最近、3次元映像(3D映像)が急速に普及し始めており、さまざまな映像表示装置や再生装置の研究開発が行われ、一般市民向けにも発売される状況になっています。また、一部のBS放送に加え、近くケーブルテレビやCS放送でもサービスが開始されるとの発表もあります。その一方で、次世代3次元映像として研究開発中の裸眼表示システム向けを含め、3次元映像機器の比較評価や画像処理技術の研究開発用に「誰でも自由に標準的に使用できる映像コンテンツ」がなく、3次元映像の制作を支援する技術も不十分でした。
独立行政法人情報通信研究機構(以下「NICT」という。理事長:宮原 秀夫)は、総務省の委託研究を受託し、「3次元映像支援技術」の研究開発を実施しました。本研究開発において制作した、3次元映像標準テストコンテンツ及び3次元映像コンテンツ変換ソフトウェアを、広く3次元映像分野の研究機関、企業等に無償で本日から公開します。
NICTは、総務省の委託研究「3次元映像支援技術」の公募に対し研究開発提案を行って受託し、その技術開発の一環として、裸眼表示システム及び眼鏡使用システムに対応した、3次元映像標準テストコンテンツの制作及び3次元映像コンテンツ変換ソフトウェアの開発を実施しました。 これらのコンテンツは、撮影条件等のパラメータが明らかになっており、本コンテンツの利用により映像表示装置の研究開発における機能・性能の比較評価等を系統的に実施することが可能となります。NICTは、この標準テストコンテンツ及びソフトウェアを幅広く利用していただくことで、3次元映像分野のさらなる技術発展、人材育成に深く寄与することを目的として、3次元映像分野の研究者や関係機関・企業等を対象に無償で配布することといたしました。
本コンテンツ等は、3次元映像機器の研究開発やコンテンツ制作・編集等における評価映像、標準化検討用映像、展示会等でのデモンストレーションなどにおいて、非営利目的であれば多くの用途に利用していただくことが可能です。
標準テストコンテンツは、インターネットで公開します。 (詳細は補足資料をご参照ください。)
公開したコンテンツ・ソフトウェアに関する概要説明会を実施します。
日時 5月12日(水) 13:00~17:00
会場 慶應義塾大学 日吉キャンパス 協生館 3階 C3S10教室
申し込み制なので、詳細は補足資料をご覧ください。
- 総務省の委託研究
総務省は昨年4月に「眼鏡の要らない3次元映像技術の研究開発」についての委託研究の公募を行いました。これは「次世代・究極3次元映像技術」と「3次元映像支援技術」の2つで構成されており、NICTでは「次世代・究極3次元映像技術」及び「3次元映像支援技術」への研究開発提案を行い、採択されました。
今回公開する標準テストコンテンツは「3次元映像支援技術」の研究開発の一環として制作されたものですが、眼鏡の要らない次世代のシステムに限らず、現在普及しつつある眼鏡使用の3次元映像システムでも利用できるように配慮して制作しました。 - 公開する標準テストコンテンツ及びソフトウェアの詳細
- 超高精細ステレオ3次元映像コンテンツ
HD(ハイビジョン)映像の4倍(4画面分)である水平3,840×垂直2,160画素を持つカメラ2台を眼間距離(約6.5cm)に近い間隔で並べて同期撮影した映像コンテンツ。右側カメラの映像を右目に、左側カメラの映像を左目に提示することにより、立体映像として見ることができます。本標準コンテンツでは、制作・編集・上映の工程における評価管理映像としての利用や、コンテンツクリエータ及び撮影技術者の教育・育成にも利用できるよう、推奨撮影条件での映像とともに不適切な撮影条件での映像も収録し、さまざまな3次元映像の表現効果を提示できるようにしています。裸眼立体映像用の多視点データ生成にも使えるよう、1フレームごとの非圧縮生データの形で提供します。 - 測距カメラによる3次元コンテンツ
通常のカメラと同じ2次元の映像と同時に、同じ視野条件、同じ解像度で物体までの距離を測定することができるカメラを測距カメラといいます。今回制作した標準コンテンツでは、2台のカメラ映像からの補間映像生成技術の研究等にも活用することを想定し、さらに左右に2台のカメラを配置して、3視点映像+距離データで構成されています。 - スキャナ型カメラによる3次元映像コンテンツ
カメラを2mm間隔で縦横2次元にスキャンしながら、15,000視点分の画像を取得したコンテンツ。超高密度なカメラ配置で撮影することにより、物体から出る光線が正確に再現できます。本コンテンツは、多視点映像表示装置への入力データ生成技術の開発や、映像補間技術の開発などに活用することができます。 - 3次元CGコンテンツ
市販の3次元CG(コンピュータグラフィックス)生成ソフトウェアである「Maya」に対応した3次元モデルデータ群、及びステレオ3次元映像に変換後の CGムービーから成ります。ユーザが視点位置等を適切に設定することにより、多様な立体/3次元ディスプレイ上での表示・処理の評価に対応可能な3次元映像の生成や、種々の画面サイズに対応する左右両眼による立体ムービーの生成等が可能です。 - 2D/3D変換ソフトウェア
通常のカメラで撮影した2次元映像を元にして、画像内の各物体の奥行きを推定し、擬似的な3次元映像に変換するソフトウェア。3次元映像としての精度は高くないが、変換ソフトウェアを使えば、簡易な3次元映像コンテンツを得ることができる。本ソフトウェアは、3次元コンテンツの簡易な制作環境を提供するものです。奥行き推定に使うアルゴリズムをユーザが組み込むことも可能で、変換技術の開発ツールとしても利用可能です。 - 3次元映像フォーマット変換ソフトウェア
3次元CGコンテンツから多視点3次元映像表示装置の表示コンテンツを生成する変換ソフトウェア。市販のソフトウェア「Maya」上で動作し、3次元CGから仮想カメラによる多視点3次元映像を生成することができます。
- 超高精細ステレオ3次元映像コンテンツ
- 標準テストコンテンツの公開方法
標準テストコンテンツは、インターネットで公開されます。
ユーザ登録をしてログインすることにより、標準コンテンツの送付要求やソフトウェアのダウンロードが可能です。 - 配布方法
- 小容量コンテンツデータ及びソフトウェアについては、必要情報をフォームに入力・登録後、Webページからダウンロードすることができます。
- 中容量コンテンツデータについては、必要情報をフォーム入力・登録後、NICTからDVD等でお送りいたします。
- 大容量コンテンツデータについては、必要情報をフォーム入力・登録後、ハードディスク等をお送りいただき、NICTでコピーして返送いたします。
- 利用範囲
- 3次元映像関連機器の研究開発における評価・管理映像としての利用
- 標準化検討及び教育用映像としての利用
- 制作・編集・上映の工程における評価・管理映像としての利用
- 産業見本市や展示会などでの展示映像としての利用
- 画像圧縮技術、映像生成技術等の研究開発用画像データとしての利用
- その他の非営利目的での利用
- 説明会
公開したコンテンツ・ソフトウェアに関する概要説明会を実施します。
日 時:5月12日(水) 13:00~17:00
会 場:慶應義塾大学 日吉キャンパス 協生館 3階 C3S10教室
申し込み:件名を「コンテンツ説明会」とし、氏名、肩書、所属、組織名、郵便番号、住所、連絡先電話番号、メールアドレスを明記し、E-mail:contents@khn.nict.go.jpへメールにて申し込み下さい。先着100名程度まで受け付けます。参加費は無料です。
参照Webサイト:標準テストコンテンツ - 標準化活動への寄与
今回制作した標準テストコンテンツについては、国際標準化会議における評価用画像としての提供など、国際標準化への寄与を目指します。 - 画像の例
用語解説
本件に関する 問い合わせ先
推進室
木村 和宏
Tel: 0774-95-2692
E-mail:
取材依頼及び広報 問い合わせ先
広報室
報道担当 廣田 幸子
Tel: 042-327-6923
E-mail: