今回の7月22日(水)に発生した日食では、国内拠点として、URCF、国立天文台らのグループが、奄美大島、硫黄島に、国外拠点としては、慶應義塾大学、WIDEプロジェクトらのグループが、武漢(中国)、上海(中国)に観測拠点を設け、映像配信を試みました。これらの映像はネットワークを通じて、日本全国はもとより世界中にライブ配信されました。これらの映像を安定して、高品質に届けるために我が国やアジアをはじめとする世界中のネットワークが相互協力し、配信経路や帯域を設計することになりました(参照:研究ネットワーク接続構成図)。
たとえば、URCFらのグループは、奄美大島で観測された皆既日食の4K(ハイビジョン映像の4倍の解像度を有する映像)による全天映像を、天空丸ごと再現する超臨場感プラネタリウムであるドームシアター(ABCホール(大阪市)、大阪市立科学館(大阪市)、けいはんなプラザ(京都府)、つくばエキスポセンター(つくば市))へ、JGN2plusやSINET3などで構築された広帯域ネットワークを使い、高臨場な映像を配信することができました。
慶應義塾大学デジタルメディア・コンテンツ統合研究機構と株式会社五藤光学研究所らのグループは、国外拠点で観測された映像を、国内の中継拠点を介し、慶應義塾大学内向けのほか、大田(韓国)、アムステルダム(オランダ)、シカゴ(米国)、キャンベラ(オーストラリア)への高品質映像配信を行いました。
国立天文台が硫黄島で観測した映像は、超高速インターネット衛星「きずな」で中継された後、JGN2plusを通じて大手町に送られ、テレビ中継(NHK)や、全国の研究教育機関向けの配信や、NICTによるインターネット配信に利用されました。さらに、WIDEプロジェクトにより、米国(Internet2)、アジア(TEIN3)、欧州(GEANT2)等の国外学術研究用ネットワークへのマルチキャスト配信もあわせて実施されました。今回の映像配信に関係した拠点は合計で32カ所、使用した帯域は合計で31.405 Gbpsであり、国外への配信拠点は、高品質なものだけを取り上げても韓国、オランダ、米国、オーストラリアになりました。また、国外の学術研究用ネットワークである、APII、TEIN3、Internet2、GEANT2を通じてアジア、米国、欧州にもマルチキャスト配信され、同時に行われる実験としては、これまでで最大規模のものとなりました。
このような大規模な配信が可能になったのも、これまでの様々な実験などを通じた国内外の学術研究用ネットワークの相互協力ができているためであり、いろいろなところで日食の中継を見ることができたのも、その裏で世界中の学術研究用ネットワーク運用者の努力があったことを感じていただければ幸いです。