動画配信など大きなデータのやり取りが一般化し、さらなる大容量通信へのニーズが増大しています。これに対し、NICTとSOCは共同で高速データ伝送用デバイスの開発を進めてきました。データ伝送とともに重要性が増しているのが、ノード技術です。光通信システムを高速道路にたとえると、伝送技術が車線数など道路自体の性能に、ノード技術が様々な行き先への交通を処理するインターチェンジの容量に相当します。システム全体の性能向上には伝送技術はもちろんのことノード技術の改善が不可欠です。NICTでは効率的なノードの実現に向け、光パケットシステムの研究を進めてきました。光パケットノードの性能を支える要素技術として光スイッチングデバイスがあげられます。光の行き先を切り替える際に要する時間を確保するためにガードタイムを設けるのが一般的です。しかし、従来のスイッチングデバイスでは、データ伝送速度の向上に伴い、データ伝送に有効に使われている時間に比べてガードタイムが大きくなる現象が生じ、ノードでのデータ処理能力の低下が顕著になるという課題を抱えていました。
独立行政法人情報通信研究機構(以下「NICT」という。理事長:宮原 秀夫)と、住友大阪セメント株式会社(以下「SOC」という。社長:渡邊 穰)は共同で高速光スイッチングデバイスの開発に成功し、10ギガビット毎秒(bit/s)高速光信号のガードタイム(切り替えのために通信不可とする時間)なしでの切り替えに成功しました。独自デバイス構造により従来に比べ100倍以上の精度向上と高速性を両立したもので、これにより、切り替えに要する時間26psを達成しました。
このたび、高速光スイッチングデバイスの研究において、新規光集積回路と制御技術により瞬間的な光の行き先切り替え(切り替え時間26ps)に成功しました。切り替え精度(消光比:希望信号と不要信号の比)従来技術比100倍、切り替え速度1000倍以上(同様の材料を用いた商用光スイッチングデバイスとの比較)が達成可能です。これにより、10Gbit/s高速信号を1bitも漏らすことなくガードタイムなしで切り替えが可能となることを実証しました。また、切り替え時の信号劣化も極めて小さく、信号エラーが発生しないことを確認しました。
なお、本実験の成果は2009年3月22日から26日まで米国サンディエゴで開催された光ファイバ通信国際会議(OFC/NFOEC 2009)において発表いたしました。
今後のネットワークの大きな需要を支える実用技術として、社会に貢献することを目指し、デバイスの小型化、低コスト化や、次世代高速伝送技術との融合など、光ネットワークシステム技術の開発を進めます。
補足資料
用語解説
データ伝送、処理の速度を表す指標。ビット(bit)は0/1でデジタル化された情報の最小単位。ギガビットは10億ビットに相当。1ギガビット毎秒(Gbit/s)は1秒に1ギガビット伝送もしくは処理する能力を意味する。
情報信号をパケット(小包)と呼ばれる小さな単位毎に宛先情報(ラベル)をつけて送信し、宛先情報に基づいてパケット毎に交換処理を行うパケット交換ネットワークにおいて、パケット信号を電気信号に変換することなく光信号のまま交換処理する技術。
参考URL https://www2.nict.go.jp/pub/whatsnew/press/h18/070109-2/070109-2.html
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伊関 雄二
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住友大阪セメント株式会社
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