食品中のアレルゲンや牛海綿状脳症(BSE)等の検査では、試験サンプルから特定の生体物質を検出する技術が不可欠です。また,創薬の研究にも、小分子化合物とタンパク質との選択的な結合を探し出すことが求められます。これらは、タンパク質など生体物質の持つ特異性を利用したものであり、血液検査や食品検査、ライフサイエンス分野など、さまざまな場面で利用されています。しかし多くの場合、これらの反応の有無や量を調べるには、二次抗体や標識物質を反応させ、発色や蛍光などで検出する必要があります。そのため、検査や分析には手間や時間がかかり、数時間から半日以上を要することがありました。
タンパク質等の生体物質はTHz帯に吸収があるため、THz波の透過特性を測定することで、THz波が透過するメンブレン上の生体物質を直接検出できます。そこで、NICTと東北大学農学部では、電波と光の中間にあるテラヘルツ(THz)波によるイメージング装置を用いて、メンブレンフィルター上の生体物質の結合を、標識化することなく(ラベルフリー)、迅速、簡易に検出できる方法を共同で開発してきました(図1)。