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超高速光スイッチの開発に成功

〜 切り替え速度10ナノ秒以下に加え偏波無依存性や挿入損失の低減を実現 〜

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2009年12月1日

慶應義塾大学理工学部情報工学科山中直明研究室(以下「慶應義塾大学」という。塾長:清家篤)は、現在の光アクセス方式に用いられているPON (Passive Optical Network)の収容能力や伝送距離を向上させ、また、回線秘匿性の問題を解決する超高速光スイッチの開発に成功しました。これにより、スプリッタを用いる従来のPONシステムを超える新たな光アクセスシステムへの展開が期待されます。本成果の一部は独立行政法人情報通信研究機構(以下「NICT」という。理事長:宮原秀夫)の委託研究により得られたものです。

 この成果は、慶應義塾大学からエピフォトニクス株式会社(社長:梨本恵一)に技術移転され、同社によって光スイッチの製品化がなされました。また、12月11日に東京国際フォーラムで開催される慶應科学技術展(KEIO TECHNO-MALL)において本成果の展示発表を行います。

背景

慶應義塾大学はNICTの委託を受け、株式会社日立製作所(執行役会長兼執行役社長:川村 隆)と共同で、「集積化アクティブ光アクセスシステムの研究開発」を行ってきました。集積化アクティブ光アクセスシステムは、従来の光アクセス方式のPONにおけるスプリッタの代わりに、光スイッチを用いた次世代の光アクセス方式です。この方式の実現のために、光スイッチには、10Gbit/s通信に対応可能な高速切替が行えること、光信号伝播に伴う損失(挿入損失)の抑制、ならびに、電磁波である光の電界の向きとその時間的変化への依存性(偏波依存性)を低くする技術的要件が求められます。  

今回の成果

このたび、世界で初めて開発に成功した埋め込み型PLZT導波路光スイッチは、優れた電気光学特性を有するPLZTを材料とし光導波路を埋め込むことにより、電極による損失を大幅に除去できることが可能です(挿入損失が従来比1/2、偏波無依存、切替速度10ns以下)。本光スイッチを用いることで、現行のスプリッタが使われている光アクセスシステムと比較して、最大通信距離を20kmから40kmと倍増し、更に情報の秘匿性を保ったまま従来の4倍である128ユーザの収容能力を有するシステムを実現することができます。

今後の展開

慶應義塾大学は、20年以上にわたるPLZT導波路技術の研究開発の実績と実現化のノウハウを持つ、エピフォトニクス株式会社に対して、本研究成果に関する特許や技術の移転を行い、このたび、同社による製品化が成功し、サンプル出荷が決定しました。今後、慶應義塾大学では、スプリッタを用いる従来のPONシステムを超える、次世代アクセスシステムへの展開を図ります。さらに、アクセス系だけではなく、メトロ系、コア系アに対して本光スイッチの展開を目指します。

また、12月11日に東京国際フォーラムで開催される慶應科学技術展(KEIO TECHNO-MALL)において本成果の展示発表を行います。

補足説明

図1 今回、開発・製品化したPLZT導波路光スイッチングサブシステム
図1 今回、開発・製品化したPLZT導波路光スイッチングサブシステム

中央のボックスが光スイッチモジュールであり、内部に今回開発した埋め込み型PLZT導波路光スイッチのモジュールを内蔵。ボードの光スイッチドライバにより、光スイッチの切り替えを制御。

図2 1×8 PLZT導波路光スイッチのチップ
図2 1×8 PLZT導波路光スイッチのチップ

写真中央が1×8PLZT導波路光スイッチのチップ。20年以上にわたり積み上げてきたPLZT導波路技術により高速制御、電極の小型化、低消費電力化を図り、4mm×20mmサイズのチップを開発。これは1×8高速光スイッチとして最小のサイズであり、さらなる小型化や集積化が可能。





本件に関する 問い合わせ先

慶應義塾大学理工学部情報工学科

教授 山中 直明
Tel.045-566-1744
E-mail:

広報 問い合わせ先

慶應義塾

広報室 担当 中島
Tel.03-5427-1541
E-mail:

独立行政法人情報通信研究機構

総合企画部 広報室 担当 廣田
Tel.042-327-6923
E-mail: