今世紀最大の日食となる7月22日(水)の皆既日食は、日本の陸地で観測できる皆既日食としては46年ぶりであり、また次回は26年後まで起こらないなど、非常に珍しい貴重な自然現象です。NICTとJAXAは、この機会を捉え、今後計画されている「きずな」を利用したアジア・太平洋島嶼国との実験に向けた第一歩として、硫黄島・父島(東京都小笠原村)からの皆既日食の映像伝送実験を実施する予定です。
独立行政法人情報通信研究機構(以下「NICT」という。理事長:宮原 秀夫)は、独立行政法人宇宙航空研究開発機構(以下「JAXA」という。理事長:立川 敬二)、自然科学研究機構国立天文台(以下「NAOJ」という。台長:観山 正見)と共同で、7月22日(水)に、硫黄島から超高速インターネット衛星「きずな」(WINDS)を用いて、今世紀最大となる皆既日食の映像伝送実験を実施する予定です。実験では地球局を硫黄島に設置して、「きずな」による155Mbpsの回線で複数のハイビジョン映像を伝送し、アジア・太平洋地域向けアンテナを用いた高速データ伝送能力を実証するとともに、実験映像を広く公開します。
硫黄島からのハイビジョン映像中継の実現のために、NICTは2.4mのアンテナを有する車載型地球局で「きずな」に向け155Mbpsの速度で日食の映像を送信します。「きずな」衛星はアジア・太平洋地域全体をカバーするアクティブフェーズドアレーアンテナ(APAA)を用い、東京都小金井市や茨城県鹿嶋市などのNICT、JAXA地球局に向けて映像を中継し、さらにNICTが有する地上高速ネットワークJGN2plusなどを経由してNAOJに送られます。実験映像は上野にある独立行政法人国立科学博物館をはじめ、各地の科学館、放送局等へ配信され、広く公開される予定です。
このように本伝送実験はブロードバンドの宇宙通信ネットワークと地上高速光ネットワークが連携した高度な通信実証であるとともに、希有な天体現象をネットワーク経由で多数の方に共有いただくことを目指す内容となっています(補足資料 図1)。
なお、現地天候等の条件によっては日食映像の伝送が行なえない場合もございますので、あらかじめご了承ください。
硫黄島での食の始まり | 10時1分 |
皆既日食の時間帯 | 11時25分から11時30分まで(最大11時28分) |
食の終わり | 12時52分 |
補足資料
硫黄島からの複数のハイビジョン映像は、155Mbpsの速度で「きずな」に送信されます。「きずな」はアクティブフェーズドアレーアンテナ(APAA)を用いて硫黄島からの電波を受信、小金井の可搬型地球局(JAXA)またはNICT鹿島宇宙技術センターにIP伝送します。本土内の地球局からは高速の地上ネットワーク「JGN2plus」などを経由し、国立天文台などに届けます。中継映像は公共天文台などに向けて配信される予定です。
用語解説
アジア・太平洋地域のデジタル・ディバイドの解消、衛星利用の高度化等に必要なギガビット級の超高速衛星通信技術の確立を目的に、NICT及びJAXAが開発した研究開発衛星で、平成20年2月23日にH-IIAロケットで打ち上げられ、平成20年6月30日からは定常運用が開始されています。衛星通信能力として、「きずな」に搭載されているNICT開発の再生中継器を用いることで、小型地球局(VSAT)を用いて最大155Mbpsのメッシュ接続による通信が可能です。また、1.1GHz帯域幅のベントパイプ型の衛星中継モードを用いれば、世界最高速の1.2Gbps伝送が可能です。
本報道資料に関する問い合わせ先
NICT 独立行政法人 情報通信研究機構 総合企画部 広報室 Tel:042-327-6923
JAXA 独立行政法人 宇宙航空研究開発機構 広報部 Tel:03-6266-6413~7
(URL:http://www.nao.ac.jp/)