NICTはこれまで、日本人の平均体型を有する成人男女と妊娠女性の数値人体データベースを、既に100者以上に公開してきました。今回の妊娠女性データベースについては、昨年7月から非営利目的の研究利用に限定して大学等の研究機関に対してのみ、無償公開を行ってきました。企業等からも非営利目的にとらわれない利用に対する要望が多数寄せられており、この度、有償での提供を行うことにいたしました。
独立行政法人情報通信研究機構(以下「NICT」という。理事長:宮原 秀夫)は、千葉大学(学長: 齋藤 康)と共同で開発した、世界初の妊娠女性固有組織(胎児や胎盤など)の形状を忠実に模擬した日本人の妊娠女性データベースを、この度、民間企業向けに有償で公開します。
この妊娠女性データベースは、電波による妊娠女性や胎児への影響調査、医療機器の開発や治療における評価、自動車衝突時の傷害評価、服飾等の人間工学評価等、幅広い分野での研究開発や商品開発に利用できます。
数値人体データベースは電波と人体との相互の影響を研究するために開発されたもので、人体を細かなブロックに分割し、それぞれのブロックに筋肉や脂肪といった人体組織に対応する番号を付与したボクセル形式です。今回の妊娠女性データベースは、NICTと千葉大学との共同研究により開発したものです。本モデルは2mm立方体のブロック約710万個で構成され、妊娠26週における日本人の平均的体型を有し、胎児や胎盤などの妊娠女性固有の組織を含む56種類の組織と臓器から成る世界初の本格的な全身データベースです。
このデータベースに組織や臓器における電気定数を設定することで、電波が妊娠女性の体内に吸収される電力をこれまで以上に高精度に推定することができます。また、電気定数の代わりに他の人体特性値を設定することで、様々な分野での利用が可能となります。
提供するデータベースはボクセル形式ですが、市販の数値解析・画像処理ソフトウェアを用いてご利用いただける、メッシュ形式でのデータ提供も来月に予定しています。その他の公開条件等については、下記研究推進部門知財推進グループまでお問い合わせください。
用語解説
人体を微小なブロックの集合体として表現したもの。各ブロックにはその部位に対応する組織や臓器名が与えられており、その組織固有の物理定数(電気定数や弾性率等)を与えることで様々なシミュレーションに用いることができる。
電波が人体に及ぼす影響については、50年以上にわたって世界各国で研究が行われている。その膨大な研究成果によって、携帯無線端末等の電波については、熱作用に基づいた電波防護指針が定められている。電波により生じる人体の熱作用の評価には、体内への電力の吸収量が指標として用いられ、数値人体モデルを利用したコンピュータシミュレーションによって、正確かつ詳細な評価を行うことが必要である。また、人体が通信機器のアンテナ特性等に及ぼす影響の評価にも使うことができる。
2次元の画像は小さな正方形(ピクセル)の集合体としてデジタル表示できる。同様に3次元の物体は小さな立方体(ボクセル)の集合体としてデジタル表示でき、今回の数値人体モデルは、微細なボクセル約710万個で構成されている。ボクセル形式による3次元立体表示は、X線CTやMRIなどの医療画像にも用いられている。
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