本文へ
文字サイズ:小文字サイズ:標準文字サイズ:大
  • English Top

世界初「200インチの自然な裸眼立体表示技術」の開発に成功

特殊な眼鏡が不要な迫力ある大画面ハイビジョン立体映像を実現

  • 印刷
2011年1月25日

独立行政法人情報通信研究機構(以下「NICT」という。理事長:宮原秀夫)けいはんな研究所ユニバーサルメディア研究センターは、200インチサイズの裸眼立体表示技術の開発に成功しました。本技術では、特殊な眼鏡なしに観察者の動きに応じた自然な立体像を表示できます。今回、本技術をもとに世界最大の 200インチ裸眼立体ディスプレイを試作し、実物大の車などの大型立体映像をハイビジョン画質で表示できるようにしました。

なお、本プロジェクタユニット及びスクリーンは、2009年度に総務省から受託した「眼鏡の要らない3次元映像技術の研究開発」の一環として、JVC・ケンウッド・ホールディングス(株)と共同で開発しました。

背景

NICTユニバーサルメディア研究センター(京都)では、高い臨場感を伴うコミニュケーションシステムの確立に向けて、特殊な眼鏡を必要としない立体映像表示技術を開発しています。これまで、NICTの裸眼立体表示方式の基本原理(図1) を検証するために、小型(70インチクラス)の立体ディスプレイを試作してきました。今後、実用化を目指した臨場感あるシステムの実現のためには、等身大の人物や実寸大の車などの大きな立体物を、多人数で共有できる200インチサイズの大画面化の技術が必要でした。しかし、画面サイズを拡大すると、立体像に縞状ノイズが生じる、立体像がぼやける、観察者の動きに対し不自然な見え方の立体像になるなど、観察する上で無視できないほどの画質低下が生じるという課題がありました。

今回の成果

今回、NICTの立体表示方式において、大画面化に伴う立体像の画質低下の原因を数値解析により明らかにしました。その結果をもとに画質改善の方法を考案し、システム設計と試作(図2)を行うことで、本方式の課題を解決し、大画面裸眼立体表示技術を確立しました。

画質低下の大きな要因の一つは、視差画像間に生じる縞状ノイズでした。このノイズの量は、おもに視差画像間の輝度や色の違いに大きく影響されることを明らかにしました。解決策として、プロジェクタ内部に輝度分布や色バランスを精度よく調整する機能を実装することで、ノイズの低減を実現しました。

本立体表示方式では、表示スクリーンに特殊な拡散フィルムと集光レンズを用います(図1)。表示スクリーンの光制御の精度が、立体像の解像度や運動視差のなめらかさに大きく影響します。最適な光制御のために、拡散フィルムの評価・選定と集光レンズの設計を行いました。その結果、50以上の多くの視差画像を高密度に表示できるようになり、なめらかな運動視差をもつハイビジョン画質の大画面立体像表示(図3)に成功し、本立体表示技術を確立できました。

今後の展望

今後、有効な視差画像数を約200に増加することで、立体像の観察領域の幅(視域図1)を拡大し、より多くの人が観賞できるようにします。また、現在、コンピュータグラフィクスのみ表示してますが、人物や風景といった実写映像も撮影し、表示できる技術の開発にも取り組みます。

本技術は、産業用途としては車体などの工業デザイン、パブリックビューイング等の電子広告やショールームでの活用が期待されます。本関連技術について、米国サンフランシスコで開催されるIS&T/SPIE Electronic Imaging 2011(2011年1月23日(日)~27日(木))にて学会発表します。

補足説明図

図1 立体表示原理 (上から見た図)
図1:立体表示原理 (上から見た図)
図2 開発した200インチ裸眼立体ディスプレイの構成図
図2 開発した200インチ裸眼立体ディスプレイの構成図
(a)コンピューターグラフィックスの表示画像・インチ裸眼立体像の表示例
図3 200インチ裸眼立体像の表示例
図3 200インチ裸眼立体像の表示例

用語解説

縞状ノイズ

立体像の視差画像間に生じる、輝度や色が不均一な縦状のすじ。

観察者の動きに対し不自然な見え方の立体像

一般的な裸眼立体表示では、視差画像数が少ない(数視差~10視差以下)ため、観察者の動きに対して立体像の変化が、なめらかではなく不連続に見えることが課題となっています。

視差画像

立体像をわずかに異なる視点位置から見たときの画像。

特殊な拡散フィルム

垂直方向には広く拡散し、水平方向にはわずかに拡散するフィルム。

運動視差

観察者が動いたときの、立体像の見え方の変化(図3)。

視域

観察者の位置において、立体像を見ることができる横方向の幅(図1)。

<本件に関する 問い合わせ先>
ユニバーサルメディア研究センター超臨場感システムグループ
安藤 広志、河北 真宏、岩澤 昭一郎

TEL:0774-95-2641
FAX:0774-95-2647
E-mail:

<取材依頼及び広報 問い合わせ先>
独立行政法人 情報通信研究機構総合企画部 広報室
報道担当 廣田 幸子

Tel:042-327-6923
FAX:042-327-7587
E-mail: