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IEEE 1900.4標準仕様の策定が完了

~ 世界初のコグニティブワイヤレスネットワークに向けた基礎アーキテクチャ ~

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2009年2月26日

独立行政法人情報通信研究機構(以下「NICT」という。理事長:宮原 秀夫)は、コグニティブワイヤレスネットワークの基本アーキテクチャに関する世界初の仕様策定を行うIEEE P1900.4ワーキンググループ(以下「P1900.4」という。)において2年間にわたり活動を行い、その仕様策定を完了しました。本仕様は、周波数を高度に利用する無線システムを定義していく上で欠かせない、コグニティブ無線技術に基づいた基礎アーキテクチャになるとともに、NICTが中心に検討を進めている新世代ネットワークアーキテクチャにおいても、無線を扱うための基本技術として期待されています。

背景

現在の逼迫した電波利用状況の中、より高速・大容量で高品質な無線通信を可能とするために、電波資源をより有効かつ効率的に活用することが求められています。P1900.4では、異種無線アクセスネットワークにおいて、周波数の効率的な利用によるシステム全体の通信容量の拡大と、その通信品質を向上させるためのアーキテクチャを検討してきました。

今回の成果

NICTは、2007年2月のIEEE P1900.4ワーキンググループ発足当時から同ワーキンググループに参加し、1年9ヶ月間(2007年2月~2008年11月)に合計163件の寄書(提案)を行い、議論を主導してきました。これは、全体の寄書数のおよそ半数に及びます。IEEE 1900.4標準仕様の策定により、電波資源のより高度な利用が実現でき、移動通信の帯域・品質・安定性の向上を期待できます。また、NICTは、P1900.4の上位団体であるSCC 41(Standards Coordinating Committee 41)及びP1900.4の副議長とP1900.4のテクニカルエディタの役職を担い、標準化文書の作成にあたって中心的役割を果たしました。さらに、2008年2月に大阪、同年7月に東京において会議をサポートし、日本の企業や大学が標準化会議に参加しやすい環境を提供しました。

今後の展望

本仕様は、NICTが中心に検討を進めている新世代ネットワークアーキテクチャにおいて、無線を扱うための基本技術として利用されることが見込まれます。また、今回策定された仕様を土台に、1900.4.1あるいは1900.4aなどのさらなる標準仕様の策定が行われていくものと期待されています。



補足資料

P1900.4の背景と標準化の必要性

現在の逼迫した電波利用状況の中、より高速・大容量で高品質な無線通信を可能とするために、電波資源をより有効かつ効率的に活用することが求められています。その実現のために、商用化をにらんだコグニティブ無線技術の研究開発が世界的に進められています。また、NICTが研究・開発を進めている新世代ネットワークアーキテクチャにおいても、無線リソースの管理・有効利用の手法の検討がすすめられています。

本技術によって周波数利用効率を高めるためには、標準仕様と標準インターフェイスが定められ、複数の無線システムが協調動作できる環境を整える必要があります。このような観点から、NICTは日本における情報通信に関する唯一の公的研究機関として、企業による本技術の実用・商用化を促進するべく、標準化の策定に取り組んでまいりました。

P1900.4では、異種無線アクセスネットワークにおいて、周波数の効率的な利用によるシステム全体の通信容量の拡大と、その通信品質を向上させるためのアーキテクチャを検討してきました。P1900.4には、米国・欧州・アジアのハードウェアやソフトウェアの機器製造会社、携帯電話事業者、大学、公的研究機関など、(最終ドラフト承認時点で)23機関が集結し、コグニティブワイヤレスネットワークの基本アーキテクチャ標準仕様を策定するべく、それぞれの観点から議論を行ってきました。

IEEE 1900.4仕様の基本アーキテクチャ

本仕様で定義されている基本アーキテクチャを図に示します。大きく分類して、コアネットワーク、無線アクセスネットワーク、端末、の3つの部分から構成されます。本仕様では、コアネットワーク部分にOSMとNRM、無線アクセスネットワーク部分にRRCとRMC、端末部分にTRMとTRC、及びTMCを定義し、それらの機能とインターフェイスを定義しています。

IEEE 1900.4仕様の基本アーキテクチャ
NICTの成果

NICTは、2007年2月の発足当時からP1900.4に参加し、合計150件以上の寄書の提出をして、議論を主導しました。NICTが提出した寄書の数は、P1900.4で提出された全寄書のおよそ半数に及びます。NICTの寄書は、2000年頃より進めてきた異種無線間シームレスハンドオーバ技術「MIRAI」やソフトウェア無線プラットフォーム技術などの研究成果と、2006年頃より進めてきた「コグニティブ無線クラウド」技術の研究成果を融合・発展させて実現したものです。P1900.4標準仕様の策定により、電波資源のより高度な利用が実現でき、移動通信の帯域・品質・安定性の向上を期待できます。

NICTは、提案・議論を行うのみではなく、本標準化グループの運営にも大きく貢献しました。上位団体であるSCC 41及びP1900.4の副議長とP1900.4のテクニカルエディタの役職(いずれも2008年より)を担い、標準化文書の作成にあたって中心的役割を果たしました。また、2008年2月には大阪 (株式会社KDDI研究所と共同)、同年7月には東京 (東京理科大学と共同)において会議をサポートし、日本の企業や大学が標準化会議に参加しやすい環境を提供しました。

P1900.4の今後の展開

策定された1900.4仕様を土台として、さらなる技術検討と仕様策定が行われていくものと期待されています。現在、今回策定された標準仕様をもとに、1900.4アーキテクチャに基づいたインターフェイスとプロトコルを議論するP1900.4.1と、本仕様の周波数共用型コグニティブワイヤレスネットワークへの拡張を議論するP1900.4aの、2つのワーキンググループの設立が提案されています。また、新世代ネットワークアーキテクチャにおいても、無線リソースの管理・有効利用の手法としての利用が期待されています。

用語解説

コグニティブワイヤレスネットワーク

コグニティブワイヤレスネットワークは、コグニティブ無線技術*3を適用した無線アクセスネットワークであり、認識された利用可能な無線システムの中から、混雑が小さい、などの電波利用状況に適した無線アクセスおよびネットワーク経路を選択する機能を持っています。コグニティブワイヤレスネットワークには、図に示すような「ヘテロジニアス型コグニティブ無線技術」と「周波数共用型コグニティブ無線技術」に基づいた2つのアプローチが考えられています。

IEEE P1900.4ワーキンググループ

IEEE(Institute of Electrical and Electronic Engineers)は、米国の電気・電子分野における学会です。当該分野の国際会議の主催や論文誌の発行、技術標準の策定などを行っています。SCC41(Standards Coordinating Committee 41)は、ダイナミックスペクトラムアクセスネットワークを実現するために必要となる要素技術の標準仕様を策定することを目的に、IEEE の下に作られた標準化委員会です。なお、設立当初はP1900と呼ばれていましたが、SCC41として組織が再編成され、現在に至っています。P1900.4ワーキンググループはSCC41のワーキンググループの一つであり、複数の無線アクセス技術が存在する環境において、無線システム全体の収容能力とサービス品質を向上させることを目的として、2007年2月に発足した組織です。SCC41には、他に用語の定義を策定するP1900.1、干渉の定義や無線の共存方式を策定するP1900.2、無線センシングのインターフェイスを策定するP1900.6などのワーキンググループがあります。

コグニティブ無線技術

コグニティブ無線技術とは、無線機が周囲の電波環境を認識し、その状況に応じて、他のシステムに干渉を与えることなく、周波数帯域、タイムスロット等の無線リソースを適宜利用することにより、利用者が所望の通信容量を所望の通信品質で周波数の有効利用を図りつつ伝送を行う無線通信技術です。

異種無線アクセスネットワーク

複数の異なる無線システム(例えば、第3世代携帯電話と無線LAN)を組み合わせて使うことを想定したネットワークのことです。各無線システムは、それぞれ有利な点が異なる(例えば、移動通信に強い、伝送速度が速い、消費電力が小さい等)ので、状況に応じて適切なものに切り替えたり、複数組み合わせて使うことが想定されています。システム間の切り替えのためには、シームレスハンドオーバ技術や異種無線間ハンドオーバ技術などが検討されています。



本件に関する 問い合わせ先

 

新世代ワイヤレス研究センター
ユビキタスモバイルグループ
原田 博司、石津 健太郎
Tel:046-847-5098
Fax:046-847-5110
E-mail:

広報 問い合わせ先

  

総合企画部 広報室
報道担当 廣田 幸子
Tel:042-327-6923
Fax:042-327-7587
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