続する予定であり、火口付近の変化や火山灰の堆積状態の推定等を行う予定です。
このレーダデータは、幅7kmの広い観測をしており、また同時にインターフェロメトリ機能により2m以下の精度で地表の高さを計測できます。今後は持ち帰ったデータの詳細な解析を行い、火山周辺の地表面の高さ地図を作成します。同様に平成12年にPi-SARにより取得した同じ場所のデータ(図4)に対して同じ処理を行い、その比較から火山灰の堆積状況を推定します。これにより、土石流や泥流といった災害の予測等に役立たせるべく、関係機関に提供する予定です。また、火山の活動状況により継続的に観測を実施する予定です。
用語解説
離れて配置された2つのアンテナを用いて、人間が双方の目で立体的に見ることができるのと類似の方法で3次元的像を得る。これを用いて地面の標高を計測することができる。電波の位相情報を使うため、非常に高精度で、航空写真に比べ全天候にわたって観測できるのが特長。Pi-SAR2は2m以下の精度で高さを計測することが可能。火山灰堆積の厚さや広がりを推定する事が可能。
電波は、電場と磁場が共に振動しながら伝搬する波であるが、電場の振動面を偏波と呼ぶ。任意の偏波に対し散乱する偏波の性質は、物体の形状や向きにより異 なる。この性質を用い、偏波の組み合わせで地表面を観測し、それぞれの場合の散乱信号を精密に測定し、これらを利用して対象を詳細に識別する機能。Pi-SAR2では、偏波面が垂直な電波と水平な電波の2つを利用する。
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