FTTHは、より広範な地域への展開や、企業内ネットワークの回線収容など、その適用領域の拡大を図る上で、通信速度の高速化と加入者収容効率の高い システムを実現することが求められています。従来のFTTHで用いられているPONでは、光スプリッタと呼ばれる素子を用いて通信事業者と各家庭との間を 結ぶ光ファイバの分岐を行っています。光スプリッタは給電を必要としないため、低コストでFTTHのシステムを構築できます。一方で、光スプリッタにおい て光信号が各家庭向けに分配されることに伴い、信号電力が低下するため、通信可能な距離や収容可能な加入者数に制約が生じることが課題でした。
株式会社日立製作所(執行役社長:中西 宏明/以下、日立)と慶應義塾大学(塾長:清家 篤)理工学部山中直明教授は、このたび、家庭用光ファイバ通信サービス(FTTH)向けに、現在用いられている通信方式(PON)と比べ、通信距離が2倍の40km、収容できる加入者数は4倍の128となる、アクティブ型の10ギガビット/秒光アクセスシステム(以下、アクティブ光アクセスシステム)の開発に成功しました。
将来、アクティブ光アクセスシステムを従来のPONと並存する形で、適材適所に導入することにより、FTTHのより広範な地域への展開など、光ファイバ通信サービスのさらなる普及に貢献することが期待されます。
なお、本成果の一部は、独立行政法人情報通信研究機構(理事長:宮原 秀夫/以下、NICT) が進めるフォトニックネットワーク技術に関する研究開発の一環として、日立と慶應義塾大学が共同でNICTから受託した委託研究「集積化アクティブ光アクセスシステムの研究開発」によって得られたものです。
そこで、日立と慶應義塾大学は、光スイッチを用いた新しいFTTH向け通信方式である、アクティブ光アクセスシステムを開発しました。アクティブ光アクセスシステムの実現には、電力損失が小さく、入出力ポート切替(スイッチング)を高速に行うことが可能な、1入力128出力規模の光スイッチ(1×128光スイッチ)を実現することが課題でした。慶應義塾大学は、埋め込み型PLZT導波路方式により偏波依存性がなく、光信号伝播に伴う電力損失低減が可能な光スイッチ(PLZT光スイッチ)を開発し、エピフォトニクス株式会社(代表取締役社長:梨本 恵一)への製造委託し、試作しました。日立は、PLZT光スイッチを駆動する電気回路(ドライバ)を開発し、PLZT光スイッチとともに、光スイッチモジュールとして実装することにより、10ギガビット/秒通信に対応可能な、10ns以下での高速スイッチングに成功しました。さらに日立は、光信号の宛先や送信元に応じて、スイッチング制御を行う方式を開発し、1×128光スイッチを搭載する光スイッチ装置に実装しました。光スイッチ装置及び日立が10G-EPON用として開発済みの光回線終端装置(OLT)、光回線端末装置(ONU)を用いて、通信距離40km、128加入者を収容する環境を構築し、OLT-ONU間での10ギガビット/秒通信を実現しています。
アクティブ光アクセスシステムを、従来のPONと並存する形で、適材適所に導入することにより、FTTHのより広範な地域への展開や家庭向け以外のサービスへの適用等、光ファイバ通信サービスの更なる普及に貢献することが期待されます。今後、ITU-T等の国際標準化機関において、将来の光ファイバ通信サービス方式に関する標準化策定開始が予定されており、アクティブ光アクセスシステムは、その候補の一つとなっています。
通信事業者の建物に設置するOLT(光回線終端装置)と家庭の宅内に設置するONU(光回線端末装置)との間に、光スイッチを用いて利用者切替を行うために、光スイッチ装置を設置する
PONでは、全ての光信号が全ONUに到達し、各ONUが所望の光信号のみを選択して取り出す。一方、アクティブ光アクセスシステムでは、光スイッチを用 いることによって、各ONUには特定の光信号のみが到達する。この方式により、光ファイバ分岐に伴う光信号の電力損失が低減されるため、通信距離の延伸と 収容加入者数の増加が可能になる。
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