超高速インターネット衛星「きずな」(WINDS)は、ギガビット級の超高速衛星通信技術の確立を目的に、宇宙航空研究開発機構(JAXA)とNICTが共同で開発した研究開発衛星です。昨年の打ち上げ以降、JAXAによる北京オリンピックのハイビジョン伝送、防災訓練等での通信衛星の有効性検証、アジアと連携した遠隔教育などの基本実験及び利用実験等が実施されています。NICTは、ギガビット級の衛星通信の実現を目指し、通信装置の開発を進め、基本実験として「きずな」の広帯域中継器を用いた世界最高速の1.2 Gbps(622Mbpsの2回線同時)伝送などを実現しました。また、NICTは、衛星の開発段階から「きずな」のギガビットクラスの伝送能力を生かしたアプリケーションの開拓を進め、その例として、スーパーハイビジョン(SHV)画像伝送アプリケーションについて、NHK技研との共同研究を実施してきました。
独立行政法人情報通信研究機構(以下「NICT」という。理事長:宮原 秀夫)は、NHK放送技術研究所(以下「NHK技研」という。所長:久保田 啓一)と共同で5月13日(水)~15日(金)に超高速インターネット衛星「きずな」(WINDS)を用いたスーパーハイビジョン(SHV)伝送実験に世界で初めて成功しました。実験ではNICT鹿島宇宙技術センターの衛星通信実験施設にNHK技研のSHV伝送用広帯域変調器を設置し、SHV信号を「きずな」経由でNHK技研に設置したNICTの2.4mの受信地球局に伝送し良好な特性を得ました。
NICTは、NHK技研と共同で、NHK技研が開発した広帯域変復調器とSHV映像符号化装置を用いて、5月13日(水)~15日(金)に実施した衛星実験で、NICT鹿島宇宙技術センターの5mアンテナを備えた大型地球局からSHV信号(500Mbps)を「きずな」に向け送信し、NICTがNHK技研に設置した2.4mアンテナ受信局で「きずな」を経由したSHV信号を受信・復調し、高品質な画像の再現に成功しました。
NICTは、5月21日(木)~24日(日)に開催されるNHK技研公開で、「きずな」を用いたSHVリアルタイム中継及び多チャンネル伝送の公開共同実験を行います。この公開共同実験では、NICTの研究開発テストベッドネットワーク「JGN2plus」を用いて、北海道札幌市のさっぽろテレビ塔で撮影されるSHV映像をNICT鹿島宇宙技術センターまで光回線でIP伝送し、別のSHV映像と多重化し、「きずな」に送信し、NHK技研に設置したNICTの2.4mアンテナ受信局で受信し、会場においてハイビジョン映像の縦横4倍の超高臨場感の映像をリアルタイム中継で公開します。
補足資料
札幌の生中継映像は、100Mbpsに圧縮符号化されてNICTの「JGN2plus」でNICT鹿島宇宙技術センターにIP伝送します。ここで予め収録しておいた2チャンネルのSHV信号とともに「きずな」へ送信し、NHK放送技術研究所で「きずな」の広帯域中継器で中継された3チャンネルのSHVすべてを受信して展示します。
用語解説
アジア・太平洋地域のデジタル・ディバイドの解消、衛星利用の高度化等に必要なギガビット級の超高速衛星通信技術の確立を目的に、宇宙航空研究開発機構及び情報通信研究機構が開発した研究開発衛星で、平成20年2月23日にH-IIAロケットで打ち上げられ、平成20年6月30日からは定常運用が開始されている。衛星通信能力として、「きずな」に搭載されるNICT開発の再生中継器を用いることで、小型地球局(VSAT)を用いて最大155Mbpsのメッシュ接続による通信が可能である。また、1.1GHz帯域幅のベントパイプ型の衛星中継モードを用いれば、世界最高速の1.2Gbps伝送が可能である。
本件に関する 問い合わせ先
宇宙通信ネットワークグループ
グループリーダー 鈴木 龍太郎
Tel:042-327-5361
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研究マネージャー(WINDS担当) 高橋 卓
Tel:0299-84-7128
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広報 問い合わせ先
報道担当 廣田 幸子
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