ミリ波帯は使用周波数帯域幅を広く確保することができるため、映像データ等の大容量通信に適していますが、直進性が強いため1つのビームでは限られた範囲でしか通信できず、周波数が高いため技術的な難易度が高く、構成部品が高価となるなど、実用化には課題がありました。
独立行政法人情報通信研究機構(以下「NICT」という。理事長:宮原 秀夫)と三菱電機株式会社(以下「三菱電機」という。執行役社長:山西 健一郎)は、大容量通信が可能なミリ波(周波数60GHz(ギガヘルツ)帯)を用い、建物内の天井(床からの高さ2.5m)にあるアクセスポイント (AP)に設置された多ビーム切り替え型アンテナと床上に設置した複数の端末の間で、双方向通信を行うシステムを開発しました。
また、本システムを用いた無線通信試験において、ミリ波による双方向通信としては世界最高速のデータ伝送の実証に成功しました。なお、本システムは総務省委託研究「ミリ波ブロードバンド通信システム用アンテナ技術の研究開発」(平成17~21年度)にて開発したものです。
NICTと三菱電機は今回、複数のビームを複数エリアに対し効率的に切り替えて照射する「多ビーム切り替え型アンテナ技術」を開発し、世界最高速のミリ波 帯双方向ブロードバンド通信システムを実現しました。本技術は、近接する複数のユーザが同時に高速通信できる無線システムの実現に大きく寄与します。
<成果のポイント>
- 16箇所のエリアと高速通信できるアクセスポイント用アンテナを開発(補足資料図1参照)
16本のビームを16箇所のエリアに対し適宜切り替えて照射する「16ビーム切り替え型AP用ミリ波アンテナ」を開発しました。 - 端末に搭載可能な小型・低コストアンテナを開発(補足資料 図2参照)
60GHz帯の旋回型傾斜ビームアンテナ装置及び無線モジュールを開発し、ハイビジョン映像信号のミリ波伝送に成功しました。 - AP—端末間世界最高速のデータ伝送を実証
適応変調技術及びアクセス制御技術を適用することによりデータ処理量や処理速度が向上しました。 多ビーム切り替え型APと複数端末間の無線通信試験において、60GHz帯を用いた双方向通信としては世界最高速のデータ伝送速度(1AP-1端末間通信時の最大実効レート739Mbps、2AP-4端末間同時通信時の合計実効レート583Mbps(1端末当り146Mbps))の実証に成功しました。
本技術は、電車内で情報を提供するトレインビジョン用ミリ波コンテンツ伝送を含め地上-車上間通信への適用の可能性があります。更に、将来、航空機等移動体向けの大容量データ伝送用の無線システムに広く展開する予定です。
なお、本成果は6月24日(木)に総務省主催で明治記念館にて開催される「電波資源拡大のための研究開発-第3回成果発表会」にて公開します。
※トレインビジョンは三菱電機株式会社の登録商標です。
- 16箇所のエリアと高速通信できるアクセスポイント用アンテナの開発
以下の機器を開発し、これらを組み合せて16本のビームを16箇所のエリアに対し適宜切り替えて照射する「16ビーム切り替え型AP用ミリ波アンテナ」を開発しました。
- 60GHz帯ビームチルト型ポスト壁導波管スロットアレーアンテナ:低損失樹脂基板に構成することで薄型化と低損失化を実現
- 60GHz帯4分岐スイッチ:不要な信号の漏れを最小とする回路構成により通過損失を低減
- 60GHz帯高出力増幅器MMIC※1:素材にGaAs※2を使用し、優れた高速動作と高出力動作を実現
※1Monolithic Microwave Integrated Circuit:マイクロ波回路を単一チップ上に集積した回路
※2 Gallium Arsenide:ガリウム・ヒ素
- 端末に搭載可能な小型・低コストアンテナを開発
- 60GHz帯旋回型傾斜ビームアンテナ装置:小型化および低コスト化を実現
- 60GHz帯無線モジュール:超低電力消費の小型受信端末機を実現
- AP—端末間世界最高速のデータ伝送を実証
以下の技術を適用することによりデータ処理量や処理速度が向上しました。
多ビーム切り替え型APと複数端末間の無線通信試験において、ミリ波(60GHz帯)を用いた双方向通信としては世界最高速のデータ伝送速度(1AP-1端末間通信時の最大実効レート739Mbps、2AP-4端末間同時通信時の合計実効レート583Mbps(1端末当り146Mbps))の実証に成功しました。
- 適応変調技術:通信状態に応じて変調方式の切り換えを実現
- アクセス制御技術:可変フレーム構成により通信制御の高速・高効率化を実現
端末に接続できる以下の機器を開発し、ハイビジョン映像信号のミリ波伝送に成功しました。
図1に16ビーム切り替え型AP用アンテナを用いたミリ波帯双方向ブロードバンド通信システムのイメージを示します。地上(床面を想定)より高さ2.5m の場所(天井面を想定)に設置されたAPから16本のビームが地上の4m×4mのエリアを隙間無く照射します。また、図2に16ビーム切り替え型AP-複 数端末間60GHz帯双方向通信システムの通信実証試験系(2AP対4端末)のイメージを示します。今回の実証実験は、最大2AP対最大4端末の形態にて 実施しましたが、開発された基盤技術は基本的には、更にAPおよび端末の台数が増加した場合においても今回実証されたものと同等の大容量通信を可能とするものです。
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