世界最大級のモバイル関連技術展示会「MWC Barcelona 2025」にてBeyond 5G社会に向けたNICT最新技術を展示

2025年2月25日

国立研究開発法人情報通信研究機構

国立研究開発法人情報通信研究機構(NICTエヌアイシーティー、理事長: 徳田 英幸)は、2025年3月3日(月)から6日(木)にスペイン・バルセロナで開催される世界最大級のモバイル関連技術展示会「MWC Barcelona 2025」に、初めてNICTで独自のブースを出展します。展示ブースでは、Beyond 5G領域を始め最新の研究開発成果を紹介します。地上通信ネットワーク(TN)と非地上系ネットワーク(NTN)の融合による大陸間基地局制御、300 GHz帯テラヘルツ波を使ったドローン間のすれ違い大容量ファイル無線伝送に活用可能な技術や4K映像の非圧縮リアルタイム中継伝送などの展示を行い、2030年以降の人々の暮らしを支えるICT技術を紹介します。是非この機会にNICTブースへご来場ください。

背景

NICTは、2025年4月に最終年度を迎える第5期中長期計画において、Society 5.0の早期実現に向けた次世代ICT基盤に必要不可欠な先端技術として、戦略的に推進すべき研究4領域(Beyond 5G、AI、量子情報通信、サイバーセキュリティ)について積極的に研究開発を進めてきました。その中でも、Beyond 5G領域では、非地上系ネットワーク(NTN)、時空間同期技術、テラヘルツ通信技術の研究開発に加え、国際共同研究プロジェクトや国際標準化活動にも積極的に参加しています。今回、「MWC Barcelona 2025」では、次世代の人々の暮らしを支えるICT技術を世界に紹介します。

研究成果の展示内容

NICTブースのイメージ

●Society 5.0の社会ビジョンの提示

  • 利用者の要求に応じて異なる産業のシステムが連携するオーケストレーション機能を紹介します。「フードロス問題の解決」「CO2削減」「被災リスク回避」の3つのテーマを体験できます。

●基盤技術とそのサービスの提示

  • 地上通信ネットワーク(TN)とNTNの融合による省エネルギー化と通信品質最適化を目的とした、シンガポール工科デザイン大学(SUTD)との協働による、スペインとシンガポール間の大陸をまたいだ基地局制御を実演します。これによって、TNとNTN経路の動的切替えによるエネルギー効率の向上を実証します。
  • 300 GHz帯テラヘルツ波を使ったドローンなどのモビリティ間のすれ違いにおける大容量ファイルの瞬間的無線伝送技術の海外での初実演及び4K映像の非圧縮リアルタイム中継伝送を実演します。
  • 次世代通信を支えるテラヘルツ波通信技術や時空間同期技術の活用サービス事例として、高精度に無線で時空間同期した多視点カメラ撮影サービスイメージや超小型60 GHz帯無線デバイスによる動くロボットカーとドローン間のすれ違い大容量データ転送サービスイメージを実演します。
  • 上記では、東京大学と共同開発したデジタルツインを用いたフィジカル空間の可視化・制御技術や、アーヘン工科大学(ドイツ)との共同研究による電波伝搬の可視化技術が使われています。

開催概要

開催期間: 2025年3月3日(月)~3月6日(木)
開催場所: Fira Gran Via, Barcelona, Spain
NICT展示場所: 6F68(Hall 6)
MWC Barcelona 2025公式サイト: https://www.mwcbarcelona.com/

補足資料

産業間連携オーケストレーション

利用者の要求に応じて異なる産業のシステムが効果的に連携するように、オーケストレーションと呼ぶ機能が効果的に動作して新たな価値を生み出すシナリオを提示します。3つのテーマ「フードロス問題の解決」、「CO2削減」、「被災リスクの回避」から選択して体験することができます。
Beyond 5Gがつくる未来の街のイメージ
体験テーブルの写真

O-RAN・TN/NTN融合・オーケストレーション

地上通信ネットワーク(TN)と非地上系通信ネットワーク(NTN)が融合し、グローバルにオーケストレーションされることにより、複数の国をまたいで、無線アクセスネットワークの省エネルギー化と通信サービス品質を最適に制御できることを示します。今回は、シンガポール工科デザイン大学(SUTD)との協働による研究成果となっており、実際にスペインとシンガポールに設置した双方の基地局に対して、大陸をまたいだ制御を実演します。SUTDに設置したドローン模型のプロペラをMWC会場に設置したジョイスティックでリアルタイムに操作しながら、状況に応じてTN経路とNTN経路を動的に切り替え、TNの基地局機能を動的にON/OFFすることで、低消費電力化が可能であることを示します。この制御に当たっては、O-RANのRAN Intelligent Controller(RIC)を活用しています。
TN/NTN融合・オーケストレーションのイメージ図
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テラヘルツ波・時空間同期・スポット通信・デジタルツイン・電波可視化

多地点のカメラの時刻を正確に高精度に同期しながら、撮影した映像をテラヘルツ波通信やミリ波通信により伝送します。この際、60 GHz帯/270 GHz帯におけるIEEE802.15-2023準拠の通信システムにより、ドローンと車が連携した移動体の大容量ファイルのすれ違い通信を実演します。すれ違い時のタイミング制御は東京大学との共同研究により開発したデジタルツインにより制御しており、また、その際の電波の伝わり方はアーヘン工科大学(ドイツ)との共同研究により可視化しています。さらに、300 GHz帯を活用した4K非圧縮映像伝送も実演しており、テラヘルツ波を実際に送受信する実験としては、海外では初めての出展となります。
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用語解説

MWC(Mobile World Congress)
世界最大級のモバイル関連技術展示会と世界中の携帯電話事業者、端末製造会社、プロバイダー、販売会社、コンテンツ会社の最高経営責任者や著名者が出席するカンファレンスを複合したイベント。MWC2024では、2,700を超える出展者・スポンサー・パートナーが参加し、来場者数は205か国・地域から10万1,000人以上(主催者(GSMA)発表)であった。

Beyond 5G

2030年頃の実用化が期待される次世代通信技術。世界各国が研究開発を進めている。

Society 5.0

サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会のこと。第5期科学技術基本計画において提唱された。Society 5.0の実現を技術的に支えるのがBeyond 5Gであり、2030年以降の社会に新たな価値をもたらすことが期待される。

時空間同期

時間と位置を従来よりも高精度に同期させる技術。将来の無線通信システムにおける活用が期待され、新たなアプリケーションの出現や情報通信の性能向上が見込まれる。

デジタルツイン

物理空間(フィジカル空間)上の様々なシステムから収集された情報をコンピュータ上(サイバー空間)に収集して模擬したもの。サイバー空間で解析や予測を行いフィジカル空間にアクチュエートすることで、最適化を循環させるサイバーフィジカルシステムの構成要素でもある。

O-RAN

次世代の無線アクセスネットワーク(Radio Access Network, RAN)の拡張性をより高くし、オープンでインテリジェントな機能を追加することを可能にするシステム。O-RAN ALLIANCEが標準仕様に基づく試験・認証拠点に関する活動を行っている。

本件に関する問合せ先

グローバル推進部門
国際研究連携展開室

江本 浩

広報

広報部 報道室