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NICT・電気通信大・玉川大の合同チーム、ロボカップ世界大会で2度目の優勝

日常の生活環境で音声・画像・動作を学習するロボットを実演

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2010年7月8日

独立行政法人情報通信研究機構(以下「NICT」という。理事長:宮原 秀夫)は、NICTで開発した音声対話技術の機能実証として、平成22年6月19日(土)から6月25日(金)までシンガポールで開催された「ロボカップ 2010世界大会」に電気通信大学(学長:梶谷 誠)・玉川大学(学長:小原 芳明)と合同チームを組んで参加し、家庭用ロボット部門である@ホームリーグにおいて優勝を果たしました。

背景

NICTでは、音声・言語処理を統合的に研究開発する「MASTARプロジェクト」を推進しています。 この度、これまでMASTARプロジェクトで開発した、音声対話技術及び動作学習技術を、電気通信大学・玉川大学と家庭用ロボットの形で統合し、シンガポールで開催されたロボカップ2010世界大会の家庭用ロボット部門である@ホームリーグに参加、優勝いたしました(参加24チーム中1位)。

競技フィールドは2LDK程度のモデルルームで、家具や食器等を配置された実際の生活環境に近い複雑な環境が用意されました。この環境内で、ロボットが、日用品の探索、棚からユーザーに言われたものを取ってくる、人を追従する等、日常生活に役立つ機能を制限時間内にどれだけ達成できるかを競いました。ロボットの評価は9個の規定タスクと、最終自由演技の合計スコアで行われます。(補足資料参照)

今回の成果

  1. 今回、新たに開発した音声認識辞書の動的切り替え機能をロボットに搭載しました。この機能により、人や物体の名前をその場で学習して、音声認識を行うことが可能になりました。さらに、NICTが開発してきた雑音抑圧技術を組み合わせることで、規定タスクで高得点を挙げることができました。なお、ロボットは日本語と英語での音声対話が可能です。
     
  2. NICT・電気通信大学が共同開発したカテゴリ学習機能をロボットに搭載しました。カテゴリ学習機能により、「ペットボトル」や「カップ」を数個見せるだけで、ロボットがそれらのカテゴリを学習します。これにより、学習した物体と色が異なる未知物体であっても認識が可能になりました。
     
  3. その他の主な機能として、(1)「肩たたき」「捨てる」等の動作を学習する模倣学習機能、(2)「部屋へ移動」「コップをつかむ」等、基本機能の組み合わせによる新たな機能の自動作成、(3)未知の人の顔・名前を学習し、注文を聞いてドリンクを届ける、(4)玉川大のロボット eR@ser(イレイサー)が注文を聞き、別の場所で電気通信大のロボットDiGORO(ダイゴロウ)が綿菓子を準備する、などの機能を搭載しています。

今後の展望

NICTでは、人と機械が自然にコミュニケーションするために必要な、言語・非言語処理技術の研究開発を推進し、より実用的な知識の学習機能の開発や、日常生活環境で人を支援するロボットのコミュニケーション機能の開発に取り組んでいきます。

1. 最終順位

順位(昨年) チーム(組織) 規定タスクスコア
(客観評価)
最終スコア
(規定+主観評価スコアを正規化)
1 (2) eR@sers
(NICT/電気通信大/玉川大)
6669 263
2 (4) NimbRo@Home
(ドイツ)
5496 240
3 (1) b-it-bots
(ドイツ)
4617 219

2. 今回のロボットの各グループの担当部分

NICTは、音声対話機能と動作学習機能を担当しました

各グループの担当部分

3. 会場の様子

電気通信大のロボットDiGORO(ダイゴロウ)
電気通信大のロボットDiGORO(ダイゴロウ)
トイザらスでのショッピングタスク
トイザらスでのショッピングタスク
eR@sersのメンバー
eR@sersのメンバー

4. ロボカップ@ホームの規定タスク

タスク名 概 要
Robot Inspection
フィールド内を移動しながらロボット自身が基本機能を紹介
Follow Me
未知ユーザに対して1分以内にキャリブレーションを行い,
メッセ内で追従
Go Get It
フィールド内にある4つのオブジェクトを探索
Who Is Who
フィールド内にいる5人を見分けて,名前と顔を覚える
Open Challenge
ロボットの性能に関する,研究面で優れている点のデモ
Enhanced Who Is Who
フィールド内にいる5人を見分けて,飲み物を届ける
General Purpose Service Robot
上記すべてのタスクをランダムに組み合わせてロボットに実行させる
Shopping Mall
未知環境(トイザらス)で棚から3つのオブジェクトを持ってくる
In the Restaurant
注文を聞く,ドリンクを用意するなど給仕関係の性能のデモ
 

5. 参加したグループリスト(全14カ国、24チーム)

世界各国から選抜された24チームは以下のとおりです。
日本:
eR@sers(NICT/電気通信大/玉川大),Ho-Ryu(九工大)

オーストラリア:
CAS@Home(The University of Technology Sydney/The University ofSydney/The University of New South Wales/Uppsala University)

チリ:        
UChile Homebreakers(University of Chile)

中国:
JiaoLong(上海交通大),WrightEagle@Home(University of Science and Technology of China),ZJUPanda@Home(浙江大学)

ドイツ:
b-it-bots(University of Applied Sciences Bonn-RheinSieg),homer@UniKoblenz(University of KoblenzLandau),NimbRo@Home(University of Bonn),TOBI(Bielefeld University)

イラン:
MRL @Home(Azad University)

メキシコ:
Pumas(Universidad Nacional Autonomata de Mexico),NANISHA(UPAEP)

オランダ:
Radical Dudes(INSERM U846 Stem Cell and Brain Research Institute)

ポルトガル:
MINHO@Home(University of Minho)

シンガポール:
DCR-I(Nanyang Technological University),Robo-Erectus@Home(Singapore Polytechnic)

オランダ:
Radical Dudes(INSERM U846 Stem Cell and Brain Research Institute)

スイス:
RH5-Y(West Switzerland University of Applied Sciences)

台湾:
AIrobot@home(National Cheng Kung University),Crude Scientists(National Chung Cheng University),TKU(Tamkang University))

タイ:
Plasma-MK(Chulalongkorn University)

アメリカ:
GT@Home(Georgia Institute of Technology)

用語解説

ロボカップ@ホームリーグ

ロボカップとは、The RoboCup Federationが主催する自律ロボットの世界的な競技であり、ロボットサッカー競技で有名です。ロボカップには8リーグの競技があり、それぞれ、世界的に著名な大学、研究機関が参画しています。ロボカップ@ホームリーグは日常生活で人間を支援する自律ロボットの競技で、日常環境で人と共存する生活支援ロボットの実現を目指しています。NICT/電気通信大/玉川大の合同チームはこれまで、2008年優勝、2009年準優勝しています。

ロボカップ2010世界大会の日本予選であるジャパンオープンは2010年5月に大阪で開催され、経済産業省、文部科学省をはじめとする多くの団体から後援を受けています。

ロボカップ2010世界大会公式ホームページ(英語):http://www.robocup2010.org/
ロボカップ2010ジャパンオープン公式ホームページ:http://www.robocup-japanopen.org/

MASTARプロジェクト

NICTは、平成20年4月、内閣府の総合科学技術会議が選定した社会還元加速プロジェクト「言語の壁を乗り越える音声コミュニケーション技術の実現」の研究を開始し、併せて、機械翻訳、音声対話、言語資源などの音声・言語資源、処理を統合的に研究開発し、持続的な成果展開を推進する新しい枠組みであるMASTARプロジェクトを発足させました。
(MASTAR: Multi-lingual Advanced Speech and Text reseARch)

音声認識辞書の動的切り替え機能

「名前を学習するフェーズ」「はい/いいえを求めるフェーズ」など状況に応じて音声認識辞書を切り替えて、音声認識誤りを減少させる機能です。未知の単語であっても、「私の名前はマイケル」のように音声で教えるだけで、名前を学習して辞書に追加することができます。従来ロボットでは、あらかじめ内部辞書に「マイケル」を登録しておかなければ音声認識をすることができませんでした。

カテゴリ学習機能

色や形の異なる日用品(ペットボトルなど)を複数個見せることにより、カテゴリの持つ特徴を数値的に一般化する技術です。これにより、学習した「ペットボトル」と色が異なるものであっても、「ペットボトル」と認識できます。カテゴリ学習機能を持たない従来のロボットでは、「新聞」のように毎日見た目が変わるものを同じカテゴリのものとして認識することができませんでした。

<本件に関する 問い合わせ先>
知識創成コミュニケーション研究センターMASTARプロジェクト
音声コミュニケーショングループ 杉浦 孔明

TEL:0774-98-6334
E-mail:

<広報 問い合わせ先>
独立行政法人 情報通信研究機構総合企画部 広報室
報道担当 廣田 幸子

Tel:042-327-6923
E-mail: