現在、3Dの映画・テレビなど3D映像技術の開発・普及が進んでいます。しかしながら、3D映像が生体に与える好影響・悪影響に関しては十分には明らかにされていません。NICTけいはんな研究所ユニバーサルメディア研究センターでは、よりリアルで自然な超臨場感コミュニケーションを実現するために、3D 映像が脳に与える臨場感や安全性の客観的・定量的な評価手法の開発を進めています。
独立行政法人情報通信研究機構(以下「NICT」という。理事長:宮原 秀夫)けいはんな研究所ユニバーサルメディア研究センターは、現在、技術開発が進む3D映像が脳に与える臨場感・安全性を定量的に評価する手法を確立するために、今回、広視野(水平視野角100度)の3D映像を高磁場のMRI装置内の被験者に提示できる装置を開発し、広視野3D映像が脳に与える効果を計測できることを確認しました。
今後、この装置を用いて3D映像の心理的効果と脳活動の関係を詳細に分析していくことで、3D映像が脳に与える好影響や悪影響のより客観的・定量的な評価が可能になると考えます。なお、本装置は、平成21年度総務省委託研究「眼鏡の要らない3次元映像技術の研究開発」により開発しました。
大画面の3D映像が生体に与える好影響(立体感・没入感・質感等)・悪影響(違和感・疲労感・映像酔い等)を脳活動で評価する手法を確立するためには、まず広視野の3D映像を脳活動計測装置内に提示可能にし、信頼性の高い脳活動データを取得できることを検証する必要があります。そのため、今回、広視野の 3D映像を観察した時の脳活動をfMRI(機能的磁気共鳴撮像法)により計測できる3D映像評価装置を開発しました。(補足資料 図1)
従来のfMRI脳活動計測用の映像提示装置は、被験者の頭部周囲の空間が大変狭いため、水平視野角20度程度の映像しか提示できませんでしたが、今回、特殊な超広角接眼レンズを開発して、(没入感が強く得られる)水平視野角100度に至る広視野の3D映像(両眼視差映像)の提示が可能になりました。
また、MRIは高磁場(3テスラ※)を発生するため、液晶ディスプレイ等の磁性体をMRI装置内に設置することは困難です。そこで遠方の磁気シールドボックス内のプロジェクタから右眼・左眼用の映像を眼前のスクリーンに投影し、被験者が、脳撮像画像にノイズを与えない超広角接眼レンズを通して広視野3D映像を観察することができるようにしました。
※ テスラは磁場の強さを表す単位で、3テスラは地磁気の約7万倍になる。
なお、本装置は高解像度(フルハイビジョン画質)の3D映像を提示することができ、脳活動と共に広視野3D映像を観察時の両眼の眼球運動(視線方向・瞳孔径・輻輳)を測定することも可能です。今回、この装置を用いた脳活動計測実験を実施したところ、広視野3D映像が脳に与える効果を確実に捉えることができました。(補足資料 図2)
今後、この評価装置を活用して、3D映像の心理的効果と脳活動の関係を詳細に分析し、3D映像が脳に与える好影響・悪影響をより客観的・定量的に評価する手法の確立を目指していきます。
本評価装置の一部や脳活動計測結果は、2010年11月4日(木)~6日(土)にけいはんな学研都市(京都府)において開催される「けいはんな情報通信研究フェア 2010」にて展示・発表いたします。
また、個別にご取材を希望される方は、広報室までご連絡下さい。
安藤広志、和田充史、坂野雄一
Tel:0774-95-2641
Fax:0774-95-2647
E-mail:
報道担当 廣田 幸子
Tel:042-327-6923
Fax:042-327-7587
E-mail: