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光ファイバーの熱破壊(ファイバーフューズ)の遠距離検知・阻止に世界で初めて成功

~ 情報インフラの広域破壊・ケーブル火災の防止へ期待 ~

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2009年3月25日

独立行政法人情報通信研究機構(以下「NICT」という。理事長: 宮原 秀夫)は、情報通信量の急激な増加に対し、光ファイバーの限界を超えた光パワー集中による “ファイバーフューズ”と言われる光ファイバーの破壊伝播現象の遠距離検知に世界で初めて成功しました。従来は、遠方からの検知が困難でしたが、新手法の導入で、通信インフラの広域破壊や高価な通信機器の焼損を未然に防止するための、高速遠隔検知・防護機構を低価格かつシンプルな構成で実現しました。この装置は100分の1秒以下でファイバーフューズを止め、光ファイバーの破壊をわずか数ミリ以下にとどめることが可能です。

なお、本成果については、米国San Diegoにて開催されるOptical Fiber Communication国際会議(OFC2009)において、3月26日(木)に発表を行う予定です。

背景

日本の光ファイバーブロードバンドサービスは世界一の水準に達していますが、これらのサービスを支える通信インフラ中の光ファイバーを流れる通信容量への需要も急激に増え続けており、これに対応するために、多色の光を束ねる波長多重光通信(WDM)が普及しています。ところが容量の増設に伴い光ファイバー中の光パワーが急増し、近い将来、限界に達することが重大な問題となっています。

限界に達した光ファイバーでは、微細なゴミやわずかな欠陥でコア(中芯)の温度が急激に上昇(数千℃以上)し、“ファイバーフューズ”と呼ばれるプラズマ化現象が生じて、光ファイバーを連続的に破壊します。この破壊は秒速数メートルで進むので、瞬時に対応しないと、光ファイバーや高価な通信機器が破壊され更には広域のケーブル火災につながる恐れがありました。しかし、これまで遠隔で検知する実用的な手段がありませんでした。

今回の成果

ファイバーフューズの発生時、光送信機方向に戻ってくる微小な反射光から取り出した検知信号を用いて、わずか100分の1秒以内で光送信機を停止することができ、破壊される光ファイバーを僅か数ミリまでに留める技術を開発しました。開発した技術は検出感度が高く、従来技術のようにファイバーフューズの可能性のある箇所に逐一機器を設置する代わりに、遠方からのいち早い検知・阻止を実現しています。また非常に簡便な構成で小型かつ経済性にすぐれているため光情報通信システムのみならず計測、加工用の高出力のレーザー機器などに汎用的に組み込むことが可能です。

今後の展望

今回の成功を踏まえて、製品化等の技術移転に向けて研究開発を進めると同時に、今後の情報流通量の爆発的な伸びに対処すべく、そもそもファイバーフューズの起こりにくい新型光ファイバー及びこのような光ファイバーでの高効率な光通信方式に関しての研究開発も着実に行ってまいります。

 

本件に関する 問い合わせ先

新世代ネットワーク研究センター
超高速フォトニックネットワークグループ
アベデイン カジ サルワル
Tel:042-327-6792
Fax:042-327-7035
宮崎 哲弥
Tel:042-327-6791
Fax:042-327-7035
E-mail:

広報 問い合わせ先

総合企画部 広報室 
報道担当 廣田 幸子
Tel:042-327-6923
Fax:042-327-7587
E-mail:

補足資料

TerraSAR-Xと光通信装置
図1 ファイバーフューズの伝播と破損した光ファイバー内部
図2 ファイバフューズ検知の従来技術(上)と本研究(下)