高度通信・放送研究開発委託研究に係る令和4年度新規委託研究の公募(第1回、第2回)の結果

2022年10月12日


国立研究開発法人情報通信研究機構

国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、理事長: 徳田 英幸)は、高度通信・放送研究開発委託研究として令和4年度から新たに研究開発を開始する2課題について、学識経験者で構成される評価委員会での評価等を踏まえ、下記のとおり採択しました。

1. 研究開発課題に対する提案課題と提案者

(1) データ利活用等のデジタル化の推進による社会課題・地域課題解決のための実証型研究開発(課題番号226)(10件を採択)
■提案課題:地域コミュニティのスーパーキャンパス化を支える柔軟なモビリティシェアシステムの開発とその利便性・公平性の実証評価
提案者:国立大学法人奈良先端科学技術大学院大学 (代表提案者)
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概要:地域コミュニティ内に点在する大学や企業等の「知とモノづくりの拠点(地域活性化の原動力となる拠点)」間の移動に、高い柔軟性と自由度をもたらすコミュニティ型モビリティシェアシステムを開発する。当該システムは、定時運行の路線バス等ではカバーしきれないモビリティニーズに応えるものであり、ニューノーマル時代の新しいコミュニティのあり方(スーパーキャンパス)を支え地域課題の解決に向けたインフラの一つとなる。具体的には、申請者らが開発してきたモビリティオークション形式のカーシェアシステムを複数拠点に展開、連結し、利用者の利便性だけでなく、シェアリングにおける公平性の観点でも実証評価を行う。

■提案課題:街の未来を共視する ~住民・自治体・事業者のトリプレット共創型デジタルツイン~
提案者:国立大学法人大阪大学 (代表提案者)、株式会社HULIX
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概要:新たな移動手段の導入により変革する街の未來を予測し可視化するプラットフォームと必要技術を開発する。人々のスマートフォンやインフラ型センサから得られる行動とその意図のデータから、そのデータを用いた移動手段の導入効果と行動変化の予測技術を、最新の機械学習を用いて実現する。予測結果を3次元仮想空間に投影し、街の未来を体感できるデジタルツインプラットフォームを実現する。脱炭素型電動モビリティ導入の効果実証を実施し、地域の自治体・住民・事業者が魅力ある街づくりに向けて「トリプレット共創する」取組みに挑戦する。

■提案課題:画像解析による種鶏・原種鶏の初生雛雌雄選別の実証型研究
提案者:有限会社電マーク (代表提案者)、熊本県農業研究センター、国立大学法人広島大学、歯っぴー株式会社
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概要:種鶏の初生段階で、雌雄を判定する肛門鑑別をAIシステムに置き換え、精度と実効性を検証する。総務省「異能vation破壊的挑戦部門」において異なる研究に選出された2名と、肛門鑑別AIのPoCを実現した熊本県農業研究センター、日本鶏研究を行う大学施設として国内最大の広島大学生物生産学部が共同研究に参画する。

■提案課題:想定外災害発生時に必要な即興的対応能力創発型教育訓練シナリオの検討及び実証試験の実施
提案者:国立大学法人香川大学 (代表提案者)、国立大学法人徳島大学
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概要:小中学校をはじめとする教育機関を対象とし、大規模自然災害から児童生徒の命を守るために不可欠な「即興的対応能力」を教育訓練するシナリオの検討および実証試験を実施する。多様な想定外の事態ごとに必要な対応能力は異なり、また即興性が求められるため、学校現場で実施してきた従来のシナリオ型訓練ではこの能力を教育訓練することは難しかった。ここではVR技術を用いて多様な想定外の事態を再現し既存の避難訓練システムに組込み、訓練を通して教職員個々人や学校組織の自律的行動が自発的秩序形成(自己組織化)する創発過程を見える化し、個々人や個別組織の単独訓練では困難な「即興的対応能力」の獲得を目指す。

■提案課題:データ・サステナビリティのための実世界データ醸造基盤
提案者:国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学 (代表提案者)、株式会社ExData、特定非営利活動法人位置情報サービス研究機構
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概要:大量の実世界データが収集可能になり、データ爆発と呼ばれて久しいが、大規模データを持続的に活用し続ける方策が十分でない。実際、組織によっては数カ月から数年で貴重なデータを処分せざるを得ない状況が生じている。本研究では、持続的にデータを利活用する「データ・サステナビリティ」を実現するために「醸造」のメタファを導入し、ワインを貯蔵・熟成させるように、仕分け・発酵・濾過・貯蔵・熟成といった継続的・長期的な実世界データ処理プロセスを実装し、データを実社会で持続的に活用する「実世界データ醸造基盤」を構築する。また、実証実験を通じて、この基盤が地域社会に活用できることを検証する。

■提案課題:地域防災のための多地点微小気圧変動計測パッケージの標準化と都市近郊・中山間部における市民協力型実証実験
提案者:高知県公立大学法人高知工科大学 (代表提案者)、国立研究開発法人産業技術総合研究所、国立大学法人九州大学、学校法人電子開発学園
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概要:本課題で活用する微小気圧変動計測は、極端気象や災害の検知に有効である。地域防災情報として活用可能な稠密気圧変動観測について、多数の簡易圧力計により圧力変動を面的に計測するため標準化技術を適用した市民協力型計測パッケージを開発する。既存計測網を活かし、新設する市民協力型クラウド計測網との連携処理技術を開発し、高空間分解能での微小気圧変動観測の基盤技術を確立する。都市近郊・中山間部それぞれのモデル地域にて実証実験を行い、連携処理により人口密集域において最大1点/km2程度の高空間分解能での防災情報把握を達成する。課題終了後も本システムを継続運用できるビジネスプランを策定し、近い将来の全国配備を目指す。

■提案課題:ブルーカーボン貯留量の自動計測システムの開発による漁村の脱炭素・収益向上に向けた取り組み
提案者:独立行政法人国立高等専門学校機構 鳥羽商船高等専門学校 (代表提案者)、国立大学法人三重大学、三重県水産研究所、鳥羽市、KDDI株式会社、株式会社KDDI総合研究所
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概要:日本においてもGX(Green Transformation)担当相が設置されるなど、脱炭素社会に向けた取り組みが加速している。そこで、ブルーカーボンの貯留量を自動計測するために、水中カメラを漁船に取り付け、位置情報と合わせてクラウドに集約することで、日常的に藻類の繁茂位置を記録し、種類、体積を自動的に算出する仕組みを構築する。従来から漁村が取り組んできた藻類の保全・育成・養殖の成果を見える化することで、漁獲量の向上につなげることはもちろん、今後はネガティブエミッションとして漁業関係者にも認知してもらうことが重要である。Jブルークレジットなど漁業収入以外を獲得する素地を構築し、都市部の企業との連携を生み出し、これらをきっかけに漁村の創生につなげていく。

■提案課題:誰でも利用できる非接触WEB体力・脳力測定システム開発による自治体と連携した健康事業参加者のすそ野拡大
提案者:学校法人関西医科大学 (代表研究者)、コガソフトウェア株式会社
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概要:我が国の多くの地方自治体では少子高齢化により増え続ける医療費、介護給付費を適正化するために様々な健康事業を行っているが、参加者の多くはすでに健康に関心が高い層で固定化されており、医療費、介護給付費を適正化するために参加させたい健康無関心層が参加していない。そこで、WEBでの登録要件を極力簡易にし、誰でも利用できる体力・脳力測定プログラムを開発し、体力・脳力の実力を本人にフィードバックすることで、健康事業への関心を高め参加者のすそ野拡大を目指す。 まずは、阪南市と連携し、阪南市の成人への体力・脳力測定プロジェクトを実施し、普及拡大を図る。

■提案課題:地域農業従事者の業務をスマート化し収益性を高める農業DXのための農業支援AIの研究開発
提案者:スタンシステム株式会社(代表提案者)、徳島県立農林水産総合技術支援センター
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概要:農業圃場に設置したIoTデバイスから栽培環境や成育データを地域自立型無線通信基盤(LoRaWAN)を使い効率的にデータを自動収集する。圃場から自動収集されるビックデータを本研究で開発する深層学習継続型農業支援AIが水門自動開閉機や自動飛行ドローンを制御し、栽培作業を自動化最適化し農業プロセスをトランスフォーメーションする。このDX農業は、農業をスマートで新しい価値を生み出す産業に変える。農業ビジネスへの参入障壁をなくすとともに農業の大型化、高付加価値作物の自動栽培、ソーラーシェアリング農業も支援する。研究開発期間中に徳島県内11か所の実圃場においてDXを実現させ効果を検証するとともに社会実装する。

■提案課題:細粒度ごみ排出量データを活用した地域ごみ管理・収集・減量のデジタル推進基盤「ごみゼロ湘南」の研究開発
提案者:学校法人慶應義塾 (代表提案者)、学校法人廣池学園 麗澤大学
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概要:ごみ管理・収集・減量のデジタル化を推進するため、知能IoTとリアルタイムエッジ処理技術を融合したごみ収集動画からごみ排出量をセンシングする技術を実用化し、数十台清掃車をIoT化した日本初の小地域別(細粒度)ごみ排出量センシング基盤を構築する。ごみ排出量データに加え、地域・社会・環境の異分野データと連携したごみ排出量解析基盤を開発し、ごみ排出量の推定と見える化を生かしたごみ排出行政管理、ごみ収集及びごみ減量デジタル化に資するサービスを創出する。湘南地区の市職員・収集業者・住民が携わる実証実験の実施により有効性を検証する。

(2) 持続性の高い行動支援のための次世代IoTデータ利活用技術の研究開発(課題番号227)(1件を採択)
■提案課題:次世代マルチモーダルIoTデータによる行動ナビゲーションを想定した、事象変化に即応可能な時空間行動リスク予測・最適化技術の研究開発
提案者:株式会社KDDI総合研究所(代表提案者)
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概要:頻発化、激甚化する近年の風水害の状況等を踏まえ、環境急変や大規模な事故、イベントなどの異常事象にも即応可能な行動ナビゲーションサービス実現のための要素技術の確立と社会実装に向けた課題を明確にする。具体的には、Beyond 5G/6G時代を想定した数ミリ秒オーダーの次世代マルチモーダルIoTデータストリームを疑似生成し、それらを各エッジ環境で準リアルタイムに処理しながら混雑度などの時空間行動リスク予測を行い、予測結果を交換し協調しながら全体のリスク低減を図りつつ個々の状況に応じたリスク回避も可能にする行動ナビゲーション実現のための要素技術を開発する。複数事象の実証実験により、既存方式に比べて10%以上のリスク予測精度向上およびリスク低減を目指す。

2. 公募等の概要

上記の課題226については、令和4年6月3日(金)から同年8月2日(火)まで、課題227については、令和4年7月22日(金)から同年8月22日(月)まで公募を行いました。
公募の詳細は、以下のWebサイトをご参照ください。

本件に関する問い合わせ先

イノベーション推進部門 委託研究推進室

中後 明、近藤 健、遠田 麻衣子

Tel: 042-327-6011