「Beyond 5G研究開発促進事業(一般型)」に係る令和4年度新規委託研究の公募(第1回)の結果

2022年8月5日


国立研究開発法人情報通信研究機構

国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、理事長: 徳田 英幸)は、Beyond 5G研究開発促進事業(一般型)のうち、令和4年度新規委託研究の公募(第1回)における「Beyond 5G機能実現型プログラムのうち一般課題」、「Beyond 5G国際共同研究型プログラム」及び「Beyond 5Gシーズ創出型プログラム」について、下記のとおり採択しました。
 

1. 提案研究開発課題及び提案者

(ア)Beyond 5G機能実現型プログラムのうち一般課題

(1)サイバーフィジカルインフラに向けた高信頼シームレスアクセスネットワークに関する研究開発※1
提案者:三菱電機株式会社(代表提案者)、学校法人早稲田大学、学校法人立命館、国立大学法人名古屋工業大学、一般財団法人電力中央研究所、公益財団法人鉄道総合技術研究所
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概要:従来の伝送メディアでは困難であった山間部・海上や高速移動体における大量データ伝送をあらゆる環境で確保し、鉄道や電力などの重要インフラの健全性・安全性維持、脱炭素社会の実現に必要な情報をサイバー空間上で活用するサイバーフィジカルインフラ実現を目指す。ボトルネックとなっている高速無線伝送およびアクセスネットワーク技術の研究開発を実施する。重要インフラでは定期的な保守(TBM)から、連続的かつ詳細な情報収集を活用した状態基準保守(CBM)による効率的かつ確実な運用の必要性が指摘されている。CBMは少子高齢化時代の社会システム維持および、人口希薄地域を含む国土全体において安心安全を確保するための手段としても有用である。

(2)エラーフリーPOFによる革新的通信システムの開発※1
提案者:学校法人慶應義塾(代表提案者)
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概要:Beyond 5G時代において大容量、省電力、低遅延のデータ通信を実現する革新的エラーフリーPOF(プラスチック光ファイバー)伝送システムを開発する。Beyond 5G時代では大容量かつ高品質なデータ伝送が当たり前に求められるが、通信の高速化に伴いデータを誤りなく伝送することが困難になる。伝送エラーを補正するためにはFEC(Forward Error Correction)に代表される誤り訂正処理が必要になるが、この信号処理のために通信遅延や消費電力が増加することが問題となる。今回提案するエラーフリーPOFは高速通信における誤り訂正処理を不要とするものであり、通信システムの省電力化、低遅延化に大きく貢献できる。

(3)日米豪国際連携を通じた超カバレッジBeyond 5G無線通信・映像符号化標準化技術の研究開発
提案者:シャープ株式会社(代表提案者)、国立大学法人京都大学、学校法人早稲田大学、大分朝日放送株式会社
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概要:Beyond 5Gシステムの要求条件の1つである超カバレッジの実現に向けて超カバレッジ無線伝送で必要とされる伝送距離の長い無線通信技術および高圧縮の映像符号化技術の研究開発と国際標準提案・知財の獲得を日米産学機関と連携して行う。これにより高精細映像の狭帯域無線伝送つまり、超カバレッジ映像伝送を実現し、活用シーンが一気に広がることを示す。さらに超カバレッジ映像伝送用無線システムの構築を行い、Beyond 5G時代において比較的低い周波数が十分に活用可能であることを示し、日本の放送局を含む日豪産官学機関との連携を通じて本研究開発成果が幅広く活用可能であることを示す。

(4)デジタルツインによるサイバー・フィジカル連携型セキュリティ基盤※1
提案者:株式会社KDDI総合研究所(代表提案者)、国立大学法人横浜国立大学、学校法人早稲田大学、学校法人芝浦工業大学
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概要:サイバー空間とフィジカル空間がBeyond 5Gにより高度に融合した社会におけるセキュリティ確保を目的とし、サイバー空間での観測技術に加え、不正回路検知などのフィジカル空間観点での検査・観測技術も高度化するための研究開発を進め、得られた情報を集約してセキュリティ対策を目的としたデジタルツインを生成し、サイバー・フィジカルシステム全体での自律的なセキュリティ確保を実現する技術を研究開発する。Beyond 5Gアプリケーションによる実証を通じて技術を確立し、IoTやサイバー・フィジカルシステムを収容するBeyond 5Gネットワークスライスへの適用を想定したセキュリティ対策基盤を構築する。

(5)高精度時刻同期に基づく超低遅延デジタルツイン処理基盤の研究開発※1
提案者:日本電気株式会社(代表提案者)、株式会社スペクトラ
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概要:有線/無線ネットワークを介して離れて分散配置されたノードクロック間の時刻同期をロバストに維持する分散時刻同期基盤、及びそれに基づく時刻同期した通信システムの研究開発を行う。各ノードは、高精度な小型原子時計(CSAC)と、高分解時刻計測/補正装置を備え、隣接ノードとのクロック時刻差をサブns精度で計測することで、ノード間の時刻同期を行う。さらに、このノード間時刻同期ネットワークを通信システム基盤として、送信すべきパケットの優先度や粒度をリアルタイムで最適制御することで、Society 5.0を実現する上で必要となる、超低遅延なBeyond 5G通信や精緻な産業機器制御を可能とする。

(6)ShonanFutureVerse:仮想都市未来像にもとづく超解像度バックキャスティングCPS基盤※1
提案者:東日本電信電話株式会社(代表提案者)、学校法人慶應義塾、国立大学法人京都大学、国立大学法人東京大学、株式会社アイ・トランスポート・ラボ、カディンチェ株式会社、株式会社ゼンリンデータコム
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概要:都市のサステイナブルかつレジリエントな発展の「未来像」に着目し、多様な人々が仮想空間内に作成/編集/共有する「未来像」を起点としてバックキャスト指向で動作する未来都市情報基盤を構築し、特に環境と防災の面で神奈川県南部湘南地域において広域実証を行う。都市Cyber Physicalシステムのオーケストレーションによって、Beyond 5Gネットワークを有効に活用してCyberとPhysicalを連携させるとともに異種システム間を協調的に動作させ、人の行動変容に資する超解像度情報をリアルタイムかつ適応的に生成、配信、提示する基盤技術を創出する。

(イ)Beyond 5G国際共同研究型プログラム

(1)低遅延・自律性を実現するフローティングサイバーフィジカルシステムと広域連携の研究開発※2
提案者:国立大学法人九州工業大学(代表提案者)、株式会社KDDI総合研究所
米国側共同研究者:ニューヨーク市立大学シティ校
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概要:クラウドネイティブ技術を現実世界の物理位置としてユーザに最も近い通信・計算能力を有するデバイスエッジを含む様々なレベルで活用し、時空間の情報とそれを処理する機能を特定の地域に滞留させることで、低遅延と自律性のためのフローティングサイバーフィジカルシステム(F-CPS:Floating Cyber Physical System)を実現する。また、F-CPSの広域連携を実現するため、階層的なエッジネットワークとプログラマブルネットワークを構築する。日米の両Beyond 5Gテストベッドを活用した実証実験を通して、低遅延と自律性を有したBeyond 5G/6G時代のCPSを実現し、Society 5.0実現へ向けたバーチャル空間と物理空間の緊密な連携・融合が実現できることを検証する。

(2)City as a Serviceを支えるデジタルツインを持続可能な状態で自己成長させるエコシステム※2
提案者:学校法人早稲田大学(代表提案者)、学校法人芝浦工業大学、学校法人片柳学園東京工科大学、株式会社ガイアックス、学校法人福岡大学
欧州側共同研究者:イタリア Dipartimento di Ingegneria Elettronica、Universit à degli Studidi ROMA "Tor Vergata"
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概要:Beyond 5Gを活用した様々なCity as a Serviceを生み出すために、実世界を写し取るデジタルツインを、持続可能な状態で自己成長させるエコシステムの実現を目指す。自己成長するデジタルツインを構築する技術として、複雑な設定の必要なく、デバイスの接続を可能とするゼロタッチなネットワーク形成手法を考案する。さらに、データの信頼性保証技術として、データが持つ品質や危険性を推定する手法に加え、ブロックチェーンによってデータの自浄作用を促す技術を確立する。これらを具備するエコシステムの構築およびフィールド実証を通して、各要素技術の拡張性、自律性、信頼性を確立するとともに、国際標準化や実用化への展開を目指す。

(ウ)Beyond 5Gシーズ創出型プログラム

(1)上空プラットフォームにおけるCPSを活用した動的エリア最適化技術※1
提案者:ソフトバンク株式会社(代表提案者)、学校法人慶應義塾
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概要:デジタル技術を活用してあらゆる産業を変革し、人々の生活をより便利で豊かなものにすることを目指すデジタル・トランスフォーメーション(DX)が注目を集めている。DXの実現に向けてはインターネットへの接続が不可欠であり、上空のプラットフォームから広域のエリアカバーを実現する非地上系ネットワーク(NTN)への期待が高まっている。本研究開発では、飛行する上空プラットフォームから安定したエリアの形成を実現するフットプリント固定技術、サイバーフィジカルシステム(CPS)等の活用により通信容量の増大を実現するビーム最適化制御技術、ヌルフォーミング制御により上空プラットフォームの柔軟な展開を実現する干渉調整技術の確立を目指す。

(2)リアルタイム暗号技術とプライバシー保護への拡張※1,※3
提案者:兵庫県公立大学法人兵庫県立大学(代表提案者)、GMOサイバーセキュリティ byイエラエ株式会社
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概要:センシング機器向けの「リアルタイム暗号化技術」の開発を行う。具体的には、量子計算機による攻撃にも耐性のあるサブナノ級超低遅延暗号を開発する。この技術をセンシング機器に組み込みことで、フィジカル空間で取得したセンシングデータを、超低遅延でサイバー空間に転送可能となり、サイバー空間とフィジカル空間で安全でかつシームレスなデータ連携が可能となる。さらに暗号化したままで統計処理や機械学習が可能な秘密計算等とのハイブリッド利用可能な技術に拡張することで、超多数接続においてもプライバシー保護を可能とする。同時に「標準化」と「知財化」を戦略的に進め、2030年までにBeyond 5Gにおけるサービスの高度化に寄与する。

(3)単原子長ゲートによる低環境負荷物質から成る高出力THz帯増幅器の創出
提案者:国立大学法人東北大学(代表提案者)、国立研究開発法人産業技術総合研究所、国立大学法人東京大学、国立大学法人筑波大学、国立大学法人広島大学
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概要:テラヘルツ(THz)帯で動作するトランジスタの多くは、希少・有害な物質により構成され、かつ、バンドギャップが小さいため高出力化が困難だった。本研究開発では、提案者らの保有技術を基にして「単原子長のゲート作製技術」と「バンドギャップの大きな二次元半導体(厚さ<1nm)の位置選択的三次元成長技術」を創出して組み合わせることで、低環境負荷物質から成るTHz帯トランジスタを創出する。このトランジスタは、既存のTHz帯トランジスタよりも「一桁以上高出力」で、5Gよりも「二桁以上速い情報伝送」「一桁以上の低消費電力化」を可能とする。本研究開発は、SDGsと合致する「低環境負荷Beyond 5G」の嚆矢となる。

(4)Beyond 5Gに向けた高速ビームステアリング技術の研究開発
提案者:学校法人立命館(代表提案者)、学校法人湘南工科大学、学校法人早稲田大学
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概要:Beyond 5Gに向けて、時分割多元接続MIMOや高速移動体との高速ビームトラッキングなどの革新的な上位機能を実現するために、1シンボル以下での高速ビームステアリングを実現するチャレンジングで革新的な要素技術の研究開発を行う。具体的には、1シンボル以下で高速に位相を制御できる高速切換移相器回路技術、1シンボル以下で高速にビーム方向を制御できる高速切換フェーズドアレー技術、Beyond 5Gシステムにおける高速切換フェーズドアレーの適用技術に取り組む。以上により、これまで実現できなかった1シンボル以下で任意の方向に高速ビームステアリング可能な技術を確立する。

(5)サイバネティック・フロントエンドを無線化する追従型テラヘルツリンクの研究開発※1,※3
提案者:国立大学法人東京大学(代表提案者)
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概要:物理空間と情報空間の間で人を取り巻くサイバネティック・フロントエンドを無線化するための研究開発を行う。現象や体験をありのまま記録する計測(例えばライトフィールドカメラ、モーションキャプチャ、レーダー、超音波エコー、多点生体電位計測、BMI等)は空間的にも時間的にも大容量のデータを生成するが、それゆえデータ伝送に有線接続が不可欠となり計測対象が狭まる。本研究開発では、分散配置可能なテラヘルツビーム走査アンテナをネットワーク化することで、ボリュメトリックセンサデータの無線伝送基盤を構築する。この技術基盤を活用することで、人の身体的・社会的な活動を妨げることなく認識行動を支援・拡張することを目指す。

(6)屋内CP空間連携に向けた先端半導体-メタサーフェス融合技術の実証実験※1,※3
提案者:国立大学法人名古屋工業大学(代表提案者)、国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学
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概要:現在一般的な知的反射面(IRSまたはRIS)は“アクティブ”な制御に基づくため、移動等を伴う屋内利用には制約がある。そこで本研究では半導体—メタサーフェス技術を融合させることで、パッシブ制御可能な次世代IRSを実現する。提案されるIRSは、超低電力かつ超高周波で自律駆動できる半導体回路をメタサーフェスに内蔵することで、新たな自由度「パルス幅」に基づいたパッシブ制御を達成できるようになる。本研究では電波の専門知識を持たない非専門家の屋内利用に焦点を当て、カバー型、壁紙型、テープ型メタサーフェスを設計する。一般家庭内向け次世代通信インフラの開発によって、Beyond 5Gサイバー—フィジカル(CP)空間連携技術の普及に貢献する。

(7)会話AIエージェントとの高臨場感インタラクション体験実現のためのXR通信基盤の研究開発※1,※3
提案者:株式会社エキュメノポリス(代表提案者)
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概要:Beyond 5Gで実現される通信インフラを基盤として、WebブラウザやVR・ARゴーグルなどあらゆるモバイルデバイスで手軽に体験できる会話AIエージェントとの臨場感のある会話体験を実現する。具体的なアプリケーションとしてビデオ会議型の英会話学習エージェントサービスやXRミュージアムガイドエージェントサービス等を取り上げ、リッチクライアント型・シンクライアント型それぞれのアーキテクチャで大規模にスケールアウト可能な双方向マルチモーダル会話AIエージェント通信プラットフォームを開発した上で実証実験を行い、サービスエンゲージメントの視点から通信速度・解像度による会話体験の違いを比較する。

(8)多重自律マイクロモビリティのためのハイパーデジタルツイン基盤※1,※3
提案者:株式会社ハイパーデジタルツイン(代表提案者)、学校法人芝浦工業大学
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概要:多数同時の(=多重)自律マイクロモビリティを実現するハイパーデジタルツイン基盤の研究開発を行う。これまでに独自開発した1)数十台のLIDARをリアルタイム集約可能な三次元センサネットワーク技術および2)自律マイクロモビリティ向けエッジ技術を融合し、エッジネットワーク上でデジタルツイン基盤をBeyond 5Gシーズ技術として確立する。車載センサ・ネットワーク統合による三次元情報の二重化に加え、高次メタ特徴の抽出により死角などに起因するリスクの予測を行い、多数同時自律移動の安全性を飛躍的に向上する。本基盤を実用化し社会実装を推進し、Beyond 5Gによるモビリティのパラダイムシフトを図る。

(※1)Beyond 5Gの実現により想定されるサイバー空間とフィジカル空間を連携するためのデータ連携技術に係る研究開発の提案
(※2)国際共同研究の相手が相手国からファンディングを受けている提案
(※3)特別枠(代表研究責任者が若手研究者(39歳以下等)、又は代表提案者が中小企業であるもの)での採択

2. 公募等の概要

本課題については、令和4年4月22日(金)から同年5月23日(月)まで公募を行いました。
NICTは、学識経験者で構成される評価委員会の評価等を踏まえ、採択しました。
公募の詳細は、以下のWebサイトをご参照ください。

本件に関する問い合わせ先

イノベーション推進部門 委託研究推進室

中後 明、近藤 健、遠田 麻衣子

Tel: 042-327-6011