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低消費電力セキュアBAN搭載ユビキタス型心電計の開発に初めて成功

~ 安心の見守りボディ・エリア・ネットワーク(BAN)の実現 ~

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2009年5月11日

独立行政法人情報通信研究機構(理事長:宮原 秀夫)は、横浜市立大学と株式会社 アール・アイ・イーの協力により、ペンダント型アクセサリとして着装可能な、低消費電力セキュリティ機能及び低電力BAN(ボディ・エリア・ネットワーク)を搭載した新しい無線多素子心電計として双極誘導のアクセサリ型多素子心電計II型(心電図、体表温度及び体位の変化の測定)の開発に初めて成功しました。

本心電計は20グラム程度と非常に軽く、ジェル等を必要としないドライな電極のため、アクセサリのように常時、首からぶら下げるのに違和感がありません。さらに、ワンタッチで利用者だけのプライバシーを確保するとともにウェアラブルBANを構成します。これらの技術により、安心な健康見守りサービスが提供可能となり、利用者の健康状態に合わせて複数のセンサーを選ぶことで体調変化を様々な角度から捉え、外部への緊急連絡を行うBANシステムが実用化されます。

背景

超高齢少子化が急速に進行し、医療保険制度や社会保障システムが危機的事態をもたらす中、病気疾患後の医療・介護ではなく、一人ひとりが日常で自らの健康管理を行い、病気の予防に取り組む事が重要という認識が広がりつつあります。医療現場においても、電子カルテの導入等、従来型の医療情報システムの効率化とは別に、個人の日常生活における健康見守りや、緊急連絡時に適切な対応ができる健康サービスへの必要性が高まっています。

そのソリューションとして、様々なプロジェクトで健康管理機器やセンサー群、さらにはそれらの機器から成るシステムの研究開発が進められている中で、ユーザの利便性を考慮した複数の小型センサーから構成される省電力無線ユビキタス型ネットワークはこれまで開発されていませんでした。

今回の成果

利用者にとって使いやすい超小型の生体・生活センサーと、データ通信時のプライバシーを確保した省電力セキュア短距離無線ネットワークを開発し、健康状態に合わせて複数のセンサーを組み合わせ併用することに成功しました。センサー群とそれらの間のネットワークの共通インタフェース(Connectivity)を提供するとともに、プライバシーの確保(Confidentiality, Integrity and Availability)を達成し、その実用化への道を開きました。

今回開発した心電計は20グラムという軽量にもかかわらず、省電力化技術により24時間連続測定及び無線データ送信が可能となっています。さらに、心電計など複数の生体・生活センサーから構成される省電力BANは、それらセンサーから集められたデータの時間的順序関係を保持しているため、体調変化をより詳しく捉える事ができます。

今後の展望

超小型生体・生活センサーからなるユビキタス保健医療システムを目標とし、検診センターや病院、自宅、屋外と、様々な場所での健康管理を実現すべく、(1)利用者に極力負担をかけないセンサー、(2)それらセンサーから構成される省電力短距離無線ネットワーク、(3)センサーの受け側となる解析ソフトウェアプラットフォーム、(4)安心して使える広域分散健康データ管理について、標準化とオープンソフトウェア化に向けた研究開発と成果の実用化を進めていく予定です。なお、本成果の一部を、5月12日(火)~13日(水) にパシフィコ横浜で開催されますワイヤレス・テクノロジー・パーク2009に展示いたします。
http://www.wt-park.com/

補足資料

今回開発した双極誘導のアクセサリ型多素子心電計II型

本心電計に搭載しているセキュリティ技術は、生体・生活センサーから得る各種の特徴データを暗号化キー生成に少しずつ利用していくことで、特別なキー設定が不要で十分な暗号強度を確保します。この技術はキー生成計算量が極めて少ないことで消費電力を抑えています。

今回開発した双極誘導のアクセサリ型多素子心電計Ⅱ型

本心電計搭載のBAN技術は、BANを構成する複数の生体・生活センサーから集められたデータの順序関係を保持しつつ無線通信量を最少に抑えるため、更なる省電力化を図っています。

BANコーディネータとしての携帯電話での体位と心電図表示
BANコーディネータとしての携帯電話での体位と心電図表示
無線トランシーバ部とCPUの平均電力消費量比較
無線トランシーバ部とCPUの平均電力消費量比較

ホルター型単極誘導多素子心電計

この心電計は、心電図モニター用ディスポーザル電極(下図左上が貼り付けイメージ)を体表に直接貼り付け、心電図、体表温度及び体位の変化を無線で送信し続けるタイプで、スポーツなど短時間での健康管理に使われる。今回の開発では、この既開発の心電計にも、低消費電力セキュアBANを搭載した。

ホルター型単極誘導多素子心電計
ボディエリアネットワーク(BAN)を構成する5つの主な生体無線センサー
ボディエリアネットワーク(BAN)を構成する5つの主な生体無線センサー
※SpO2:血中酸素飽和度
※加速度センサー:体位の変化測定に利用
横浜市大医学部 山末助教より
患者数はインターネットなどから
ボディエリアネットワーク(BAN)を構成する5つの主な生体無線センサー

本低消費電力セキュアBANの応用として、センサー群から送られてくる生体/生活データの時間的順序関係(因果関係)を得る事ができることから、さまざまな病気・病態のモニターができるようになる。

素人が簡単に使える心電計で、救急や在宅医療などに適用

応用例として、遠隔からさまざまな病気・病態のモニターができる。

素人が簡単に使える心電計で、救急や在宅医療などに適用

 

用語解説

低消費電力セキュリティ機能

本機能は、体位の変化や生体データの変化が利用者の固有情報であることに着目して暗号キーの動的生成を行うとともに、コンパクトな暗号演算処理(AES 128bitsCBCモード)を実現しており、高い暗号強度を保証しています。

BAN(ボディ・エリア・ネットワーク)

医療やヘルスケアでの用途を目的とし、PAN(パーソナルエリアネットワーク)よりも更に人体に近い数メートルという近距離の無線通信ネットワークを、ボディ・エリア・ネットワークと呼びます。本BANの実用化では、身に着けるウェアラブル機器を中心とした体の周りのネットワークの通信ソフトウェア規格を想定しています。

ウェアラブルBAN

体表に装着する(ウェアラブル)センサーと、それらのセンサーから無線でデータを集めるコーディネータとしての携帯端末で構成されるネットワークを指します。IEEE802.15.6 では、1つのネットワークあたり6個以上のセンサーが接続できることが要求条件となっています。

 

研究内容に関する問い合わせ先

新世代ワイヤレス研究センター

医療支援ICTグループ
浜口 清
Tel:046-847-5073
Fax:046-847-5431

広報 問い合わせ先

総合企画部 広報室

報道担当 廣田 幸子
Tel:042-327-6923
Fax:042-327-7587
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