インターネットの爆発的な普及に加え、映像を利用するサービスなどの登場により、近年、一般家庭において、高速通信サービスを提供するFTTHの加入者が急速に増加しています。現行FTTHでは、通信速度1ギガビット/秒のGE-PONが利用されていますが、今後、更なるインターネット普及による加入者増大や、放送通信融合時代に向けたHD映像の配信・利用サービスなどへの対応に向け、更なる高速化が求められます。これに対し、現在、2009年9月の国際標準化に向け、現行の10倍となる10ギガビット/秒の高速通信が可能な10G-EPONの規格策定が進められており、各国が10G-EPON向け技術の開発に取り組んでいます。
株式会社日立製作所(以下「日立」という。執行役社長:古川 一夫)は、このたび、次世代の家庭用光ファイバ通信サービス(FTTH)向けに、現行の10倍となる10ギガビット/秒の高速通信が可能な光アクセス技術(10G-EPON:10Gigabit Ethernet Passive Optical Network)を用いた映像通信システムを試作し、高精細画質(HD:High Definition)映像の双方向通信に成功しました。現在、IEEE3802.3avにおいて10G-EPONの国際標準化が進められていますが、試作システムは、IEEE802.3avに準拠した通信距離20km、家庭用送受信器32台を接続した環境において、高信頼長距離仕様を満たすビット誤り率10-12での通信品質を実現し、双方向HD映像通信を達成しています。
なお、本成果の一部は、総務省が進める「フォトニックネットワーク技術に関する研究開発」の一環として、独立行政法人情報通信研究機構(以下「NICT」という。理事長:宮原 秀夫)から、慶應義塾大学(塾長:安西祐一郎)と共同で受託している委託研究「集積化アクティブ光アクセスシステムの研究開発」によって得られたものです。
今回、日立は、総務省、NICTの支援を受けて、IEEE802.3avに準拠した10G-EPONを用いた映像通信システムを試作し、これを用いたHD映像の双方向通信実験に成功しました。映像通信では、通信回線上で生じる信号のビット誤り(通信エラー)が、映像再生時に画質を劣化させる要因となりますが、光通信では高速になるほど信号がノイズの影響を受けやすくなるため、通信エラーを生じる頻度が高くなります。今回試作したシステムでは、通信エラーを補償するために、デジタル信号処理部にIEEE802.3avに準拠した通信エラー訂正機能を搭載しました。試作システムを用いたHD映像の双方向通信実験の結果、IEEE802.3avで規定されている通信距離20km、32分岐の接続環境において、映像通信の高信頼長距離仕様を満たす、ビット誤り率10-12での双方向通信が行えることを確認しました。
今回試作した10G-EPONシステムは、FTTH向けのほか、企業内のネットワークの回線収容や、無線ネットワークにおける基地局集線部などへの適用も見込まれます。また、本技術は、光スイッチを用いたアクセスネットワーク(集積化アクティブ光アクセスシステム)にも利用することが可能であり、セキュリティレベルの高いアクセスネットワークの実現を可能にします。
なお、この光アクセスシステムの技術詳細は、平成21年3月17日(火)から愛媛県の松山市で開催される「電子情報通信学会総合大会」において発表いたします。
用語解説
光ファイバを使用してギガビット(Gbit/s)の伝送速度を実現する国際標準の光アクセス通信ネットワーク。局側から到来する光信号を複数のユーザに分岐するために光スプリッタ(光分岐装置)を用いる。
本件に関する お問い合わせ先
株式会社 日立製作所 中央研究所
企画室 [担当:木下 登美子]
Tel:042-327-7777
広報関係 お問い合わせ先
株式会社 日立製作所
コーポレート・コミュニケーション本部
広報部 [担当:嶋田 功一]
Tel : 03-5208-9323
独立行政法人 情報通信研究機構
総合企画部 広報室
[担当:廣田 幸子]
Tel : 042-327-6923
補足資料
1. 10G-EPONを用いたHD映像通信システムを開発
* Forward Error Correction:送信データに誤り訂正用の冗長データを付与して送付することで、送信側に問い合わせることなく、受信側が単独で誤り訂正を行う方式。