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インターネットエクスチェンジポイントから日本標準時配信の開始

より近くから高精度で安定したサービスを

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2010年2月18日

独立行政法人情報通信研究機構(以下「NICT」、理事長:宮原 秀夫)は、NICTが独自に開発した時刻伝送装置を用いて、平成22年2月18日(木)より日本インターネットエクスチェンジ(以下、「JPIX」)内に設置した時刻サーバから、日本標準時の配信を開始します。

背景

NICTは平成18年6月よりインターネットによる日本標準時の配信(公開NTPサービス)を行い、様々なシステムで広く利用されています。1日あたりの利用数は現在、1億回を越えています。しかし、インターネットは、多数のインターネットサービスプロバイダ(ISP)が相互に接続しているため、NICTと利用者とのネットワーク的な距離が長くなります(図1)。そのために伝送遅延の変動により接続しにくくなったり、精度が低下したりする場合がありました。

今回の成果

NICTは時刻配信の精度と信頼性をさらに向上させるため、インターネットエクスチェンジポイント(IX)から日本標準時を配信するサービスを開始します(図2)。

本システムでは、日本標準時(東京都小金井市)と離れたJPIX(千代田区大手町)間の通信に研究開発テストベッドネットワーク「JGN2plus」を利用し、距離による遅延を大きく改善する伝搬遅延時間推定方式を導入しました。本方式は、一本の光ファイバ中の同じ波長の光に時刻データをのせ、双方向通信する事により伝搬遅延時間を推定し、日本標準時とJPIX内NTPサーバを1ナノ秒の精度で合わせる事が出来ます。日本標準時に直結したJPIXのNTPサーバから時刻配信を行う本システムを利用する事で、全てのユーザにとって近くに NTPサーバが位置することになり、インターネットの状況による配信時間の変動が減少し、安定したNTPサービスを可能にします。

  • NICT NTPサーバ名:ntp.nict.jp
  • 公開NTPサービスWebページ:https://www2.nict.go.jp/w/w114/stsi/PubNtp/

今後の展望

日本標準時とNTP利用者の方々とのネットワーク上の距離を縮めることにより、今後ともより精度の高い安定したNTPサービスを目指します。

補足資料

図1  現行のシステム構成
図1  現行のシステム構成
図2  新しいシステム構成
図2  新しいシステム構成

用語解説

NTP (Network Time Protocol)

世界で最も使われている、インターネットを介した時刻同期方式です。NICTがサービスを開始する以前は、国内では公開されている数少ないstratum 1サーバに利用が集中し、処理能力を越えていました。そこで、NICTでは従来方式の200倍以上の処理能力を有する専用ハードウェアを開発し、平成18年にサービスを開始しました。

stratum 1

stratum とは、NTPの時刻参照階層構造のことで、最上位のサーバが原子時計等の正確な時計から標準時を取得し、下位のサーバはそれを参照する事で時刻を合わせます。最上位のNTPサーバがstratum 1であり、階層を下りるごとに数字が一つずつ大きくなります。

ネットワーク的な距離

地図などで一般的に使われている地理的な距離とは異なり、通信経路の途中に置かれている中継装置の数はネットワーク的な距離と呼ばれています。地理的に近く遅延時間が短くても、多数の中継装置を経由する場合には、通信品質が低下します。

インターネットエクスチェンジポイント(IX)

インターネットは、多数のインターネットサービスプロバイダ(ISP)が相互に接続して構成されており、IXにおいて、それらのISPが相互に接続し、データを交換しています。したがって、それぞれのISPに接続しているユーザから見た場合、IXは他のどのISPよりも近くに位置することになるため、各種サーバやデータセンタが置かれています。JPIXは日本で最大顧客数を有する国内主要IXの1つです。

JGN2plus

NICTが運用する超高速・高機能研究開発テストベッドネットワーク。

伝搬遅延時間

時刻を伝送する場合、時刻源から送出した時刻情報は伝搬時間だけ遅れて遠隔地に到達します。この伝搬遅延時間を補償しなければ、正確な時刻を伝送することはできません。

1ナノ秒

10億分の1秒

<本件に関する 問い合わせ先>
新世代ネットワーク研究センター 光・時空標準グループ
岩間 司

Tel:042-327-5627
Fax:042-327-5809
E-mail:

<取材依頼及び広報 問い合わせ先>
総合企画部広報室
報道担当 廣田 幸子

Tel:042-327-6923
Fax:042-327-7587
E-mail: