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次世代FTTHに向けた10ギガビット/秒光アクセス技術を用いた映像通信システムで高精細画質映像の双方向通信に成功

~ IEEE802.3avに準拠した映像品質性能を達成 ~

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2009年3月17日

株式会社日立製作所(以下「日立」という。執行役社長:古川 一夫)は、このたび、次世代の家庭用光ファイバ通信サービス(FTTH)向けに、現行の10倍となる10ギガビット/秒の高速通信が可能な光アクセス技術(10G-EPON:10Gigabit Ethernet Passive Optical Network)を用いた映像通信システムを試作し、高精細画質(HD:High Definition)映像の双方向通信に成功しました。現在、IEEE3802.3avにおいて10G-EPONの国際標準化が進められていますが、試作システムは、IEEE802.3avに準拠した通信距離20km、家庭用送受信器32台を接続した環境において、高信頼長距離仕様を満たすビット誤り率10-12での通信品質を実現し、双方向HD映像通信を達成しています。

なお、本成果の一部は、総務省が進める「フォトニックネットワーク技術に関する研究開発」の一環として、独立行政法人情報通信研究機構(以下「NICT」という。理事長:宮原 秀夫)から、慶應義塾大学(塾長:安西祐一郎)と共同で受託している委託研究「集積化アクティブ光アクセスシステムの研究開発」によって得られたものです。

背景

インターネットの爆発的な普及に加え、映像を利用するサービスなどの登場により、近年、一般家庭において、高速通信サービスを提供するFTTHの加入者が急速に増加しています。現行FTTHでは、通信速度1ギガビット/秒のGE-PONが利用されていますが、今後、更なるインターネット普及による加入者増大や、放送通信融合時代に向けたHD映像の配信・利用サービスなどへの対応に向け、更なる高速化が求められます。これに対し、現在、2009年9月の国際標準化に向け、現行の10倍となる10ギガビット/秒の高速通信が可能な10G-EPONの規格策定が進められており、各国が10G-EPON向け技術の開発に取り組んでいます。

成果

今回、日立は、総務省、NICTの支援を受けて、IEEE802.3avに準拠した10G-EPONを用いた映像通信システムを試作し、これを用いたHD映像の双方向通信実験に成功しました。映像通信では、通信回線上で生じる信号のビット誤り(通信エラー)が、映像再生時に画質を劣化させる要因となりますが、光通信では高速になるほど信号がノイズの影響を受けやすくなるため、通信エラーを生じる頻度が高くなります。今回試作したシステムでは、通信エラーを補償するために、デジタル信号処理部にIEEE802.3avに準拠した通信エラー訂正機能を搭載しました。試作システムを用いたHD映像の双方向通信実験の結果、IEEE802.3avで規定されている通信距離20km、32分岐の接続環境において、映像通信の高信頼長距離仕様を満たす、ビット誤り率10-12での双方向通信が行えることを確認しました。

今後の展望

今回試作した10G-EPONシステムは、FTTH向けのほか、企業内のネットワークの回線収容や、無線ネットワークにおける基地局集線部などへの適用も見込まれます。また、本技術は、光スイッチを用いたアクセスネットワーク(集積化アクティブ光アクセスシステム)にも利用することが可能であり、セキュリティレベルの高いアクセスネットワークの実現を可能にします。

なお、この光アクセスシステムの技術詳細は、平成21年3月17日(火)から愛媛県の松山市で開催される「電子情報通信学会総合大会」において発表いたします。

用語解説

FTTH

Fiber To The Homeの略で、光ファイバを用いた家庭向けの通信サービスの総称。

10G-EPON

光ファイバを使用してギガビット(Gbit/s)の伝送速度を実現する国際標準の光アクセス通信ネットワーク。局側から到来する光信号を複数のユーザに分岐するために光スプリッタ(光分岐装置)を用いる。

IEEE

Institute of Electrical and Electronics Engineersの略で、アメリカ合衆国に本部をもつ電気・電子学会である。

集積化アクティブ光アクセスシステム

局側から到来する光信号を、光スイッチを用いて複数ユーザに向けて分岐するシステムで、通信セキュリティを向上させた光アクセス通信ネットワーク実現が可能となる。

 

本件に関する お問い合わせ先

 

株式会社 日立製作所 中央研究所
企画室 [担当:木下 登美子]
Tel:042-327-7777

広報関係 お問い合わせ先

  

株式会社 日立製作所
コーポレート・コミュニケーション本部
広報部 [担当:嶋田 功一]
Tel : 03-5208-9323

独立行政法人 情報通信研究機構 
総合企画部 広報室 
[担当:廣田 幸子]
Tel : 042-327-6923

補足資料

【開発技術の詳細】
1. 10G-EPONを用いたHD映像通信システムを開発
HD映像を配信する映像配信サーバ、映像受信端末と10G-EPONシステムを組み合わせた、HD映像通信システムを開発しました。本システムの10G-EPON部分はイーサネットインターフェースを保持し、IP(Internet Protocol)通信にて、サーバ及び端末を接続可能です。本プロトタイプとHD映像配信サーバ及び端末を組み合わせるHD映像通信システムにより、上り下り双方向でHD映像通信を実現しました。
 
2. IEEE802.3av準拠デジタル信号処理技術を開発
デジタル信号処理機能として、IEEE802.3av準拠の誤り訂正機能FEC(Forward Error Correction*)を業界で初めて搭載しました。これにより信号の誤りを検出し、訂正することができるため、高信頼長距離仕様(PR30)を満たすことに成功しました。

* Forward Error Correction:送信データに誤り訂正用の冗長データを付与して送付することで、送信側に問い合わせることなく、受信側が単独で誤り訂正を行う方式。 
 
3. 通信距離の異なるユーザを効率的に収容可能とする光受信技術の開発
PONを利用した光アクセスネットワークでは、局側が複数のユーザと通信を行いますが、その通信距離によって、局側で受信する光信号の強度が異なります。今回、遠距離ユーザからの光信号を受信可能な高感度受信素子を開発しました。さらに、この高感度受信素子は、近距離ユーザからの強度の高い光信号も受信することが可能です。これにより、距離の異なるユーザからの光信号が順次混在して送信された際においても、局側のシステムで安定的に受信することを可能とし、IEEE802.3avで規定されている高信頼長距離仕様(PR30)の送受信規定を満たしています。

10G-EPONを用いた映像通信システムの開発