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世界初、電子ホログラフィで、視域角15度、対角4cmのカラー動画表示を実現

従来の3倍以上の視域角、約2倍の表示面積で見やすい動画ホログラフィ表示

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2010年9月28日

独立行政法人情報通信研究機構(以下「NICT」、理事長:宮原 秀夫)は、究極の立体映像技術とされる電子ホログラフィ方式で、視域角15度、表示サイズ対角4 cmでカラー動画表示できるシステムを、世界で初めて開発しました。本開発では、3300万画素の超高精細表示デバイスに独自の視域拡大技術を適用することにより、従来の装置と比較して、視域角で3倍以上、表示面積で約2倍のより見やすい動画ホログラフィを実現することができました。

なお、本研究開発の一部は平成21年度総務省委託研究開発「眼鏡の要らない3次元映像技術の研究開発(次世代・究極3次元映像技術)」において行われました。

背景

NICTでは、時間と空間を超えて同じ環境を共有しているような感覚が得られる超臨場感コミュニケーション技術の研究開発を進めています。その要素技術の一つとして電子ホログラフィによる立体表示を研究しています。

ホログラフィは、自然でリアルな立体像表示の技術であり、3Dテレビで課題である眼鏡使用や視覚疲労の問題もなく、究極の立体映像技術として期待されています。静止画のホログラフィについては一部で実用化されていますが、映像メディアとしては動画ホログラフィすなわち、ホログラフィの電子化が必要とされています。

しかし電子化に際し、困難な技術課題が多数存在し、動画像を表示できる電子ホログラフィの研究は世界的にもあまり進んでいません。中でも視域角が狭い、表示できる立体像が小さいという点が、大きな課題とされていました。

今回の成果

今回NICTが開発した表示システムでは、3300万画素、対角4 cmの超高精細液晶表示素子を3枚用いています。この表示素子1枚では、角度にして5度強の方向の光しか再生できません。そこで、右向きの光、正面向きの光、左向きの光を再生するために素子3枚をそれぞれ用いて、素子1枚の場合の約3倍の方向の光を再生することを可能とし、水平方向に15度という広い視域角を実現しました。カラー表示は、時分割カラー方式で実現しています。

また、3300万画素超高精細表示素子を用いたことで、ホログラフィ像を表示できる面積を従来の約2倍に拡大しました。これらにより、視域角が広くかつ表示面積も大きい、従来に比べてより見やすいカラー動画ホログラフィ表示を実現できました。

今後の展望

今回の開発により、将来の立体テレビや、それを利用した超臨場感コミュニケーションの実現に向けて技術を前進させることができました。まだ表示できる立体像が小さく、装置が大きいという課題がありますが、今後も、眼鏡なしでかつ疲労もなく、高画質で、忠実な奥行き再生が可能な究極の立体映像表示の実現に向けて取り組んでまいります。

なお、この成果を10月5日(火)~9日(土)に幕張メッセで開催されるCEATEC JAPAN 2010において展示します。

用語解説

電子ホログラフィ

ホログラフィは、写真乾板のような平面の記録媒体に光の情報を記録し、また、記録した光を自由に再発生することができる技術です。

人間は日常、物体から反射してくる光を見ています。このため、それと同じ光をホログラフィで再生することにより、実際には存在しない物体があたかもそこにあるかのように見えます。これは、人間の目にとって、普段、物を見ているときと同じ状態であるため、ホログラフィは、視覚機能に負担をかけない理想的な立体表示法とされています。

これまで、写真や印刷の技術を用いて光の情報を記録することで、静止画の再現が主に行われてきました。これらに対し、電子ホログラフィは、動画の再現を目的として、電子的な手段でホログラフィを実現しようとするものです。

視域角

立体像を観視できる角度。今回、水平方向に従来の3倍以上の15度を達成しました。

時分割カラー方式

ある瞬間には3枚ともに赤色用ホログラムを表示し、次の瞬間には3枚ともに緑色用ホログラム、さらに次の瞬間には3枚ともに青色用ホログラムを表示し、これらを順次繰り返すことによりカラー表示を行う方式です。通常のカラー表示では、表示素子3枚に赤色用ホログラムと緑色用ホログラム、青色用ホログラムをそれぞれ同時に表示することで、カラーの映像を1秒間に60回書き換えて動画像を表示します。今回の時分割カラー表示では、毎秒書き換え速度(フレーム周波数)は20回(20 Hz)になります。

図1 開発した電子ホログラフィ表示システムの構成
図1 開発した電子ホログラフィ表示システムの構成

図2 システム全景
図2 システム全景
図3 ホログラフィ再生像の構成例(地球を前左側、月を奥右側に配置)

図3 ホログラフィ再生像の構成例
(地球を前左側、月を奥右側に配置)
左側7.5度から観察した再生像
左側7.5度から観察した再生像
正面から観察した再生像
正面から観察した再生像
右側7.5度から観察した再生像
右側7.5度から観察した再生像

図4 ホログラフィ再生像の例

地球と月の奥行きが正しく再現されているため、観察する方向により地球と月の間隔が変化していることが分かる。

<本件に関する 問い合わせ先>
超臨場感基盤グループ栗田 泰市郎、山本 健詞

Tel:042—327-7576、7258
E-mail:

<広報 問い合わせ先>
総合企画部広報室
報道担当 廣田 幸子

Tel:042-327-6923
Fax:042-327-7587
E-mail: