NICTユニバーサルメディア研究センター(京都)では、高い臨場感を伴うコミニュケーションシステムの確立に向けて、特殊な眼鏡を必要としない立体映像表示技術を開発しています。これまで、NICTの裸眼立体表示方式の基本原理(図1) を検証するために、小型(70インチクラス)の立体ディスプレイを試作してきました。今後、実用化を目指した臨場感あるシステムの実現のためには、等身大の人物や実寸大の車などの大きな立体物を、多人数で共有できる200インチサイズの大画面化の技術が必要でした。しかし、画面サイズを拡大すると、立体像に縞状ノイズが生じる、立体像がぼやける、観察者の動きに対し不自然な見え方の立体像になるなど、観察する上で無視できないほどの画質低下が生じるという課題がありました。
独立行政法人情報通信研究機構(以下「NICT」という。理事長:宮原秀夫)けいはんな研究所ユニバーサルメディア研究センターは、200インチサイズの裸眼立体表示技術の開発に成功しました。本技術では、特殊な眼鏡なしに観察者の動きに応じた自然な立体像を表示できます。今回、本技術をもとに世界最大の 200インチ裸眼立体ディスプレイを試作し、実物大の車などの大型立体映像をハイビジョン画質で表示できるようにしました。
なお、本プロジェクタユニット及びスクリーンは、2009年度に総務省から受託した「眼鏡の要らない3次元映像技術の研究開発」の一環として、JVC・ケンウッド・ホールディングス(株)と共同で開発しました。
今回、NICTの立体表示方式において、大画面化に伴う立体像の画質低下の原因を数値解析により明らかにしました。その結果をもとに画質改善の方法を考案し、システム設計と試作(図2)を行うことで、本方式の課題を解決し、大画面裸眼立体表示技術を確立しました。
画質低下の大きな要因の一つは、視差画像間に生じる縞状ノイズでした。このノイズの量は、おもに視差画像間の輝度や色の違いに大きく影響されることを明らかにしました。解決策として、プロジェクタ内部に輝度分布や色バランスを精度よく調整する機能を実装することで、ノイズの低減を実現しました。
本立体表示方式では、表示スクリーンに特殊な拡散フィルムと集光レンズを用います(図1)。表示スクリーンの光制御の精度が、立体像の解像度や運動視差のなめらかさに大きく影響します。最適な光制御のために、拡散フィルムの評価・選定と集光レンズの設計を行いました。その結果、50以上の多くの視差画像を高密度に表示できるようになり、なめらかな運動視差をもつハイビジョン画質の大画面立体像表示(図3)に成功し、本立体表示技術を確立できました。
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